男の子は特に注意! 子どもに多い交通事故の特徴と安全対策のコツ
2017年1月27日 | よみもの男の子は特に注意! 子どもに多い交通事故の特徴と安全対策のコツ

こんにちは。元教習指導員の奈都木あやです。
子どもの交通事故が報じられるたび、わが子のことのように心を痛めている方は多いと思います。そして、どうかわが子だけは……と、切に祈るのが親心ですね。
しかし、「車に気を付けるのよ」という言葉だけでは、事故防止の効果はあまり期待できません。子どもは何をどう気を付ければよいのかわかっていないからです。
まずは、交通事故の傾向を知りましょう。そして、子どもに自分の身を守る方法を教えましょう。

子どもの交通事故発生状況
子どもたちは、いつ、どこで、どんな交通事故に遭っているのか?
まずは、警視庁が発表した『子供の交通人身事故発生状況(平成28年上半期)』をご説明します。
※ここでの子どもとは、幼児、小学生、中学生をさしています。
・いつ……季節は6月、曜日は水曜日が最も多く発生しています。また、時間帯は16〜18時が一番多く、次いで、14〜16時となっています。
・どこで……交差点での事故が53.1%、単路が28.7%です。
・だれが……小学生が65.3%、中学生が24.1%、幼児が10.6%です。小学生がダントツの1位なのです。さらに、小学生の内訳をみてみると、女子が162件に対して男子は326件です。なんと、男子は女子の約2倍も交通事故に遭っているのです。
・どんな……“飛び出し”による交通事故が最多となっています。次に、“横断違反”です。横断違反は、横断歩道以外の場所を歩いていたとか、斜め横断などです。
事故多発場所! 交差点での事故防止対策
(1)内輪差を意識した待ち位置
交差点を渡る以前に、まず信号待ちの立ち位置について確認してみましょう。
車が曲がるとき、後輪が前輪よりも内側を通ります。これを、“内輪差”と呼びます。
この内輪差を意識していない、もしくは、後輪の位置を掴めていないドライバーは、左折時、歩道に脱輪することがあります。
もしも、お子さんが車道すれすれのところで信号待ちをしていたら? 左折車に巻き込まれないように、車道からなるべく離れたところで待つように教えましょう。
(2)交差点を渡るときの注意
>基本中のキホン! 「右よし、左よし!」
信号が青に変わったら、うれしくて猛ダッシュしたくなるのが子ども。
しかし、信号が変わった直後は最も危険なタイミングです。もう赤信号に変わっているのに交差点に突っ込んでくる車をときどき見かけますね。
青信号に変わったら、まず、左右の確認を徹底させましょう。
>アイコンタクトで右左折車との事故を回避!
“青信号=安全”、“横断歩道=安全”ではありません。
青信号に従って横断歩道を渡っていても、右左折車が通ることはあります。
普通、自分が渡る方向の歩行者用信号が青ということは、車道用の信号も青であることを理解させましょう。※スクランブル交差点のように、歩行者と車の信号の色が別々のものもあります。
子どもは身長が低いため、目立ちにくく、右左折車に見落とされてはねられるという危険がつきものです。
ドライバーと目を合わせ、車が止まることを確認してから渡る習慣をつけさせましょう。
見通しの悪い交差点の攻略法(信号機が設置されていない場合)
子どもに「見通しの悪い交差点ってなあに?」と尋ねられたら、なんと答えますか?
「建物や看板があったりして、右や左が見えにくい交差点よ」というところまではきっと大丈夫ですね。「それで、交差点ってなあに?」なんて問い詰められると、ちょっと困ってしまいそうですね。
道路交通法上は、“二つ以上の道路が交わる部分”です(道交法第2条1項5号)。つまり、T字路やY字路も交差点です。もちろん、信号機や横断歩道があるかどうかは関係ありません。
改めて観察してみれば、住宅街は交差点だらけであることに気付くはずです。意外と危険な場所に暮らしているということになりますね。
現に、警視庁のデータでも、子どもの事故は自宅から500m以内の発生が61.5%であると発表されています(平成28年上半期)。
そこで、お子さんを見通しの悪い交差点で事故に遭わせないための対策です。
自宅周辺の危険な交差点を親子でチェック!
「見通しの悪い交差点」といっても、子どもはどこがそれに当たるのかわかりません。親子で実際に歩いて、そこがどのように危険であるかを教えましょう。
安全確認は最低でも2回
“見えない=車がない”ではありません。見通しが悪くても、見えている部分に何もなければ、安全だと思いこんでしまいがちです。
まず、見える部分を確認して進んだ後、見通せるところでもう一度、左右の確認をしましょう。親子で一緒に練習しておきましょう。

飛び出しと横断時の注意点
下校時が最も多い
「走らない。広がらない。ふざけない」を合言葉にしましょう。
好奇心旺盛で、楽しいことが大好きな子どもには難しいお約束ではありますね。下校時ともなれば、開放感でいっそう難しいかもしれません。
しかし、地道な家庭でのしつけが事故防止につながります。日頃から、親子で根気よく唱えましょう。
駆け足横断が多い
道路の向こう側に友だちがいる。あるいは、家族がいる。低学年が、高学年についていこうとして急いでいる。
理由はさまざまですが、子どもの飛び出し事故の典型です。駆け足横断はとにかく安全不確認になりやすいものです。
子どもを一人で送り出すときには、時間に余裕を持たせ、慌てさせないこと。親が同伴のときにも、「ぐずぐずしないで早く渡って」などと急かさないようにしましょう。
駐車車両の前後
駐車車両の陰から飛び出して交通事故に遭う……危険予測の分野ではテッパンともいえる事故のパターンです。特に、子どもは自分の姿がドライバーには見えていないということを予想しづらいものです。
駐車車両が危険だというだけではなく、「近寄らないように」と言い聞かせておきましょう。
番外編(自宅のガレージ、商業施設の駐車場)
事故の発生件数としては交差点ほど多くはありません。しかし、子育て中のパパママにはぜひ気を付けていただきたい危険箇所です。
自宅のガレージ
>死角に注意
死角とは見えない部分のことです。運転教本によると、普通自動車の死角は、前方4m・運転席側1m・助手席側4m・後方12mです。
車のすぐそばで、小さな子どもが遊んでいれば、運転席からは見えません。
時折、自宅のガレージで親が子をひき、死なせてしまうという事故が報じられています。まず、乗車する前に必ず車の周囲を確認する習慣を身に付けましょう。
そして、子ども自身にも車には死角があることを教えておきましょう。
まず、キーを抜いた状態で、子どもを運転席に座らせます(座高はクッションや座布団で調節しましょう)。
大人が車の死角部分に立った後、その場でしゃがんで見せましょう。百聞は一見にしかず。車のそばで遊んではいけない理由を納得してくれるはずです。
>後追い防止
めでたく子どもが死角を理解できたからといって、安心はできません。
子どもは忘れやすいものです。子どもが一人で家を抜け出し、出かける親を追いかけてくるということがあります。
つまり、乗車前に車の周囲を確認しても、時間が経てば状況は変わるということです。
自宅のガレージから車を出す際には、必ず、家族間で子どもの監視役を決めておきましょう。
商業施設の駐車場
>降車時は大人が先に!
子どもを先に車から降ろすのは大変危険です。やはり、うれしくて通路に飛び出したり、他の車の死角に入って事故に遭うことも考えられます。
まず、大人が先に降りることを習慣にしましょう。
>目も手も離さない!
ママは両手に荷物いっぱい。そして、買い物中はじっとしていない子どもを叱りつけてぐったり……。そんな光景はどこの商業施設の駐車場でも珍しくないものです。
しかし、最後の力を振り絞って、お子さんを守りましょう。まず、片手でも空いていれば、必ず、子どもと手をつなぎましょう。
もしも、どうしても両手が塞がっているときは、“れっしゃごっこ”やその他ママのアイデアで親の背後につかせましょう。
このとき、子どもの両手はお母さんの腰をしっかりつかむようにお約束しましょう。「二両編成でまいりまーす」「車駅に到着後、切り離し作業を行いまーす」などなど。
こんなセリフで、飛び出しやすい年頃の子どもは意外と乗ってくれるはずです。
しかし、それでも子どもが危険な行動に出てしまったら、すぐに荷物を手放せるように心の準備はお忘れなく。
子どもの交通事故防止は一日にしてならず。簡単なことではありませんが、日々の努力が、きっとお子さんを救ってくれるはずです。
【参考文献】
・『交通事故学』石田敏郎・著
・『学科教本』『運転教本』中部日本自動車学校・発行
・『子どものための交通安全教育入門』大谷亮・金光義弘・谷口俊治・向井希宏・小川和久・山口直範(編)
・『ポケット六法』有斐閣・発行
【参考リンク】
・子供の交通人身事故発生状況~平成28年上半期~ | 警視庁(PDF)
・小学生の交通人身事故発生状況~平成28年上半期~ | 警視庁(PDF)
●ライター/奈都木あや(元教習指導員)
●モデル/KUMI(陸人くん、花音ちゃん)