事故やケガを阻止! “子ども乗せ自転車”の注意点と安全対策7つ
2017年2月24日 | よみもの事故やケガを阻止! “子ども乗せ自転車”の注意点と安全対策7つ

こんにちは。元教習指導員の奈都木あやです。
近年、自転車にお子さんを乗せて走るママ&パパの姿がずいぶんと増えました。
自動車は停める場所に困るし、バスはちょっと不便。だけど、歩いて行くには遠すぎる。そんなときに便利なのが自転車というわけですね。
今や、自転車は子育てになくてはならないアイテムだという方も多いことでしょう。
しかし、その反面、ヒヤリとしたという経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、親子で安心して乗れるように、その注意点と安全対策をご紹介します。

子ども乗せエピソード
まずは、自転車にまつわるエピソードを子育て中のママに聞いてみました。
『子ども2人を電動アシスト自転車に乗せて、どこまでも行きます。1日で往復約15km走ることもあります。おかげで、骨密度が上がりました! ※バッテリー残量に注意』(40代ママ)
『坂の途中にある見通しの悪い交差点で、出合い頭に自動車とぶつかりかけてバランスを崩し、転倒しました。子どもは奇跡的に無傷だったけれど、私は手を擦りむきました』(30代ママ)
『スピードを出し過ぎてカーブで転倒しました。娘はあごを、私は腕を擦りむきました』(30代ママ)
微笑ましいエピソードもあれば、危険なケースも少なからずあるようです。
法律上の注意点
私のママ友(東京都在住)が数か月前に、3人目のお子さんを出産しました。子宝に恵まれて幸せいっぱいの彼女ですが、目下の悩みは自転車です。
第1子は小学1年生。第2子は5歳。そして、第3子は10か月。
赤ちゃんもだいぶ大きくなったので、そろそろ自転車で移動したいけれど、3人乗せても大丈夫かしら? というお悩みです。
では、さっそく道路交通法を確認してみましょう!
道路交通法は、原則として、自転車の二人乗り運転を禁止しています。
しかし、例外があります。『公安委員会は、必要があると認めるときは、乗車人数を定めることができる』というものです。
つまり、2人以上乗れるかどうかは各都道府県によって違うということです。
その一例として、東京都の場合(東京都道路交通規則)をご紹介します。
・16歳以上の運転者が幼児用座席に幼児(6歳未満。以下同じ)1人を乗せるとき
さらに、幼児1人をバンドやおんぶ紐などで背負って運転することができます。抱っこは許されません。
・16歳以上の運転者が幼児2人同乗用自転車に幼児2人を乗せるとき
しかし、幼児2人を乗車させた場合は、幼児を背負って運転することはできません。
※幼児2人同乗用自転車……幼児2人を乗せることができる特別な構造や装置のある自転車です。また、安全基準に適合したものにはBAAマークや幼児2人同乗基準適合車マークなどがついています。
つまり、東京都では、条件を満たせば最大3人まで自転車に乗れるということです。
ということは、私のママ友は第3子をおんぶして、第2子を自転車に乗せることができます。しかし、第1子は小学1年生、つまり、6歳未満にはなりえないので乗せることができません。
ちなみに、自転車協会は1歳未満の子どもは自転車に同乗させないようにと注意を喚起しています。1歳未満の子どもはヘルメットの着用により、頸部への負担が大きくなることがあるから、という理由です。
法的には認められている行為であっても、最終的な判断は個人で下さなければならないということですね。
お住まいの都道府県の道路交通規則がどのような内容になっているか、確認しておきましょう。
安全上の注意点と対策

次は、お子さんにケガをさせないための注意点と安全対策です。
『独立行政法人 国民生活センター』が発表した統計・アンケート調査を中心にご説明します。
(1)ヘルメット・シートベルトの着用
ヘルメットは乗せる前につける、降りてからはずす。
国民生活センターの調査によると、子どもが同乗中の事故では、頭・顔のケガが77%でした。
道路交通法では、『13歳未満の幼児・児童には、保護者がヘルメットをかぶらせるように努めなければならない』という努力義務が定められています。
ヘルメットを嫌がりそうなお子さんには、ヘルメットを購入する際に、自分で選ばせるのがおすすめです。
そして、「よく似合っているよ!」「ちゃんとかぶってえらい!」など、プラスの言葉をたくさんかけてあげましょう。
また、子どもを自転車に乗せてからヘルメットを装着するのは危険です。自転車ごと転倒し、ケガを負うという事故も起こっています。ヘルメットの着脱のタイミングまで気を抜かないようにしましょう!
そして、シートベルトは、転倒した際にお子さんが幼児用座席から投げ出されることを防ぎます。お子さんの命を守るため、必ず着用させましょう。
(2)停めるとき
安定した場所に停め、降りたらハンドルロック。
国民生活センターが行った実験に、興味深いものがあります。ゆるやかな傾斜であっても、ハンドルを切った状態では前輪が動き出し、転倒することがあるという結果でした。
自転車はハンドルが真っすぐになるように停めましょう。そして、ハンドルを安定させた状態で乗せ降ろしを行いましょう。
また、旋回抑制機構(ハンドルストッパー)のあるものは、必ず作動させておきましょう。ハンドルがくるっと回って、前輪が動きだしてしまう危険を抑えてくれます。
(3)停めたあと
子どもを乗せたまま離れない。
転倒、または転倒しそうになった場面の調査では、18人(107人中)が「自転車にまたがったまま、停車中」という状態でした。
短時間であっても、お子さんを乗せたまま離れることはやめましょう。
(4)子どもが2人いる場合
2人乗せる場合は、年長を後部座席、年少を前部座席。乗せるときは後部座席が先。降ろすときは、前部座席が先。
お子さんの体重にも注意が必要です。自転車協会は、『前の座席は15kg、後ろの座席は22kgを超えないように』としています。自転車の取り扱い説明書でも確認しておきましょう。
(5)ママの乗り方
・ケンケン乗りをしない
・かかとの低い靴で乗る
調査では、8割の人が子どもを乗せた自転車を重いと感じると答えています。
一人で乗るときに比べると安定が悪くなります。くれぐれもケンケン乗りはしないようにしましょう。
また、ワーキングマザーには耳の痛い忠告かもしれませんが、高いヒールでの乗車は避けましょう。そして、サドルは低めにし、地面に両足がつくようにしましょう。
(6)走行・押し歩き中の注意
急な方向転換は転倒のもと。
転倒、または転倒しそうになった場面の調査では、走行中が26人、押し歩き中が17人(107人中)でした。
押し歩きではUターンや方向転換の際に危険な思いをしたとの回答がありました。走行中以外にも危険はあるということですね。
バランスを崩しやすくなるので、急な方向転換は避けましょう。そして、細かなハンドル操作が必要な狭い場所ではお子さんを降ろしてから取り回しをしましょう。
その他、段差や他の自転車とのすれ違い時に少しでも危険を感じたら、停まったり、降りたりして対応しましょう。
(7)典型的なケガ
スポーク外傷に注意。
スポークとは車輪の中心から枠に向かって、放射状に延びている針金状の部品です。このスポーク部分に足を巻き込まれる事故が起こっています。
幼児用座席やドレスガード(保護カバー)が付いていないと起こりやすいとされています。
また、幼児用座席であっても6歳以上は巻き込まれやすいとのことです。ルールを守り、安全基準に適合した自転車に乗せましょう。
時間に追われていると、「まあ、いいか」が増えがちです。子育てにはそんなゆるさも必要ですが、交通安全においては大敵です。
親子で自転車に乗っている時間が楽しい思い出となるように、安全対策はしっかりと行いましょう。
【参考文献】
・『自転車事故の法律相談』髙木宏行・岸郁子(編著)
・『おやこで自転車はじめてブック 子乗せで走る、こどもに教える』疋田智・監修
【参考リンク】
・自転車の交通ルール | 警視庁
・子どもを自転車に乗せたときの転倒に注意! | 独立行政法人 国民生活センター(PDF)
・自転車に乗せた子どもの足が車輪に巻き込まれる事故に注意 | 独立行政法人 国民生活センター
・「幼児2人同乗用自転車」をご利用の皆様へのお願い | 一般社団法人 自転車協会(PDF)