男性不妊の検査や結果で夫のために妻ができる心のケアと環境作り
2019年8月15日 | よみもの男性不妊の検査や結果で夫のために妻ができる心のケアと環境作り

不妊の原因は女性にあると思われがち。しかし実際は、半数近くが男性不妊によるものといわれています。不妊を乗り越えて赤ちゃんを迎えるためには、状況に合った治療が必要不可欠。そのためにはまず検査を受ける必要がありますが、このステップですでに心折れてしまう男性も少なくないようす。
また、検査の結果不妊の原因が自分にあったことを知り、かなりのショックを受けてしまうことも。以前、男性が抵抗なく検査を受けられるための方法を『不妊の原因は夫かも!? 男のプライドを傷つけずに男性不妊を検査する方法3つ』でご紹介しましたが、検査前はもちろん、実際に男性不妊が判明したとき、妻としてどのように夫を支えていくべきなのか。妻ができる夫のケアについて考えてみましょう。
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vol1.不妊の原因の半分は男性にあった!?男性不妊の種類と原因
vol2.もし不妊症の原因が夫にあったら?原因別にみる治療法とは
男性が不妊検査に積極的になれない理由
夫婦間で「不妊かもしれない」という思いを抱いても、すぐに「検査へ行ってみよう」とはならないもの。その理由のひとつに、“男性側が検査に協力的ではない”ことがあります。
不妊検査は、主に卵子や精子の状態、生活習慣や病気、子宮内の環境などを確認して不妊治療が必要かどうかを判断するためのもので、男性の場合は精液検査で精子の状態をみるのが一般的。その過程で生じるさまざまな心の葛藤が、男性の気持ちを検査から遠ざけてしまっているようです。
婦人科へ入りにくい
「妊娠にまつわること=婦人科」のイメージが強く、男性不妊の検査も婦人科でおこなうと思っている男性はかなり多いようです。でも実際は、泌尿器科で受けることもできます。
「ここの先生は名医だから、一度お世話になっておけば将来前立腺や腎臓に不安があったときにも頼れそうだね」など、長い目でみて夫にメリットのありそうな条件の泌尿器科を一緒に探してあげるといいかもしれません。
採取室での精子の採取に抵抗がある
精液検査では、2~7日ほどの禁欲期間を設けたのちに院内の採取室でマスターベーションをおこない精液を採取します。この工程にメンタル面でダメージを感じる男性も多いそう。そのため、検査に対しては妻からあまりアレコレ口出しせず、検査を受け入れてくれたときと検査が終わった後に、心を込めて「ありがとう」とだけ伝えましょう。
また、なかには自宅で採取した精液を持参できる病院もあるので、そのようなところを勧めてあげるのもいいですね。
経済的不安
一家の大黒柱でもあるご主人。一生涯家族を養っていかなければならない立場として、経済的な観念はときに女性よりも強いことがあります。妊娠はゴールではなく、子育てのスタート。育児でも経済的負担が増えるため、妊娠までの過程で貯金を使い果たすわけにはいかないですよね。「俺の稼ぎで大丈夫かな」「子どもは欲しいけど、治療は高いって聞くし…」など漠然と不安を感じ、足を踏み出せない男性もいるようです。
男性は数字や見通しなど、明確なものがあると理解しやすい傾向にあります。そのため、まずは一家の経済状況を夫婦で共有し、検査や治療にかかる費用、利用できる助成金などを調べて「いくらまでなら費用に充てられるか」の具体的な目安を算出しましょう。そのうえで、「◯回まではチャレンジしてみよう」と、ふたりの納得できるゴールを明確に決めると、男性も前向きに受け入れやすくなります。
検査で男性不妊が判明。夫の心をケアしてあげる妻の対応
心の葛藤を乗り越え、なんとか検査に協力してくれた夫が、結果「男性不妊」だったら…。そのショックは計り知れないでしょう。自分のせいでなかなか赤ちゃんが授からないとわかれば、プライドも深く傷つき、自信を失ってしまいかねません。そんなとき、妻のちょっとした言動がその後のモチベーションを良くも悪くも左右することがあります。妻は夫にどんなことをしてあげられるでしょうか?
夫の気持ちが落ち着くまで待つ
世間的にはまだまだ女性のモノと思われがちな不妊の原因。そのため、男性は女性以上に気持ちの整理がつくまで時間が必要です。一日も早く授かりたい思いから、原因がわかるとすぐに次のステップを検討したくなりますが、ここはちょっぴりガマン。赤ちゃんにまつわる話はしばらくお休みして、
「今の暮らしがあるのはあなたのおかげ」
「何気ない時間でも一緒にいられると幸せ」
など、ご主人の存在自体を肯定する言葉をかけてあげましょう。不妊治療に臨むために夫婦の絆を深める時間だと思えば、焦る気持ちも落ち着きますよ。
不妊治療の過程を共有する
一言で不妊治療といっても、その種類や身体的な負担の度合いはさまざま。ただ、どの治療においても女性のほうに負担が重くなりがちで、原因が100%男性側にあったとしても、ある程度の精神的・肉体的負担を強いられてしまいます。
そこで、「この治療法だとあなたは◯◯で私は◯◯をするんだね」など治療内容を共有して、“不妊は夫婦ふたりの問題で、ともに乗り越えるもの”という思いをやんわり伝えましょう。
また、「一緒に頑張ろうね」と今後の方向性のみを話すようにして、不妊の原因に言及しないことも大切です。間違っても、「私はこんなにつらい治療をしなきゃいけない」とか、「女ばっかりこんなに大変な思いをする」と、つらさ比べや苦痛を訴える言いかたにならないように。
普段通りの生活を送る
少しでも成功率が上がるように…と、つい“精力がつく食材”や“健康法”を勧める妻も多い様子。ご主人のためを思っての行動なのでしょうが、かえって「俺のせいで赤ちゃんができないんだ」と感じさせ、男性のプライドをさらに傷つけてしまいます。
食べさせたい食材があれば、「テレビで見て美味しそうだったから挑戦してみたの」など、不妊を悟らせない方法でさりげなく。また、運動などは「天気がいいから一緒に歩こう」と、趣味の域でふたりで取り組めるような工夫をしましょう。
最後に
なかなか赤ちゃんを授からない焦りや不安、治療の負担などからつい自分のことでいっぱいいっぱいになりがちですが、相手の気持ちに寄り添う心のゆとりは忘れずにいたいもの。夫が検査や治療に積極的ではない場合、その背景にどんな思いがあるのかを考えることができれば、一方的に責めたり悲観したりすることなく、解決策を冷静に話し合えるはずです。
また、「不妊の原因は自分にあった」と分かれば、誰だってかなりのショックを受けるものです。どんな言葉をかけてもらえば自分を責めずに済むか、穏やかな気持ちで治療に向き合うにはどんな環境が必要かなどを逆の立場で考えて、自分がされたい言動をパートナーにしてあげるといいかもしれませんね。
赤ちゃんを授かることにとらわれ過ぎて気持ちがすれ違ってしまわぬよう、不妊は夫婦ふたりの問題として前向きに捉えられる関係性を築くことからはじめてみましょう。
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