着床前診断とは?わかること、検査方法、受けられる人は?
2019年8月21日 | よみもの着床前診断とは?わかること、検査方法、受けられる人は?

賛否両論さまざまな意見が飛び交う「着床前診断」。染色体異常のない赤ちゃんを妊娠したい、絶対に男の子or女の子の赤ちゃんが欲しい、など妊娠を希望する女性のあいだで今注目を集めています。
今回は着床前診断の基本的な検査内容や目的について詳しくご説明しますが、決して着床前診断を推奨・反対しているわけではありません。妊娠を希望する女性がぜひ知っておきたい基礎知識としてお読みいただければ幸いです。
着床前診断でわかること、できること
着床前診断とは?
着床前診断(ちゃくしょうぜんしんだん)とは、着床前、つまり妊娠が成立する前の受精卵の段階で検査をおこなうことです。
受精卵は、妊娠する前の段階ですでに遺伝子や染色体などの情報を持っています。例えば、赤ちゃんが男の子か女の子か、染色体や遺伝子の異常があるかないかなどです。受精卵が着床することで妊娠が成立しますが、着床する前に診断をおこなうため「着床前診断」と呼ばれています。
着床前診断でできることは2つ
着床前診断でできることは2つあります。
1.染色体や遺伝子の異常を知ることで事前に流産を防ぐ
妊娠が成立したものの初期段階で流産してしまう確率は決して低くありません。そして、その原因の多くが受精卵の染色体異常と言われています。
つまり、染色体異常があるかどうかを判断し、異常のない受精卵を着床させることで結果的に流産を防ぐことができます。
また、ダウン症なども染色体異常が原因と言われています。妊娠成立後、染色体異常を持った胎児だと判明することで中絶手術がおこなわれることは現実的に存在します。それを未然に減らすという側面も持ち合わせています。
2.男女の産み分け(※日本では認められていない)
胎児の性別は、受精卵の段階ですでに男の子か女の子かが決まっています。どうしても男の子が欲しい、女の子が欲しいという場合は、受精卵の段階で性別を確認することが技術的には可能です。
しかし現在のところ、着床前診断による男女の産み分けは日本産科婦人科学会により国内では禁止されています。その背景には、受精卵といえども将来は胎児になる大切な命であるにも関わらず、性別で命を選択することになりかねないという倫理的な理由があります。
着床前診断の検査方法は?
着床前診断は、受精卵を取り出して診断するため体外受精が必須となります。そのため、以下のようなステップに沿っておこなわれることが一般的です。
- 排卵誘発剤で卵胞を育てる
- 女性から卵子、男性から精子を採取する
- 採取した卵子と精子を受精させ受精卵を育てる
- 育った受精卵から一部の細胞を取り出し検査する(着床前診断)
- 診断後、受精卵を子宮へ戻し着床を待つ
1~5にかかる期間は人により異なりますが、早くても2か月、長ければ数か月以上を要します。また、体外受精による妊娠率は30%前後と言われています。受精卵を子宮へ戻したとしてももちろん100%妊娠するわけではありません。
誰でも着床前診断を受けられる?
対象となる人は限られる
着床前診断は誰でも受けられるわけではありません。習慣的に流産を繰り返している方、体外受精をおこなう不妊症の方、転座などの染色体異常をお持ちの方など担当医が認めた方に限ります。
また、着床前診断はすべてのクリニックで実施しているわけではありません。実施しているクリニックを受診した上で、さらにそのクリニックを通じて日本産科婦人科学会に申請しなければならないこともあります。
かかる費用
費用については、着床前診断及び体外受精それぞれの費用が必要です。どちらも健康保険は適用されないため、それぞれ数十万円かかることが一般的です。そのため、全体の費用を合計すると100万円を超えることもあります。
安全性と海外での診断
体外受精は子宮へ針を刺して卵子を採取するため、採卵時の出血や排卵誘発剤の副作用などのリスクが挙げられます。卵子を採取する際は痛みをともないますが、麻酔を用いることが一般的です。着床前診断は、体外受精の手順を含むため、安全性でいうと体外受精の安全性と同程度となります。
また、日本国内で認められていない男女の産み分けを希望するご夫婦のなかには、着床前診断の規制のないアメリカやタイまで行って受ける人もいます。ただし、渡航や長期滞在にかかる費用、そして日本国内以上に高額な医療費が必要となります。
まとめ
今回は、着床前診断でわかることや検査方法、誰が受けられるかなどの基礎知識についてご説明しました。
不妊症や習慣流産で悩んでいる方にとって、受精卵の段階で診断を受けられることはとても画期的ですが、すべての人が受けられるものではないことを理解しておきましょう。
また、費用が高額になること、検査した受精卵で必ずしも妊娠できるわけではないことも理解し、担当医と十分話し合うことをおすすめします。
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