間違った「不妊症」にならないために!産婦人科医 高尾美穂先生に聞いた「正しい妊活」
2019年8月10日 | よみもの間違った「不妊症」にならないために!産婦人科医 高尾美穂先生に聞いた「正しい妊活」

妊活中のかた、「不妊症」の定義が変わったのをご存知ですか?
これまで「不妊症」は、おおよそ「妊娠を望み通常の性交をおこなっていながらも2年間かなわない状態のこと」と定義されていました。それが、2015年8月、日本産科婦人科学会はこの期間を「1年」に変更しました。
参照:不妊の定義の変更について/公益社団法人 日本産科婦人科学会
WHO(世界保健機関)をはじめとする海外の諸機関でも「1年」で定義しているところが多く、同会では「女性がより早期に適切な不妊治療を受けることにつながると期待」しての変更と発表しています。
では実際に、不妊症の定義が1年に短縮されることにどんなメリット・デメリットがあるのでしょう? 産婦人科医の高尾美穂先生にお聞きしました。
「不妊症」の定義が1年に変更。メリット・デメリット
<メリット>
- ・妊娠や不妊に対する意識が高まる
- ・早い段階で検査・治療をうけることができる
<デメリット>
- ・不妊症に該当するカップルが増える
- ・自然妊娠ができる状態でも早期治療に進んでしまう
- ・不妊治療を始めることによるストレス等でかえって妊娠しづらくなる
デメリットの影響を受けないために私たちに何ができるのかを、産婦人科医である高尾美穂先生にうかがってきました。
産婦人科医が嘆く、多くのカップルに圧倒的に足りないもの
高尾先生は「不妊の定義が1年に短縮されたことにより、多くのカップルが結果的に“不妊症”に当てはまってしまう」と言います。なぜなら、「妊娠したい」と言っているにも関わらず正しい妊活方法を知らない人が多いから。
例えば「妊娠しない」と言って外来に来られる患者さんにはこんなケースが多いそう。
- ・排卵日付近でセックスしたが妊娠しない→1回しかしていない
- ・なかなか妊娠しない→月に1〜2回しかセックスをしていない
学校教育では「性交すると妊娠する」と教わりますが、「性交しても必ず妊娠できるとは限らない」とは学びません。ですが現実は、精子・卵子の生存期間を考えても妊娠できる期間やタイミングは本当にわずかなあいだのみ。それにも関わらず、妊娠を望んでいながらセックスが圧倒的に足りていないカップルが多いそうです。
「排卵日が最も妊娠しやすい」は間違い!?
「排卵日が最も妊娠しやすい」と考えている人は多いですが、最近では「排卵日の2日前にセックスをするのが最も妊娠しやすい」ことが知られています。つまり「排卵日だけセックスをすればOK」という話ではありません。
「今日が勝負!」と決め打ちして頑張るのではなく、日頃から仲良くしておくことが大切です。
現場を知る産婦人科医が伝えたい「正しい妊活」
最後に、間違った妊活で「不妊症」と診断されないためにも、「正しい妊活」について伺いました。
- ・基礎体温を測り自分の周期を知る(少なくとも3ヵ月以上は続ける)
- ・排卵日の1週間前から2日に1回はセックスをおこなう
- ・排卵日検査薬や病院で排卵がおこなわれた日を確認する
- ・排卵確定日にも最後のセックスをおこなう
これらを1年続けても妊娠しなかった場合、ここまでして初めて「不妊症」と考えて欲しく、次のステップを検証する必要があるとのお話でした。
もちろん年齢面でみれば、35歳以上のかたの場合、20代、30代前半のかたに比べると早い段階での次のステップに向けたジャッジが必要です。
でも、やるべきことをやっていない段階で「不妊症かも」と自然妊娠を諦めるのは禁物。ストレスにもなり、治療を進めるごとにカラダにもココロにも負担をかけることになり、余計に妊娠しづらい状態を招いてしまう危険性があります。
まとめ
不妊症だとわかり次のステップに進むには、終わりが見えないゴールに対しての精神的な問題や金銭的な問題など、大きな覚悟が必要です。
「不妊症かも…」と考える前に、まずは自分達でできるところまで「正しい妊活」で最大限がんばってみてはいかがでしょう。
【監修】
産婦人科専門医 高尾美穂先生
産婦人科専門医・医学博士・イーク表参道副院長・スポーツドクター・Gyne Yoga主宰。東京慈恵会医科大学大学院修了後、慈恵医大病院 産婦人科助教、東京労災病院 女性総合外来などを経て現在イーク表参道 副院長を務める。現在は『西洋医学』をベースとし、ヨガ、アンチエイジング医学、漢方をはじめとした東洋医学、栄養学、スポーツ医学それぞれを総合的多角的に用い、女性がよりよく歳を重ねていけるようサポートすることをライフワークとしている。→産婦人科医 高尾美穂先生による女性のカラダの基礎知識