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ラクな仕事のワケがない!? 「保育園・幼稚園」のブラックな労働環境

ラクな仕事のワケがない!? 「保育園・幼稚園」のブラックな労働環境

【30代ママからのご相談】
幼稚園年長の息子が1人います。昨年息子の担任をしてくれていた先生が、26歳という若さで退職されてしまいました。

婚約しておられるというのも理由の1つだそうですが、保護者にも子どもたちにも大変人望がある先生で、これから園内でもえらくなっていかれ、活躍されるんだろうなあ……と期待していたので、残念でたまりません。

子どもたちの中にも、がっかりしている子がたくさんいるようです。何人かのママは退職の理由を突っ込んで聞いてみたようですが、今ひとつ歯切れの悪いお返事で、みんな心にぽっかり穴が開いたままの状態です。ずっと応援していきたい先生だったのに、未だに残念です。

あれほどの先生が働き続けていけない幼稚園側にも何か問題があるのでは? と勘ぐってしまう自分がいます。

やはり待遇の悪さが、先生方が辞めてしまう原因なのでしょうか?

a 待遇の悪さから辞めてしまう先生は多くいるようです。

初めまして、ライターの月極姫です。

ご質問の核心に迫る前に、興味深いデータをご紹介します。以下は、全国に結婚式場を展開するアヴェニセル株式会社が、首都圏・関西に在住する独身男性492人を対象に行ったアンケート調査の結果です。

世の独身男性が「結婚したい」と思う女性の職業は、なんとダントツで「幼稚園・保育園の先生」

理由の多くは「ほんわかとして優しそうだから」「癒されそうだから」「子どもの世話がうまそうだから」というものでした。

「子育てがうまそうだから」というイメージは的を射ているかもしれませんが、「ほんわか優しそうだから」というイメージには実態とのギャップを感じざるを得ません。

実際に幼稚園や保育園の先生方のお仕事ぶりを目の当たりにしたことがあるママなら、誰でもお分かりになると思います。

先生方のお仕事の実態は、まさに戦争。園児一人ひとりの体質や特徴を把握し、安全管理を行いながら、事故やトラブルの無いよう目配りする毎日。

集団生活を学ばせていく上で、ときには厳しく指導しなければならない場面もあります。

保育中にハプニングが起きるとまともに昼食をとれないこともザラであり、行事のときなどはちょっとした休憩すらままならない。さらに、保護者への対応。

そして、とっくに園児たちが帰った夜間でも、煌々と明かりがついた園舎、先生方が残業して制作物に取り組んだり、出し物の練習に取り組んでいる様子……。

「ほんわか癒し系」なだけではとても務まらない超重労働、それが保育園・幼稚園の先生方の現実です。

昨今「保育士の待遇が悪すぎる」という声が上がっていますが、世間の一般的なイメージもまだまだ、先生方の大変さを理解しているとはいいがたいものです。

日ごろ育児に関わっていない人たちや一部の男性にとっては、未だに「女性であれば務まる仕事」「子どもの相手をしていればよいラクな仕事」「癒し系の仕事」というイメージであるようです。

先生方の待遇改善政策がこれまで遅れをとってきた背景には、こうした間違った先入観も大きく横たわっているのではないでしょうか。

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保育士、幼稚園教諭にはなりたくない! 人材不足の背景に“ブラック”な現状あり

ご相談者様はお子さんを幼稚園に通わせておられるようですが、そもそも幼稚園の先生と保育園の先生では、所持資格が若干違っているということも認識しておきましょう。

『保育士』は厚生労働省の管轄、『幼稚園教諭』は文部科学省管轄の管轄であり、それぞれ保育時間や指導内容に違いがあります。

幼稚園で勤務するには幼稚園教諭の免許が必要であり、幼稚園には保育士と幼稚園教諭両方の免許を持っている先生もいます。

しかし、両者の待遇の間にはあまり差が無いのが実態であり、最近よく言われている“待遇の悪さ”もほぼ同レベルであると言えます。ここで保育士の意識調査の結果を見てみましょう。

以下の調査結果は2013年5月にハローワークが行ったもので、「保育士の資格を持っているのに、保育士としての就業を希望しない求職者」2,033名を対象にしています。

有効回答者958名のうち、各年代の多くが「賃金が希望と合わない」という理由で「保育士として働きたくない」と回答しています。

また、賃金の低さと並び「就業時間が希望と合わない」、「休暇が少ない」なども多くの回答を得ています。

保育士、幼稚園教諭の月収は全国平均で20万円ほどで、手取りにすると月に13万円~15万円くらい

これは他の職業の平均月収よりも10万円ほど低い数値であり、時給換算にするとスーパーやコンビニでのアルバイト以下ということになります。

業務内容の大変さや責任の重さ、勤務時間の長さとのバランスを考えると、いわゆる“ブラック企業”状態といっても過言ではありません。

“保育士>医師”という国もある! 海外での保育士の立ち位置とは

諸外国に目を向けてみると、保育士の待遇が日本以下という国もたくさんある一方で“医師より保育士の方が良い待遇を受けている”という国もあります。

高負担・高福祉のノルウェーがその代表格で、保育士の平均的な月収は40~60万円

税金と物価の高さを考えるとこれも決して高給であるとは言い難いのですが、勤務時間が短く残業が無いなど、給料以外の待遇面でも非常に優れています。

日本では早期教育に力を入れている親御さんはたくさんいますが、国レベルで考えると“三つ子の魂百まで”という価値観は浸透していないのが現状です。育児軽視の文化は、政策の遅れにも表れているのです。

今後の政策に注目! 補助金増額の効果は?

深刻な待機児童問題を解消するため、政府が保育園への補助金増額に乗り出しました

保育園の事業形態に応じて補助金が増額されることで、前述の「資格はあるが働きたくない」という人材を掘り起こし、現役の保育士の離職率を引き下げるねらいです。

たとえば、ある保育園で「初任給を1万円増額します」とアピールしたとして、どれくらいの人材が就職を希望するか未知数ではあります。

しかし、大幅な給料アップは困難であり、各施設が労働時間などの待遇にも工夫と改善を盛り込んでいくことが望まれます。

これが決定打になるか否かは別として、遅ればせながら保育士の待遇改善が急務であるということがやっと広く認識され始めたという段階でしょう。

国からの補助金については、園から署名活動の依頼をされたことがある方もいるかと思います。

冒頭に紹介したアンケート結果にも出ているように「癒し系のラクな仕事」という偏見を覆していけるのは現場の先生方であり、日ごろその激務を目の当たりにしている我々母親世代でもあります。

現在育児に携わっている方にもそうでない方にも理解していただけるよう、一人ひとりが啓蒙していきたい問題ですね。

●ライター/月極姫(フリーライター)
●モデル/KUMI(陸人くん、花音ちゃん)

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