精神科医が指摘! 高齢者によるクレームが増えている理由と対処法

2014.11.18

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。

今、さまざまな分野の専門家が高齢者クレーマーの増加の問題を取り上げ、また高齢者に限らず若い世代にも他者に対する不寛容が高まっているといわれています。

都内で20年近くにわたってメンタルクリニックを開業し、高齢者の抱える心の問題と向き合ってきた精神科医にお話を伺ったところ、“高齢者のクレームと不寛容”の多くが、“今の時代のシステムやルールを知らない”ことに起因しているという事実が明らかになってきました。

ここでは“高齢者のクレームと不寛容”などについて考えていきたいと思います。

目次
 クレームの種類3つ(P1)
 高齢者が“知らない”から起きる問題3つ(P1〜2)
 高齢者にクレーマーが増えているワケ(P2)
 コールセンターの高齢者の利用割合(P3)
 高齢者のクレームに対応する方法(P3)
 高齢者のクレームを予防する方法(P4)
 クレームでショックなことを言われたときの対処法(P4)
 欧米で高齢者のクレームが少ないワケ(P5)
 高齢者のクレーム体験談(P5〜6)
 子どもの声が騒音に聞こえる場合はうつ病の疑いも(P6)
 まとめ(P6)

クレームの種類3つ

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ひと口にクレームと言っても、その種類はさまざまです。お店側の対応が悪く、クレームしている人が真っ当だという状況もあります。

(1)正当な要求

商品を買ったりサービスを受けたりした人がアクシデントやトラブルに見舞われ、早急に対処する必要があるという場合です。

クレームを申し出た側の主張も正当で、切実な状況に陥っている場合と言えるでしょう。

どちらが悪いということではないため、冷静に対処することで大きな問題にはならないと考えられます。

(2)金銭などの要求

通常は見過ごされてもいいような些細なことに文句をつけ、その対価としてお金や物などの見返りを求めるクレーマーです。

こういったクレーマーは一度味を占めると何度も同じことを繰り返します。

そのため、自分に非がない場合には冷静に説明し必要以上に下手に出ることは控えた方がいいと言えるでしょう。

(3)高圧的な自己主張

具体的なモノを要求しているのではなく、“客と店”という上限関係のあるなかで、相手が文句を言えない立場を利用して高圧的に自己主張したい人です。

仕事などで比較的高い地位についている人や、することのないヒマな高齢者に多く見られます。

中には「自分が言わなければ」という妙な正義感を持っていることもあるため、非常にやっかいなタイプだと言えるでしょう。

高齢者が“知らない”から起きる問題3つ

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高齢者が“知らない”ことでクレームや横柄な行動へと結びつくケースもあります。

(1)「“マタニティマーク”って何?」

『高齢者は“マタニティマーク”の存在そのものを知らないことが考えられます。もちろん中にはマタニティマークをつけている女性を、「むかつく」などといって敵視しわざとそのお腹を蹴るといったとんでもない事件も発生してはいます。

ある企業が行った調査では、嫌がらせなどマタニティマークをつけていて困ったことのある妊婦さんが9.3%もいることがわかっています。しかし、こと高齢者に関しては、“知らなかった・わからなかった”ことで強引に「席を譲れ」などと言うことがあるのではないかと考えています』(50代女性/メンタルクリニック院長・精神科医師)


→次ページでも、引き続き高齢者が“知らない”から起きる問題を見ていきましょう。

(2)「すいている方に並んで何が悪い?」

『ファストフード店の順番待ちの列への割り込みという行動もよく見られます。銀行のATMの順番待ちの列と違い、お店側がちゃんと一列になって待てるデザイン設計を怠りいい加減な列が形成されているがために、60代くらいの男性はこれといった悪意もなく“すいていた方に並ぶ”という行為になってしまう可能性が考えられます』(精神科医師)

(3)「電波に強い、弱いってあるの?」

『電車内の優先席近くでの携帯電話の使用していて文句を言われることもありますね。これについては、スマートフォンをはじめとして、現在使われている機種のほとんどが弱い電波でも通信できるようになっています

携帯電話が発する電磁波が心臓ペースメーカーの動きに影響を与える可能性はきわめて低くなったため、2015年8月19日に総務省が携帯電話の使用規制について、その指針を緩和する主旨の発表をしています。このことを知らない高齢者も多いでしょう』(精神科医師)

高齢者にクレーマーが増えているワケ

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(1)ヒマだから

近年、しっかりとした対応をしているはずなのに高齢者に理不尽なクレームをつけられているというお店を目にすることも出てきました。

「スーパーの冷房が強いから風邪を引いた」「商品を気持ちを混めて渡していない」「試食を腹一杯食わせろ」など、信じられないようなクレームも少なくありません。

この原因のひとつとして、高齢者が暇を持て余していることがあげられます。

仕事を退職し、することがなくなった状態で、人から相手にされることも少なくなっているのかもしれません。

クレームというのはする方も労力を使うものであり、よほどヒマでなければしないものです。

これまでは街の人などが相手をしていたものが、高齢化社会となり、高齢者があぶれてしまっているとも言えるかもしれません。

(2)威張りたい

ひと昔前までは、お年寄りをうやまおうとする風潮がありましたが、それが次第に薄れてきていることも理由のひとつでしょう。

自分の知らないことを若者たちが知っており、便利に使いこなしているなかで、「今の日本を作ってきたのは俺たちだ」という思いが湧き上がってくるのです。

それが認められないため、文句の言えないお店の店員などに向かって偉そうにすることしかできなくなってきます。

(3)日常に“若い人”や“子ども”がいない

『高齢者の多くが最新の社会システムやルールに関して“知らない”状態になってしまった原因の一つに、日常の暮らしのなかに“若い人”や“子ども”がいないため、教えてもらえないという事実があります。

昭和の時代、お年寄りの多くは息子・娘夫婦と同居し、大勢の孫やひ孫たちと一緒に暮らしていました。中学生・高校生の孫たちから、「じいちゃん、今はこうなんだよ」「おばあちゃんね、それはこうやってするのよ」と教えてもらっていたものです。今の高齢者は、多くが身近に子どもがいないため、新しい情報が入ってきにくいのです』(前出・精神科医師)

現代でも、周囲の人たちが優しく教えることで共存していくことができるはずです。

しかし、教えたり注意したりするということになると、今度はいわゆる“ブチ切れ”の恐れを考慮せねばならないので、「知らないのだから許そう」程度の心がけでいればいいのだとも言えるでしょう。


→次ページでは、コールセンターの高齢者の利用割合を見ていきましょう。

コールセンターの高齢者の利用割合

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増加している高齢者クレーマー。その影響がはっきりと出ているのが、コールセンターです。

『コールセンター白書』の調査によると、コールセンターへ問い合わせをする人の4割近くが60代以上の高齢者ということです。

なかでも面倒なクレームを持ち込むのは男性高齢者ということで、逃げ場のないコールセンターや企業の相談窓口などが格好の標的になっているとも言えるかもしれません。

もちろん、「商品の使い方がわからない」というような正当な問い合わせもあるはずですが、団塊の世代が退職し始めたころからクレーム問題が取り沙汰されるようになったという背景もあるようで、見過ごすことはできないでしょう。

高齢者のクレームに対応する方法

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(1)相手が納得するまで話を聞く

クレーム対応で一番やってはいけないのは、話をよく聞かず、相手が言い終わらないうちに反論したり遮ったりすることです。

これは火に油を注ぐ結果となり、必要以上に問題をこじれさせることになります。

自分に非はないと思っていても、「貴重なご意見です」「勉強させていただきます」という態度で、真摯に話を聞くことが大切です。

この時点でうまく対応できれば、むしろクレーマーとの関係が良好となり優良な顧客となってくれることもあります。

相手に「話足りない」と思わせないよう、徹底的に聞く。面倒な敵となるか、今後も関係を続けるお客となるかの別れ目です。

(2)解決策を提示する

クレーム対応の基本は、発生した問題をどうやって解決するかということです。

まずは相手の話をしっかりと聞いて、「何に怒りを感じているのか」「トラブルの問題点はどこなのか」を認識するようにしましょう。

決して放置したりぞんざいに扱ったりせず、何をどうするのか、解決策を提示してください。

これは、対処後に報告、改善するときにも有効になってきます

(3)悪意のある要求は認めない

正当なクレームではなく、金銭を要求することが目的であるような場合には、簡単に認めず、うかつに話し合いを進めないようにしましょう。

始めからお金を目的にお店を訪れていることもあるため、周到な言い分を用意していることもあるのです。

問題を大きくしないためには、弁護士を立てるなど、専門家への依頼も検討しましょう。

(4)コールセンター特有の対応

顔の見えない電話での対応は、対面でのクレーム処理以上に難しいものです。

高齢者では耳の問い人もいるため、会話のスピードを遅くし、相手が聞き取れるような話し方をする必要があります。

最初は冷静だったクレーマーが、突如として怒り出すようなことがある場合には、「声が聞こえない」「話が早くて理解が追いつかない」などの理由が考えられます。

ハッキリ、ゆっくり話すことで、ただ話を聞いてもらいたいという高齢者からの電話にも、必要以上に時間を取られることがなくなるでしょう。


→次ページでは、高齢者のクレームを予防する方法を見ていきましょう。

高齢者のクレームを予防する方法

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(1)明るい挨拶をする

明るく元気な挨拶は、それだけで迫力をうみ、クレームを事前に防ぐ効果があります。

あいさつの声が小さいと、反論してこないと思われクレーマーも文句を言いやすくなってしまうのです。

クレーマーは相手を見て文句を言ってくるものだと心得ましょう。

(2)スタッフの教育をする

多くのクレーム原因となるのは、人的なミスによるものです。そのため、店舗スタッフなどに顧客対応のルールなどを徹底させておくことが大切。

スタッフによるミスは言い訳の聞かないものであるため、クレームもヒートアップしてしまう可能性があります。

問題が起きないよう、事前に教育しておくことでこれを避けることができます。

また、実際にクレームを想定して、どのような対応をするか訓練することも重要と言えます。

スタッフで対応できなくなると上司など対応に割く人員が増えてしまい、影響が大きくなってしまいます。

(3)対応者を明確にする

クレームが起きた際、その問題を理解している、または解決するための知識を持っている人が誰なのか、十分に知っておくことが必要です。

これが明確になっていない場合、対応できると思っていたものに対応できず、見当違いの人を応援に要請したり、必要以上に相手を待たせてしまったりして余計に怒りを買ってしまうことがあります。

個人で対応できない場合の連絡系統は明確にしておくべきでしょう。

(4)最寄りの警察を把握しておく

言葉で騒ぎ立てるのはもちろん、エスカレートして暴力的な行動に出ることもあるクレーマー

お店や他のお客さんにまで被害を拡大しないよう、いざというときは警察に連絡できるようにしておきましょう。

クレームでショックなことを言われたときの対処法

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接客で疲れてしまった場合は、休日に人と会わないようにしましょう。友達に八つ当たりしてしまったり、グチを垂れ流してしまったりする可能性があります。

もし出かける場合には、自然や動物と触れ合えるスポットがおすすめ。動物園はもちろん、猫カフェなどで息抜きしてもいいでしょう。

家で過ごす場合にはゲームをして過ごしてもいいかもしれません。

このとき、できるだけ頭を使うカードゲームや麻雀などがいいでしょう。没頭してつらい記憶を忘れることができます。

また、マラソンなどの有酸素運動もおすすめです。

家の周辺を走ってもいいですし、思い切ってジムなどで汗を流してもいいのではないでしょうか。ストレス発散に有効です。


→次ページでは、欧米で高齢者のクレームが少ない理由を見ていきましょう。

欧米で高齢者のクレームが少ないワケ

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欧米の高齢者たちは、日本の高齢者にくらべて、激しい社会の変化を経験していないと言われています。

仕事はあくまで日々のお金をかせぐための手段であり、すぐにでも仕事はやめたいと考える人も少なくなかったでしょう。

日本人にくらべて怠惰なところもあるだけに、仕事をしない老後の生活をより楽しめているのです。

そんな中で、わざわざクレームをする必要はありません。遊ぶために街へ足を運ぶ欧米の高齢者にとって、クレームは時間のムダでしかありません

日本でも、することがなくなった老人たちが何を求めているのか理解し、それを提供することでクレーム高齢者が減っていくのではないでしょうか。

高齢者のクレーム体験談

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(1)自分のミスを棚に上げる

『レンタルビデオ店でバイトをしていたんですが、オジサンが急に怒鳴り込んできて、「ビデオがいきなり再生されなくなった! どうしてくれる!」と一方的に文句を言ってきました。らちがあかないので、店長と2人で家に伺いました。デッキを確認してみると確かに動いていませんでしたが、よく見るとコンセントが抜けてたんです。途中で足でも引っかけたのでしょう。説明して怒りはおさまったようですが、謝罪もなく疲れました』(20代男性/フリーター)

自分の思い通りにいかないことがあると、すぐに文句へとつながってしまうというタイプです。

相手に非がなく自分のミスだったとしても、絶対に謝ろうとはしません。仕事人間で、亭主関白な高齢者によく見られれます。

(2)説明責任を求める

『クリーニング店で勤務しています。クレームの多い仕事だと思いますが、特に高齢者が増えています。先日、洋服に傷みが出たとクレームをつけにきたおじさんがいて、「説明責任」「違法性」「賠償責任」など、誰かから入れ知恵された法律知識をわめきたてていました。こういう変な知識をつけた人は自分は正しいと思ってるからやっかいですね。大抵は向こうが間違っているんですけど。何度も来て暴れるので、最終的には警察に来てもらい対応してもらいました』(40代男性/クリーニング店勤務)

付け入るスキがあるとここぞとばかりに攻め込んでくるクレーマー。

中には、金銭を目的に家族など周囲の人がそそのかしていることもあるようで、こういった高齢者には毅然とした態度で対応する必要があると言えそうです。


→次ページでは、高齢者と若者のクレームの違いを見ていきましょう。

(3)若者と質が違う

『若い人のクレームは、きちんと理論的に説明すれば納得してくれる人が多いと思う。トラブルの原因がわかれば納得してくれる。それに対して高齢者は、一方的にこっちが悪いと決めつけて、屈服させることを目的にしているように感じる。自分が特別扱いされていないとか、誠意が足りないということが怒りにつながっている』(30代男性/コンビニ店員)

高齢者と若者のクレームの質についても違いが見られるようですね。

八つ当たりのように感じられるクレームが高齢者に多いことも、こういったことが理由なのかもしれません。

子どもの声が騒音に聞こえる場合はうつ病の疑いも

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『医学的に心配なのは、最近よく聞く“子どもの遊ぶ声が騒音にしか聞こえない”という問題です。

かつての高齢者は度が過ぎれば、「うるさいぞ」と叱りはしましたが、そうでなければ、「子どもが元気なのはいいこと」として、子どもの遊ぶ声を聞き流していました。そういった態度は、たとえ他人の子であっても“類として子孫を育てる”という本能からくるものでした。

それが“騒音”としてしか認識されないという訴えには、うつの疑いを念頭に置いて診察にあたる必要性も感じます』(前出・精神科医師)

ドイツのように、「乳幼児・児童保育施設及び児童遊戯施設から発生する音は、環境騒音から除外する」という主旨の法律が、わが国でも必要になってくるのかもしれません。

まとめ

「高齢者にクレーマーが増えているワケ」や「クレームへの対処法」などについて紹介しましたが、いかがでしたか?

今は「高齢者のクレーマーはイヤだ」と思っている人も、油断していると自分もそのようなことをする老人になっていくかもしれません。

いま一度、自分の行動にも目を向けたいものですね。

【参考リンク】
電波環境協議会における「医療機関における携帯電話等の使用に関する指針等」の公表 | 総務省

●追記/パピマミ編集部
●モデル/神山みき(れんくん)貴子(優くん、綾ちゃん)



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