アリエナイ? ある小学校で出た「親に抱っこしてもらう」宿題への賛否
2016年7月11日 | よみものアリエナイ? ある小学校で出た「親に抱っこしてもらう」宿題への賛否

学校の宿題と聞いて、どのようなことを思い浮かべますか?
計算ドリルや漢字の書き取り、夏休みの自由研究などを、なかなか終わらせられなくて苦しんだ記憶とともに思い出すという方も多いでしょう。
さて、そんな宿題、最近ちょっと変わった内容のものがあると話題になっています。なんと“親に抱っこしてもらう”というもの。発端になったのは、2016年6月にネットに上げられたこんな書き込みです。
『次女の今日の宿題が、算数ドリルでも漢字練習でもなく「1分間抱っこ」というものだった』
ひと昔前では考えられなかったこんな宿題、街の声は賛否両論です。内容についてどう思うか、小学生・中学生の親にインタビューしてみました。

賛成派の声『この宿題が家族関係を見直すいいきっかけになった』
『賛成です。抱っこが自然な家庭だけではありませんよね。親が忙しかったり、きょうだいに手がかかったりするような場合はなかなか抱っこしてもらえないということもありますから、こういう宿題はいいきっかけになるのでは?』(30代女性/公務員)
『小学校中学年の娘がいますが、思い返せばずいぶん抱っこなんてしていないですね。求めてこないし、こちらも気恥ずかしくてなかなかできません。でも本当はもうちょっとスキンシップしながら会話したいんですよね。宿題として出してくれるとちょっとうれしいです』(40代男性/運送業)
親子のスキンシップは重要だとわかっているけれどきっかけがつかめない、という家庭からは肯定的な意見が多く出ました。
宿題だからという理由があれば、ふだん恥ずかしくてできない抱っこもできるということですね。
また、実際にこの宿題に取り組んだことがあるという方からはこんな声も。
『息子の小学校で春休みの宿題に出ましたよ。1分間抱っこして、その感想を親子ともども作文に書くという内容でした。「お母さんはあったかくて気持ちよかったです。とてもうれしかったので、宿題じゃないときもたまには抱っこしてほしいです。お母さんが大好きです」と息子は書いていました。それを読んで思わず泣いてしまいましたね。日々の接し方を考えなおすことができました』(30代女性/事務職)
この方はその後、夜の寝かしつけの前にお子さんをギュッとハグするようにしてみたそうです。
するとお子さんが泣いて癇癪を起こすことが減り、すんなり眠ってくれるようになったとのこと。これは抱っこの効果なのかもしれませんね。
反対派の声『抱っこをうれしいと感じられる家庭ばかりではないのでは』
一方で、否定的な意見もみられました。
『お母さんがいる家庭、お父さんがいる家庭ばかりだけではありませんよね。抱っこしてくれる人がいなかったら、その子はどうしたらいいのでしょうか? よりいっそう孤独を感じるのでは?』(40代女性/販売業)
否定的な意見の中で最も代表的なのがこちらでした。確かに現代、家族のあり方は多様化してきています。
抱っこの相手をお母さんやお父さんに指定してしまうと、時代に逆行したものになってしまうといえます。
『宿題じゃなかったら抱っこしないっていうのがそもそもおかしいと思う。強制されるスキンシップになんの意味があるのかわからない。その一回で何かが変わるとも思えないし』(20代男性/営業職)
もしもその抱っこに親子ともども心地よさを感じなかったのだとしたら、それは強制になってしまいますね。実際に経験したという方の中にも、
『自分が子どものころからありました。小学校のときに出されて、正直すごくイヤだったのを覚えています。抱っこして、って正直に言える環境の子どもたちばかりじゃないんです。私は最後まで言い出せなくて、結局ウソの感想を書いて先生に提出しました。ツラい思い出です』(20代女性/主婦)
というような声がありました。親子関係は家庭によってさまざまです。抱っこすること、してもらうことが嬉しいこととは限らないのだということは、認識しておいたほうがいいかもしれません。
スキンシップは親子関係をつくり上げるためにとても大切なもの
このように“抱っこの宿題”は物議をかもしていますが、親子の関係を作っていく際にスキンシップが大変重要であることは既に研究でも明らかになっています。
ハーロウというアメリカの発達心理学者は、生まれたばかりのアカゲザルの赤ちゃんを2種類の代理母が置いてある部屋に入れて育てる実験をしました。
ひとつは哺乳瓶がついている針金製の母親ザル人形、もうひとつは哺乳瓶のついていない柔らかい布製の母親ザル人形です。
赤ちゃんザルたちは、お腹が空いている時には哺乳瓶のついている代理母のもとにいきますが、成長するにしたがって布製の代理母にくっついている時間が長くなりました。
しかも、何かに驚いたときには布製の代理母にとびつき隠れるという行動まで見られたのです。
ミルクの出る固い母親よりも、ミルクのでないふわふわの母親に親しみを持つ。このことから親子の愛着には優しいスキンシップが非常に重要であることが分かったのです。
これなら、宿題として出されることにも納得がいきますね。
どうしても恥ずかしかったら、手をつなぐ、頭をなでてあげるということでも大丈夫。また、抱っこしてあげるのは、母親でも父親でも構いません。
両親にそのきっかけがなければ、おじいちゃん・おばあちゃんや親戚、親しい仲間でもよいのです。
大切なのは“抱っこすること”そのものではなく、“ふれあいながら愛情を確かめること”。
もしお子さんの学校で抱っこの宿題が出たら、恥ずかしがらずにできるぶんだけの愛情表現をしてあげてくださいね。
●モデル/NANAMI(RIRIAちゃん)
●文/パピマミ編集部