パートの時給がUP!? “同一労働同一賃金”がもたらすメリットデメリット
2017年7月27日 | よみものパートの時給がUP!? “同一労働同一賃金”がもたらすメリットデメリット

「同一労働同一賃金」という言葉をご存知ですか?
これは、同じ仕事内容であれば、正社員・非正規社員・性別・年齢等に関わらず、同じ額の給料を支払うべきだという考えです。
現行の安倍内閣が議論している政策で、2016年12月には実現に向けたガイドラインも作られました。
同一労働同一賃金が導入されると、私たちの生活はどのように変わるのでしょうか。メリット・デメリットとともに、生活に与える影響を考えていきましょう。

同一労働同一賃金とは 〜とあるファミリーレストランの例〜
「同一労働同一賃金」とはどのようなことなのでしょうか。今回はファミリーレストランを例にして、説明していきます。
とあるファミレスチェーン店「P」には現在、以下のメンバーがメインとして働いています。
・店長(正社員・Pへ配置されて2年半)
・チーフ(正社員・Pへ配置されて1年)
・Aさん(50歳パート/Pで勤続10年/時給1,000円)
このチェーンでは、本社から各店舗へ店長とチーフを1名ずつ派遣しています。
店長・チーフともに全国の店舗をローテーションで回るため、1つの店舗にいるのは長くても3年。
したがって、店の日常業務に最も詳しいのは勤続10年のAさんです。特にチーフは昨年この店舗に来たばかりなので、今でもAさんが手取り足取り仕事を教えている状況。
チーフとAさんの仕事内容は同じです。しかし、正社員とパートタイムという立場の違いから、給料にはだいぶ差があります。
時給換算すると、チーフはおよそ1,800円程度。いっぽう、Aさんは時給1,000円で働いています。
Aさんにとっては、この給料差が時々ストレスのようです。「私がパートだからって、不公平じゃない?」とグチをこぼすこともあります。
……どこにでもありそうな、ファミリーレストランの状況ですね。さて、ここに「同一労働同一賃金」が適用されるとどうなるでしょうか?
厳密なチェックが入ることにはなりますが、Aさんとチーフの仕事内容が同じであると判断されると、チーフとAさんの給料差がなくなります。
Aさんはパートのままですが、正社員であるチーフと同額の給料をもらうことができるようになるのです。
正社員への影響
同一労働同一賃金は、私たちにどのような影響をもたらすのでしょうか。もうすこし詳しく見ていきましょう。
まずは、正社員側への影響です。
給与・賞与が減るおそれがある
同一労働同一賃金が実現すると、企業全体の人件費が高くなる可能性があります。
先程のファミレスの例でいえば、Aさんにチーフと同額の給料を払わなければならなくなりますね。
その額をどこに設定するのかは企業の判断になりますが、現状の間を取って「時給1,400円」とするなら、チーフの給与額は減らされてしまいます。
また、チーフの給与は据え置き、Aさんを「時給1,800円」にするなら、「Aさんを賃上げするために、チーフのボーナスをカットする」という決定がされるかもしれないのです。
人事異動のたびに給料の額が変わる
同一労働同一賃金のシステム下では、給料額を「人」ではなく「仕事内容」に紐付けすることになります。
同じ社内にいても、異動により仕事内容が変われば、給料の額も変わってしまうのです。
各部署を異動することで業務全体を覚え、キャリアアップしていくという日本の企業スタイルにおいては、働く側も会社側も非常に面倒なことといえます。
パート・アルバイトへの影響
いっぽう、非正規雇用者はどのような影響があるでしょうか?
給料が増える可能性がある
パートやアルバイトでも、正社員と同等に働いているならば、給料が大幅にアップする可能性が出てきますね。これは同一労働同一賃金制度における最大のメリットです。
前述のファミレスPで、Aさんがチーフと同額の給料を貰えれば、Aさんの働くモチベーションは大きくあがるでしょう。
自主的に非正規でいることが難しくなるかも
しかし、メリットばかりとも言えません。
「正社員と同じ額の給料を払っているのだから、正社員になってくれないか」。企業側からそう求められる可能性も出てきます。
パートやアルバイトで働く人が全員、正社員になりたいわけではありません。子育てや介護、さまざまな事情により、自らパートタイマーを選んでいる人もたくさんいるはずです。
「事情があって正社員にはなれない」と断ったときに、不当な解雇や給料の減額などをされることも現状ではありえますね。
同一労働同一賃金には、その他にもさまざまな問題があります。
『同じ仕事してれば、バイトでも正社員と同じ給料もらえるってことですよね。正社員になるメリットがもはや感じられません。同一労働同一賃金の話を聞いて、就活するのやめようかなって正直思いましたもん』(20代女性/学生)
『人件費が上がるので、新規の雇用は減るでしょうね。簡単な業務はAIに取ってかわられ、人間の仕事そのものがなくなってくるかも』(40代男性/会社員)
『仕事内容が同じだからって、若いフリーターと同じ給料に下げられても困りますよ。こっちは結婚して家も買い、子どももいるんです。未婚のフリーターとは、生活にかかるコストがぜんぜん違う。いま給料が下がったら、やっていけません』(50代男性/飲食チェーン)
同一労働同一賃金は、労働者間の格差をなくすことが目的ではありません。
非正規雇用者への賃金を上げ、消費を活性化させようというのが、この政策の最終的な目標なのです。
果たしてその目標は達成できるのでしょうか。私たちの日常に大きく関わる問題だからこそ、当事者意識を持って動向を見守っていきましょうね。
【参考リンク】
・同一労働同一賃金ガイドライン案 | 厚生労働省(PDF)
●文/パピマミ編集部