どうやって立ち直る? “母ロス”に陥った女性たちの体験談3つ
2017年7月14日 | よみものどうやって立ち直る? “母ロス”に陥った女性たちの体験談3つ

“母ロス”という言葉を耳にしたことがありますか?
これは、母親を亡くしたときに襲ってくる、深い苦悩や悲しみのことです。
母と娘の密着度が高いわが国では、特に女性が深刻な母ロスに陥りやすい傾向があります。母の死を受け入れることができず、悲嘆にくれてしまう。時には悲しみのあまり無気力に陥り、日常生活に支障が出てしまうこともあるようです。
今回は、母親を亡くした女性たちから心境を伺い、悲しみの乗り越え方について考えてみました。

(1)アドレス帳が削除できないAさんの話
Aさんは30代、独身の女性です。2年前、最愛の母親を病で失いました。
何年もの長きにわたり、闘病してきた母。Aさんは可能な限りそんな母親によりそい、励ましつづけていたそうです。
『病室で過ごすのは寂しかったのでしょうね。母は些細なことでも私に電話やメールをよこしてきたんです。でも、母が亡くなってから、私の携帯電話はぱったり鳴らなくなってしまいました。
私はいつまでも、母の電話番号をアドレス帳から消すことができません。その番号はもう他の人が使っているかもしれないし、母から電話がかかってくることはもうないのに……きっとまだ、母の死を受け入れられてないということなんでしょうね』(30代女性/派遣社員)
携帯電話を握りしめながらつぶやくAさん。母のアドレスを消すことで、母との接点まで失ってしまいそうに思えるのでしょうね。
お話を伺っている私も、胸がつぶれるような思いがしました。
(2)出産後に母ロスをぶりかえしたBさんの話
Bさんは1児の母。結婚前に母を心不全で亡くしています。
自分なりに悲しみは克服してきたつもりでしたが、出産後に思いもよらぬ感情の波に襲われたそうです。
『自分が親になってみると、母へ聞きたかったこと、今だからこそ伝えたいことばかり。夫と子どもが寝静まった夜中、一人ぼっちで部屋にいると、母のことを思い出してしまいます。どうしようもない喪失感、そして親孝行のひとつもできなかった後悔で、涙がとめどなく溢れちゃうんです。何もできなくなり、呆然としたまま朝を迎えることもしばしばです』(30代女性/主婦)
出産して改めて、母親の偉大さに気づくというのはよくあること。それは母ロスをぶりかえす引き金ともなるんですね。
ママ友たちが実母の協力を得て、楽しそうに子育てしている姿を見るのもつらいのではないでしょうか。
母に育児の悩みをうちあけ、「何言ってるの、あなただって小さいころは手がかかる子だったのよ〜」と笑い飛ばしてくれればどんなにいいか……出産後の母ロス、なかなか根深い問題となりそうです。
(3)20年経っても悲しみを抱えるCさんの話
Cさんは20年前に母と死別しました。今でもふと、深い悲しみに襲われることがあるといいます。
『ふとした瞬間に、強烈に母のことを思い出します。「おかえり」って言ってもらいたい、思い切り甘えたい、たくさんほめて欲しい……おかしいですよね。でも、一度その状態になるとしばらくは立ち直れません。長いと何か月間も、やり場のない怒りや強い喪失感で一杯になってしまいます』(50代女性/パート)
母とはまるで姉妹のように仲良しだったというCさん。その分だけ、なくなったときの喪失感は強かったそうです。
20年という長い月日がたっても、母ロスを完全に克服することは難しいのでしょう。
母ロスから回復するために〜キューブラー・ロスの5段階プロセス〜
深い母ロスに陥らないようにするためには、死を受け入れる心の働き(プロセス)を知っておくことが役に立ちます。
ここで、死生学やホスピス運動の第一人者キューブラー・ロス博士が提唱している『受容の5段階プロセス』をご紹介しましょう。
このプロセスは、もともと「自らの死を受け入れていく過程」として構想されたもの。しかし、愛する人の死を受け入れるときにも、同じ心の働きを経ると考えられているんですよ。
第1段階:「否定と孤独」
死別への衝撃から、強い否定の感情が生まれる。焦り、無力感、不安感で一杯になってしまう時期。
第2段階:「怒り」
「どうして私を残して死んでしまったのか」というような、亡くなった本人への怒りや、死別の苦しみを経験していない友人などへの妬み、憤りなどを感じる時期。
怒りが自分自身に向かい、自責の念にとらわれることもある。
第3段階:「取り引き」
「もしもあの人が生き返るなら、何だってする」といったような思いが押し寄せてくる時期。
少しずつ過去を振り返ることができるようになってくる。
第4段階:「抑うつ」
痛烈な孤独感や不安感、喪失感がやってくる。「誰とも関わりたくない」「1人になりたい」という気持ちになる時期でもある。
第5段階:「受容」
穏やかに死別の現実を受け入れることができるようになる時期。
もちろんすべての人がこのプロセスを順番通りに踏んでいくわけではありません。ときには何年も停滞したり、後戻りしたり、いくつものプロセスが同時に押し寄せたりもするでしょう。
大切なのは、否定や孤独感、喪失感は全て、現実を受け入れていくために必要な過程であると知っておくことです。
そして、これらの感情を持っている自分を過度に責めることなく、認めてあげることだとロス博士は説いています。
母親を亡くすことは、とてもつらいものです。でも、いつか現実を受け入れ、穏やかに過ごすことができる日がやってきます。
それまでは怒っても、悲しんでも、無力感にさいなまれてもいい。どうか、そんな自分の心持ちを認めてあげてくださいね。
●文/パピマミ編集部