甘えだと言わないで! 「うつ病」の基礎知識と「適応障害」の違い

2016.07.26

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。

村松太郎さんという刑事事件の精神鑑定なども行っている精神科医の先生が、『「うつ」は病気か甘えか』という本を出版されて話題になったことがあります。

もちろん村松先生自身は、「うつなんて甘えだ。甘えてないで出勤しろ!」と言うような根性論者でも何でもなく、「うつは病気である」と断言している、まっとうなお医者様です。

しかし、世の中には“うつは甘えだ”派の医師が存在することも事実で、筆者自身も以前、経営していた会社の業績不振に落ち込んで通院していたメンタルクリニックの先生から、「うつに甘えていないで仕事をしなさい!」と怒鳴られた経験を持っています。

そんな中、「うつは甘えも何も、日本人がうつだと思い込んでいる病気のほとんどは『適応障害』という病気であり、“うつは甘えか論争”自体がナンセンス」という見解を打ち出している医師がいます。

うつ病と適応障害について、詳しく見ていきましょう。

目次
 うつ病の症状(P1)
 うつ病になってできなくなること(P1)
 環境を変えることで改善する場合は、厳密に言うと『うつ病』ではない?(P2)
 うつ病ではないのに性格的な甘えが原因でうつ状態になっている適応障害患者が多い(P2)
 性格的な甘えで働けないでいる患者を長期に休ませるだけの精神科医には責任が問われる(P3)
 「うつ病」と「甘え」の見分け方(P3)
 うつ病になりにくい人の特徴(P4)
 本当の『うつ病』の診断方法(P4)
 うつ病の診断方法(DSM-5)(P5)
 『うつ病』と『適応障害』の違い(P5)
 適応障害が悪化するとうつ病になることもある(P6)
 うつ病や適応障害のときにやってはいけないこと7つ(P6)
 “新型うつ”とは(P7)
 新型うつ(非定型うつ)の種類(P7)
 非定型うつ病(新型うつ)の特徴(P8)
 新型うつに対する誤解4つ(P8)
 うつ病が「甘えだ」と言われてしまうワケ3つ(P9)
 「うつ病は甘え」という考えが間違っているワケ4つ(P9)
 「うつ病は甘え」と言ってはいけない理由(P10)
 ネット上で「うつ病は甘え」という考えが広がるワケ(P10)
 うつ病とインターネットの関係(P11)
 うつ病患者の就職事情(P11)
 まとめ(P11)

うつ病の症状

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うつ病は本人だけでどうにかしようとしても難しいため、周りのサポートが必要です。

しかし、うつ病は周囲からはなかなかわかりにくいもの。時には「甘え」として片付けられてしまう場合もあります。

そこで、どんな症状があればうつ病なのかをみていきましょう。

まず、うつ病の代表的な症状は「摂食障害(過食や拒食)」と「睡眠障害(夜眠れなかったり、朝早く目が覚めてしまったりなど)」です。

他には、頭痛やイライラ、吐き気、体の痛み、日常的な体の緊張や倦怠感などが挙げられます。

仕事や人間関係などのストレスを受けて摂食障害や睡眠障害が起きたり、体にさまざまな症状が出たりすることが、うつ病のサインです。

うつ病になってできなくなること

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うつ病になると、それまで普通にできていたことができなくなってしまいます。例えば、次のようなことです。

・学校や会社に行かない
・布団から出られない
・家事をしないで1日中横になっている
・スマホやPCで文章を打つこともできずメールの返信ができない
・言葉が思いつかず会話ができない
・身なりを整えられない
・商品を選べず買い物ができない
・何もしていないのにすごく疲れて体が動かせない
・電話に出られない

など、普通は当たり前にできるようなさまざまなことができなくなってしまいます

そのため、周りから見ると「怠けている」「甘えている」と捉えられてしまうこともありますが、けして怠けや甘えではないのです。


→次ページでは、環境を変えることで改善する場合は、厳密に言うと『うつ病』ではない?を見ていきましょう。

環境を変えることで改善する場合は、厳密に言うと『うつ病』ではない?

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千葉県の市川市で心療内科・内科・小児科・在宅ケアの『仁和医院』を開業されている医師の竹川敦先生は、医院のホームページの中で、わが国では「うつ」を主訴で来院する患者の70%以上が実は『うつ病』ではなく、『適応障害』といってその人の性格そのものに起因するものなので、抗うつ剤の服用では本質的な改善は期待できない、としています。

竹川先生によれば、本当の狭義でのうつ病というのはノルアドレナリンやセロトニンといった脳内の神経伝達物質の活性低下による病気であるため、抗うつ薬がある程度まで特効薬として奏功するもののようなのです。

また、本当のうつ病では環境を変えたからといって症状が改善するということはなく、うつの期間が3か月から長くても1年続いた後、必ず元の状態に戻るというもののようです。

それでは「うつは甘え」と言われてしまうことの一因になっているようにも思える、“うつと適応障害との見間違い”について、もう少し考えてみましょう。

うつ病ではないのに性格的な甘えが原因でうつ状態になっている適応障害患者が多い

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「うつは甘え」という言い方は間違いで、正しくは「適応障害は性格的な甘えにも原因がある」ということ。

このことについて、前述の竹川敦医師は医院のホームページの中で次のように説明しています。

『最近「現代型うつ病」とか「新型うつ病」という日本独自の意味不明の診断名が流行っているが、これらはいわゆる「適応障害」のことを指しており、うつ病とは全く原因も違うし、治療法も違うものである。

症状が単に「うつ状態」というところだけが共通しているだけにも関わらず、あえて「うつ病」と診断名を付けることは診断を非常に曖昧にさせる。(中略)

「うつ病は甘えではない」という概念は間違っていないが、実際はうつ病ではないのに性格的な甘えが原因で、うつ状態になっている患者は沢山いる。

「うつ病は休ませなければならない」というのも確かにそうであるが、あくまで「うつ病」の患者さんに言えることで、性格的な甘えでうつ状態になっている患者に「うつ病」の診断をつけ、長期に休ませることは甘えを助長し、症状を悪化させているだけである』


→次ページでは、性格的な甘えで働けないでいる患者を長期に休ませるだけの精神科医の責任について見ていきましょう。

性格的な甘えで働けないでいる患者を長期に休ませるだけの精神科医には責任が問われる

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このように考えてくると、筆者が小企業経営者だったころ通っていた精神科の先生から言われた「うつに甘えていないで仕事をしなさい!」という言葉は、言葉足らずなうえ乱暴な表現であったことを別にすれば、

「あなたは資金繰りのストレスに常にさらされる小規模企業の経営者という職業に適応するには性格的に甘えが強いことが原因で“うつ状態”に苦しんでいるという“適応障害”であるから、休むことよりも甘えていないで仕事をすることで現状を打破した方がいい。

もしそれが無理なのであれば、資金繰りの苦しみから解放されるために会社を売却したり、廃業して自分に適した仕事に転業するとかしないと“うつ状態”は改善されない。抗うつ剤では治らない」

という主旨のアドバイスを筆者に与えてくれていたわけですから、いたって的確な診療であったと言うことができます。

逆に、「うつ病ですね。しばらく休んだ方がいい」と簡単におっしゃる先生を受診してしまったら、筆者はただでさえダメな経営者だったのに、もっともっとダメな経営者になっていたことでしょう。

ですから、安易に「要・長期休養」の診断書を出すだけの精神科医には、ある意味でその責任が問われてしかるべきなのかもしれません。

「うつ病」と「甘え」の見分け方

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「うつ病は甘えだ」という意見は多くあるものの、きちんと医師に「うつ病」と診断された場合、それは甘えではなく病気です。

では、うつ病なのか甘えなのかを見分けるためにはどうしたらいいのでしょうか。

確実なのは病院へ行って医師の診断を受けることですが、自身や周りの人がある程度見分けをしたい場合、本人に“行動を起こそうとする強い意志があるかどうか”を見ればいいそうです。

たとえば、うつ病の場合、体調が悪くても学校や会社へ「行こう」「行きたい」「行かなければ」という意志があります。それでも行けないのがうつ病です。

一方、学校や会社に行かなければという強い意志がなく、「体調が悪いから休める! 行きたくなかったからよかった」「ラッキー! 休もう」と、自分の欲望に従ってしまうのが甘えです。

頭では「行かないと迷惑がかかる」「行かなければ!」と思っているにも関わらず、体がどうしても動いてくれないという場合にはうつ病の可能性があるので、本人も周りの人も「甘え」と思うのではなく、心療内科や精神科などの病院を受診してみましょう。


→次ページでは、うつ病になりにくい人の特徴を見ていきましょう。

うつ病になりにくい人の特徴

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うつ病になる人には真面目な人が多いと言われますが、うつ病になりにくい人の特徴は、適度に手を抜けること、要領が良いこと、ストレス発散がうまくできることなどです。

学校や会社で嫌なことがあったり失敗をしたりしても、いつまでもそれを引きずって落ち込まず、うまく気持ちの切り替えができるような人はうつ病になりにくいと言えるでしょう。

また、自分がストレスを抱える前にうまく面倒な物事から逃げたり、うまい立ち回りができたりする人もストレスを感じにくいため、うつ病になりにくいです。

本当の『うつ病』の診断方法

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それでは、患者の性格的な甘えに起因する『適応障害』ではなく、“本当のうつ病”であるかどうかを診断する方法を、竹川敦先生の医院のホームページからご紹介しておきましょう。

本当のうつ病であると確定診断を下すうえでは、下記の手順を踏む必要があるとのことです。

(1)全身倦怠感をきたすような身体疾患である可能性を除外すること。そのための身体的な診察と血液検査等を行うこと。

(2)今までの経過から推測する。本当のうつ病の場合は一般的にうつの期間が一定期間続いたあと必ず元の状態に戻るという特徴がある。

(3)性格因、環境因を除外すること。会社に行く前だけ調子が悪く休暇中は元気に遊びに行けるなどという場合はうつ病ではなく適応障害の可能性が高い。

(4)本当のうつ病に特徴的な症状から推測する。環境に左右されることなく、毎日のように症状を認めている場合はうつ病の可能性が高い。

(5)治療効果から推測する。休職や配置転換といった環境調整を行っても症状が改善せず寝てばかりいるような場合はうつ病の可能性が高い。


→次ページでは、うつ病の診断方法(DSM-5)を見ていきましょう。

うつ病の診断方法(DSM-5)

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うつ病には判断基準がいくつかあります。ここでは、『DSM-5』という診断基準をご紹介します。

次に挙げる9つの項目にいくつ当てはまるかで、うつ病かどうかを診断することができます。

(1)抑うつ気分
(2)興味または喜びの著しい減退
(3)食欲の減少または増加、著しい体重減少または増加(1か月で5%以上)
(4)不眠または過剰な睡眠
(5)精神運動性の焦燥または制止(強い焦燥感または運動の制止)
(6)疲労感または気力の低下
(7)無価値観または罪責感
(8)思考力や集中力の低下
(9)死について繰り返し考える

これらのうち、(1)と(2)を含む5項目以上に当てはまり、ほとんど1日中続いており、職業的にまたは社会的に障害をきたしている場合にうつ病だと診断されるそうです。

『うつ病』と『適応障害』の違い

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うつ病と適応障害、症状は似ているようですが、どんな違いがあるのでしょうか? 詳しく見ていきましょう。

回復と治療法の違い

うつ病は、「内因性うつ病」という診断のことを指し、たとえ発症のきっかけになる環境があったとしても、そのきっかけを取り除いただけではうつ状態から回復することが難しいとされています。

そのため、うつ病は休養と抗うつ薬による治療がほとんど必須として行われています。

それに対して適応障害は、症状が現在の状況や周囲の環境によって引き起こされており、症状を引き起こすきっかけとなった状況や環境を取り除くことだけで自然に回復すると考えられています。

薬物治療も含むものの、精神療法や認知行動療法、新しいコミュニケーションスキルの獲得などといった包括的な治療を行うこととなります。

症状に対する考え方の違い

うつ病は症状が周囲の環境によって引き起こされている場合であっても、「自分が悪いんだ」というように自分を責める考え方になってしまいがちだと言います。

一方、適応障害の場合は、自分の症状を引き起こした原因を理解していると言います。

そのため、「あの仕事さえなければ」「こうなってくれればいいのに」「もっとこうできれば」など、症状のきっかけになった周囲の環境や現在の状況について苛立ったり、希望や夢を思い浮かべたり話したりすることが多いそうです。

日内リズムがあるかないかの違い

うつ病は脳の神経学的メカニズムの変化によって症状が起きているため、朝は症状が著しく出るものの、夕方には軽減するといった日内リズムがあるそうです。

しかし、適応障害は「嫌だ」「苦痛だ」と思う原因となる環境や状況を思い出したときに著しく症状が出るため、日内変動はないと言います。

状況が好転するときの対応の違い

うつ病は好転するような状況がある場合でも、自分の好転する変化を想像することが難しくなっているため、反応が少ないそうです。

それに対して適応障害は状況の好転変化があれば、それと向き合っていく姿勢で臨みます。


→次ページでは、適応障害が悪化するとうつ病になる可能性を見ていきましょう。

適応障害が悪化するとうつ病になることもある

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うつ病と適応障害は違うものですが、適応障害が悪化することによってうつ病へと移行することもあるそうです。

適応障害という診断をされても、2週間以上、抑うつ状態が継続するとうつ病という再診断をされることもあるといいます。

また、適応障害が悪化することによって、摂食障害や睡眠障害などを引き起こすこともあります。

そのため、適応障害はうつ病をはじめ、さまざまな病気の予備軍であると言えるでしょう。ストレスをためすぎないよう注意することが大切です。

うつ病や適応障害のときにやってはいけないこと7つ

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(1)つらいのに行動しようとする

「自分は怠けているだけなんじゃないか?」「このままではいけない」と焦って無理に行動してはいけません。

自分は病気なのだから仕方ないと受け止め、しっかり休養を取りましょう。

「つらい」「しんどい」という状況のときには、十分に休養を取ってエネルギーを蓄えればいいのです。

(2)ネットサーフィン

自分の病気や症状について正しい情報が欲しい、つらい状況から抜け出すための方法を知りたいと思い、インターネットで情報収集しようと考えるのは禁物です。

ネット上にはさまざまな情報があり、中には悪意に満ちたもの、正しい知識がないのに適当なことを書いたサイト、罵詈雑言、噂なども少なくありません。

つらい状況から抜け出すどころか、それらを見て余計につらく苦しくなってしまうということもあります。

ネットで情報をやみくもに検索するより、医師に相談するようにしましょう。

(3)薬の服用を勝手に中止する

治療に必要な薬を自己判断で勝手に飲んだり飲まなかったりするのはやめましょう。急に薬をやめることで症状が悪化することもあります。

主治医の指示に従って、薬は決められた用量・用法で服用しましょう。薬を減らしたい、やめたいという場合は必ず主治医に相談してください。

もしも主治医に不信感があるのであれば、他の病院でも診てもらう「セカンドオピニオン」という選択や転院という選択もあります。

くれぐれも自己判断はやめましょう。

(4)自責感や罪責感を持つ

「今日もずっと布団の中から出られなかった。自分はなんてダメな人間なんだろう」と自分を責めたり、情けなく思ったりすることも避けましょう。

自分を責めても症状が悪化するだけです。「こんな自分もアリ!」「今はちょっとガソリンが切れてるだけ」などと割り切り、自分を大切にしてあげることが大切です。

(5)一人でなんとかしようと考える

自分だけでなんとかしなきゃ、周りに迷惑をかけないようにしなきゃと考えてはいけません。

医師、家族、友達、恋人……信頼できる周囲の人間に頼りましょう。人間は一人では生きていけません。人に頼ることは甘えではないのです。

周囲の人たちが困ったときに、今度は自分が助けてあげればいいだけ。頼れるものに頼りましょう。

(6)回復を焦らない

「早く治して仕事に行かなきゃ」と焦る気持ちはわかりますが、その焦りが症状を悪化あせることもあります。

「頑張らなきゃ」「早く治さなきゃ」という焦りは捨て、今できることだけをやれば大丈夫。ゆっくり治していきましょう。

(7)夜更かし

睡眠障害はうつ病の症状として発症することがとても多いです。そのため、なかなか夜になっても眠れないということもあるでしょう。

無理に寝ようとしなくてもいいですが、夜は布団に横になるようにしたほうがいいです。

昼夜が逆転した生活になってしまうと、精神的にも肉体的にもさらにつらくなってしまいかねません。

体内時計をリセットするために、朝起きたら日の光を浴びるようにしましょう。


→次ページでは、“新型うつ”とはどんなものかを見ていきましょう。

“新型うつ”とは

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近年、よく聞くようになってきた「新型うつ」という言葉。

しかし、まず理解しておきたいのは、医学的に「新型うつ」という病気は存在しないということ。

医学的には、「非定型うつ」という種類のうつ病です。

「新型うつ」というのは主に、「ただの甘え」「怠け者」と言いたい人やメディアが、非定型うつの患者を揶揄するときに蔑称として用います。

新型うつ(非定型うつ)の種類

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一般的に「新型うつ」と呼ばれている「非定型うつ」の種類には、次のようなものがあります。

(1)逃避型うつ病

1977年に精神科医である広瀬徹也氏によって提唱されたうつ病です。

従来のうつ病は困難に直面したときにそれを乗り越えようとして疲れ果て、うつ病を発症すると言われています。

「逃避型うつ病」は、困難に直面したときにそれを乗り越えるのではなく、不安や苦悩が少ない抑うつ状態へと逃避し、問題の解決を諦めてしまうと言います。

発症の原因としては、ストレス過多や病前の気弱な性格、過保護な養育環境などが重なっていると考えられており、主に若い会社員、中でもエリートと呼ばれる男性の会社員に多いそうです。

症状としては、不眠症や日内変動などが挙げられます。

(2)未熟型うつ病

1995年に、精神科医である阿部隆明氏によって提唱されたうつ病です。

従来型のうつ病は、自分よりも他者を優先してしまうという特徴が見られますが、未熟型うつ病では、他者への依存が強い、自己中心的で自分の要求がかなわないと攻撃的になる、自分を過大評価しすぎる、などの特徴が見られます。

症状としては、食欲低下、不安や焦燥感、イライラ、早朝覚醒、日内変動などが挙げられます。

こちらも若年層に多いとされています。

(3)現在型うつ病

1991年に、精神科医である松浪克文氏によって提唱されたうつ病です。

従来型のうつ病患者は、几帳面で真面目、責任感が強いといった性格が特徴的だとされていますが、現代型うつ病の場合は、これらの特徴が仕事上では見られないと言われています。

組織に対する忠誠心や、組織・仲間との一体感に乏しいため、精神的な作業能力に低下を感じたり、集中力の低下を感じたりすると、職場の仲間に迷惑がかかるという罪悪感や自分を責める思考を持たず、平気で会社を休んでしまうそう。

若い会社員に多いと言われています。

(4)ディスチミア親和型うつ病

2005年に、精神科医である樽味伸によって提唱されたうつ病です。

職場などでの人間関係や組織との連携、仕事のノルマなどを重圧に感じて、現実逃避する傾向があるといいます。

重圧に感じることがあると自身で進んで医療機関を受診し、会社を休むための診断書を医師に書いてもらうという人が多いようです。

先述した「逃避型うつ病」「未熟型うつ病」と同様の部分も多く、患者は若い世代に多いといいます。

回復するためには休養や服薬だけでは難しいとされています。


→次ページでは、非定型うつ病(新型うつ)の特徴を見ていきましょう。

非定型うつ病(新型うつ)の特徴

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非定型うつ病(新型うつ)は病気なのですが、どうしても周りから「甘えてるだけ」「サボりたいだけ」という見方をされてしまいます。

その理由として挙げられるのが、「気分反応性」という非定型うつ病に見られる最大の特徴です。

気分反応性とは、学校や仕事に行こうとすると気分が悪くなって行けなくなるにも関わらず、友達と遊びに行こうとすると気分が晴れるという状態のことをいいます。

従来型のうつ病が、仕事も遊びも問わず何も楽しいと思えない、常に気分が落ち込んだままという状態であるのに対して、非定型うつ病はそうではないため、周りから「病気ではない」と誤解されてしまうのです。

非定型うつ病の患者本人も、この気分反応性については理解することも説明することも難しいことから、厄介な問題となっています。

新型うつに対する誤解4つ

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一般的に、非定型うつ病を「新型うつ」と蔑称で呼ぶことが多いのですが、この「新型うつ」には多くの誤解があります。

(1)新型うつは要するに甘え(仮病)?

先述した通り、「新型うつ」という病名はなく、「新型うつ」と呼ばれているのは「非定型うつ病」のことであり、非定型うつ病はれっきとした病気です。

病院でも「うつ病」という診断がなされます。

(2)性格に問題があるから新型うつになる?

従来型のうつ病患者は「几帳面で真面目、責任感が強い」と言われているのに対して、新型うつになる患者は「性格が未熟な若者」だとされることが多いです。

そう言われている理由としては、近年の労働環境の変化や社会の変化などによってうつ病になる若者が増え、そういった若者たちをまとめて「新型うつ」としていることが挙げられます。

若者は総じてまだ未成熟です。年齢が上がり、さまざまな経験を重ねることによって成熟されていきます。

そのため、新型うつの人は未成熟で性格に問題があるというよりも、若者のうつ病患者をまとめて「新型うつ」と呼ぶようになってしまったことから、若者=未成熟→新型うつ=未成熟という認識ができてしまったのでしょう。

(3)新型うつの人はうつ病アピールをしたがる?

昔は自分がうつ病であることはできる限り周りに知られたくない、バレたくないことでした。

しかし、現代は自分が「うつ病だ」ということをアピールする人(若者)が多いような気がしますよね。

これは、うつ病が一般的に知られるようになり患者数も増えたことから、精神科や心療内科を受診することや自分がうつ病であることを公表することへの抵抗感が薄れてきた、というのが正しいでしょう。

ブログやSNSなどを通して自分がうつ病であることを公表し、うつ病について情報発信をしている人も多くいます。

これも、インターネットが発達し、誰もが簡単に自分から情報発信を行えるようになった時代が関係しているのだと言えるでしょう。

要するに、若者にとって、うつ病であることを隠す方がもはや時代遅れである、と言えるのかもしれません。

また、必要以上に自分がうつ病であることをアピールする人は、新型うつだからというわけではなくて、ただ単に個人的に承認欲求が強いだけでしょう。

(4)新型うつに薬は効かない?

新型うつに限らず、そもそも「うつ病」は薬だけで治すことが難しいとされており、薬だけで完全に回復する人は少数だと言われています。

とはいえ、従来型であれ新型であれ、うつ病には薬も処方されますし、十分ではないにしろ効果が発揮される患者さんもいます。


→次ページでは、うつ病が「甘えだ」と言われてしまうワケを見ていきましょう。

うつ病が「甘えだ」と言われてしまうワケ3つ

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うつ病が甘えだと言われてしまうのには、次のような理由が考えられます。

(1)一見、単なる甘えに見える症状が出ているから

うつ病患者は、体調が悪い、頭ではやらなければいけないと思っていても体が言うことをきかず何もできないという状態から、学校や職場へ行くことができません。

怠けで甘えているだけの人の場合も、体調が悪いふりをして学校や職場を休みます。

周りの人にしてみれば「休んだ」という結果だけ見て同じであると判断しているため、どちらもただ甘えているだけに見えてしまうのです。

また、うつ病の治療の一環として、散歩をしたり趣味の活動をしたりすることを医師からすすめられることがあります。

そのため、学校や職場を休んでいるときに外出しているところを目撃されると、「なんだ、外に出られるならやっぱり元気なんじゃないか」「サボっていただけか」と思われてしまいます。

(2)心の病気は目に見えないから

骨折をしていたり咳や高熱が出ていたりすれば、身体的特徴として現れるため、周りも「つらそう」「苦しそう」とわかります。

しかし、うつ病のような心の病気は目に見えません。本人以外にはそのつらさや苦しさはわからないため、理解されにくいのです。

(3)うつ病患者には病気について説明できる気力がないから

うつ病の患者さんは、普段ならできるようなことも全くできなくなってしまいます。

「うつ病とか言って、甘えなんじゃないの?」と人から言われたとしても、それに言い返したり病気について説明したりする気力もありません。

うつ病が良くなればいろいろ説明することもできますが、真っ只中にいるときにはそんなことをする気力はないので、周囲の誤解を解くことができず、誤解されたままになってしまうのです。

「うつ病は甘え」という考えが間違っているワケ4つ

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(1)医師が「病気」として診断をしている

病院を受診せずに自分で勝手に「うつ病」だと言っているだけなら「甘え」と言われるのもわかりますが、きちんと病院へ行き、医師から「うつ病である」という診断をもらっている以上、それは正式な病気であって甘えではありません

医師は病気の診断をする上で、患者さんの症状や経過などをしっかりと診ています。うつ病ではない人が受診しても、医師はそれがニセモノだと気付きますので、そういう人はうつ病という診断はされません。

だからこそ、きちんと医師にうつ病だという診断をされている人は、甘えではなく病気だと言えるのです。

(2)脳の異常が一因であると確認されている

うつ病になる原因についてはいくつか仮説があるものの、まだ明確には解明されていません。

しかし、脳に異常が生じていることを示唆する仮説については、実験である程度、根拠が得られているといいます。

単なる甘えであれば、脳に異常が生じるなどということはありませんから、このことからもうつ病は病気であると言えるのです。

(3)患者には真面目な人が多い

うつ病患者については、病気を発症する前から性格が真面目で熱心である人が多いといいます。

病気になる前から怠け者だったり甘えていたりするのであれば「うつ病は甘え」と言えるかもしれませんが、そうではないことがわかります。

(4)薬(抗うつ剤)が有効である

うつ病に対する薬の効きについては、まだ十分とは言えないようですが、薬(抗うつ剤)でうつ病が改善した、回復したという患者さんも少なくありません。

特に中等症・重症のうつ病患者さんの治療では、ほとんど薬での治療が行われるということです。

抗うつ剤は、人間の気分に影響を与える神経伝達物質を増やしてくれるものが多いといいますが、薬で神経伝達物質を増やすことによって症状が良くなるのであれば、これは「甘え」では片付けられませんよね。


→次ページでは、「うつ病は甘え」と言ってはいけない理由を見ていきましょう。

「うつ病は甘え」と言ってはいけない理由

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うつ病の人は、「うつ病は甘え」「怠けてるだけ」と言われることで心に深く傷を負います。その結果、うつ病が悪化してしまいます。

「うつ病は甘え」と言う行為は、療養中のうつ病患者さんの治療を妨害する行為だと言えるわけです。

患者さん自身も「自分は甘えてるだけなんじゃないか?」「周囲に迷惑をかけている」と考えている人が多く、そんな中で周囲から「甘え」「怠け」と言われてしまえば、余計にダメージを受けます。

例えば職場で同僚がうつ病になり、仕事を長期で休んだとします。それによって同僚がやるべきだった仕事が自分にまわってきて、残業をする日が続く。

それはとてもつらいですし、当事者でなければうつ病のつらさはわかりませんから、療養のために仕事を休んでいる同僚を責めたくもなるでしょう。

しかし、その苛立ちから、「自分だってこんなにつらいのに休まず働いている。同じことをしていただけなのにうつ病で休むなんて、甘えてるだけでしょ」などと言ってしまったらどうなるか。

せっかく病気が回復に向かっていたとしても、その言葉に傷つき、症状は悪化。仕事への復帰もどんどん遅くなります。

「うつ病は甘え」ということによって患者さんを苦しめ傷つけ症状を悪化させることで、結局回復が遅くなって自分の負担も増やすことになるのです。

仕事においてどうしても負担が大きすぎて自分まで心身の健康を害する恐れがあるのであれば、うつ病の患者さんにあたるのではなく、上司に相談して、人を増やすか仕事を他の人に分配してもらうなどの対策を取ってもらいましょう。

ネット上で「うつ病は甘え」という考えが広がるワケ

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まず、うつ病と闘っている最中でどん底にいる人は、毎日生きることで精一杯です。インターネットで発信をする気力などありません。

また、うつ病を経験したことがない人はうつ病がどれだけ苦しいものか理解できません。

うつ病は骨折や発熱のように目に見えて苦しさがわかるものではありませんから、理解できないのも当然でしょう。

そのため、「うつ病は甘え」と発信している人はまずうつ病になったことがない人です。だからこそ、平気で「うつ病は甘え」という発言ができてしまうのです。

そして、そういった他人を傷つけるような極端な発言は注目されやすいのがインターネットの世界

実際には否定的な意見を持っている人のほうが少ないとしても、うつ病になったことがない健康な人ばかりがうつ病について否定的な発信をし、その発言が注目されていれば、どうしてもそちらが目立ってしまい、大多数の意見のように見えてしまいます。

うつ病患者にとっても、自分を傷つける意見というのはより目についてしまうものなのです。

インターネット上で大多数だと思われる意見が、必ずしも現実を反映しているわけではないということを理解しておきましょう。


→次ページでは、うつ病とインターネットの関係を見ていきましょう。

うつ病とインターネットの関係

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うつ病患者がインターネットでうつ病についての意見を見たり調べたりすることは自虐行為のようなものです。

インターネットではどうしても否定的な意見のほうが注目されやすいので、インターネットを見れば嫌でも否定的な意見を目にすることになり、ますます気分が落ち込みます。

人を傷つけていることすらわからず発言しているような残酷な人に傷つけられるなんて、バカらしいでしょう。

否定的な発言で傷つくくらいなら、インターネットは見ないほうがいいです。自分の心の安静のためにも、ネットはやめておきましょう。

うつ病患者の就職事情

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うつ病になると、休職→退職という流れになってしまう人も多いものです。

しかし、症状が落ち着いてくるなどして再度働きに出なければなからない場合は、うつ病であることを隠して職を探すのではなく、障害者雇用枠のある会社を探して働くことがおすすめです。

うつ病についての認知が広まった現在でも、まだまだ偏見を持つ人や理解のない職場が多いもの。そういった職場で再度働き始めても、またうつ病が悪化してしまう可能性もあります。

また、うつ病であることを隠して働いたとしても、うつ病による症状で仕事を長期間休まざるを得なくなったときに不都合が生じます。そのときに「実はうつ病で……」と言っても、会社側がいい顔をしないことも多いでしょう。

仕事を長く続けられるようにするためにも、障害者雇用枠のある職場を選ぶことをおすすめします。

ただし、障害者雇用枠のある職場であっても、精神障害ではなく四肢障害を持つ人を限定にしているケースもあるというのが実情のようです。

不安なことは、ハローワークや会社の面接の際にしっかり聞いておきましょう。

まとめ

「うつ病の症状」や「うつ病になってできなくなること」「うつの診断方法」などについてご紹介してきましたが、いかがでしたか?

繰り返しますが、本当のうつ病はけっして「甘え」ではありません。

にも関わらず、「うつ病は甘え」という言葉に苦しんでいるうつ病患者さんは少なくありません。

周りはなかなか理解することが難しいうつ病ですが、患者さんの回復を妨げないためにも、一人でも多くの人がうつ病について正しい認識を持つことは必要不可欠だと言えるでしょう。

【参考リンク】
仁和医院ホームページ
適応障害 | 厚生労働省

●追記/パピマミ編集部
●モデル/倉本麻貴(和くん)貴子(優くん、綾ちゃん)ゆみ



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