会陰マッサージで切開や裂傷を避けるコツ。おすすめのオイルもご紹介
2016年3月4日 | よみもの会陰マッサージで切開や裂傷を避けるコツ。おすすめのオイルもご紹介

※この記事は2019年4月17日に加筆修正致しました。
会陰切開、会陰裂傷に対する不安は、妊娠中の女性なら誰でも抱えているものだと思います。未知の世界ですから、余計に恐ろしいですよね。
今日は、少しでも会陰裂傷の可能性を低くするために、妊娠中と分娩中にできることなどをご紹介していきたいと思います。
会陰マッサージとは
会陰とは膣口と肛門の間の組織(皮膚と筋肉)のことを指します。分娩の際には、主にこの会陰が伸びて赤ちゃんが通れるようになります。
会陰マッサージは、姙娠中期から耳にする方も増えてくると思われますが、文字通りこの会陰をマッサージすることを言います。妊娠34週以降から始めるのが良いとされています。
カナダで行われた調査によりますと、会陰マッサージをした産婦さんたちの24.3%が会陰が裂けることなく分娩できたのに対し、会陰マッサージをしなかった産婦さんたちではその数字は15.1%でした。
ただし、この数字は初産婦さんに限られたことで、2回目以降のお産では、マッサージをしてもしなくても会陰が裂ける確率は下がります。
会陰の伸びがよくなれば、それだけ母体を傷つける可能性は低くなり、産後の回復も早まることが期待できます。
会陰切開とは

赤ちゃんが生まれてくるときに会陰が十分に伸びない場合、ハサミなどを使って会陰を切って対処することがあり、これを会陰切開と言います。
これは、胎児の頭が大きかったり、妊婦の子宮の出口が小さかったりして分娩が長引いたときに、母子の安全を考慮して行われるものです。
吸引分娩や鉗子分娩をしなければならない場合もそのひとつで、器具を挿入しなければならないため会陰切開が必要となります。
会陰を切開することで分娩がスムーズにいくため、ママが会陰裂傷などを引き起こす可能性も少なくなるでしょう。
切開と聞くと怖くなってしまい、できれば避けたいと思う人もいるかもしれませんが、するかどうかはその場にいる医師の判断にゆだねられるため、心配な場合には事前に確認しておくといいかもしれません。
なお、局部麻酔をすることもありますが、分娩の痛みが強いため、麻酔なしで切開することもあるようです。麻酔も、切開も、全く気づかなかったという人もいるでしょう。
切開後は縫合が行われますが、キレイに切開されるため治療時間は短く、糸も体に吸収されるタイプが増えてきているため、負担は少ないと言えるかもしれません。
会陰裂傷が起きる原因

会陰は、通常3cmほどの厚みをもっていますが、分娩のときにはこれが薄く伸びることで胎児が出ることができるようになります。
これが初産婦の場合、会陰の伸びが十分でなく、会陰裂傷を引き起こすことがあるようです。
また、高齢になるにしたがって会陰の伸びも悪くなっていくと言われており、高齢出産の場合には会陰裂傷の可能性も高くなってしまうでしょう。
この他、分娩時間が短く会陰の急激な伸びに耐えられない場合や、分娩の際に必要以上に強くいきんでしまうことが会陰裂傷につながることもあるようです。
軽度であれば皮膚の表面が傷つく程度で済みますが、ひどい場合には皮膚の下にある筋肉にまで傷が及んでしまうことも。
さらにひどいと肛門括約筋や直腸にまで傷が及んでしまい、治療に時間を要することもあるでしょう。
出産後にも座る際に痛みを感じるなどの影響がある方もいらっしゃるみたいですね。
会陰マッサージを始める時期

病院や医師によって違いがあるようですが、34週を目安に始めるところが多いようです。
ただし、妊婦さんの体の状態は人によって大きく違うため、妊娠期間にとらわれず個別に医師に相談するのがいいでしょう。
早ければ20週を過ぎたころから始める人もいるようですが、37週の正産期になるまでは、お腹が張りやすい方は行わないようにしてください。
また、マッサージの最中でも、体に異変を感じたりお腹がはるような感じがあったりした場合にはすぐに中止するようにしましょう。
会陰マッサージの頻度や1回にかける時間

目安としては、1回5〜10分、週に2〜3回程度と言われています。
しかし、会陰マッサージをするにあたって一番大事なことは、習慣化して出産当日までやり続けるということです。
週に3.5回以上の会陰マッサージを行っても会陰裂傷の明らかな減少は見られない、という研究結果もあるため、目安に沿ったペースでムリなく続けることをお勧めします。
無理をして会陰部分を傷つけてしまうようなことがあれば元も子もありません。
おすすめのマッサージオイル

体のなかでも特にデリケートな部分であるため、使用するオイルにも気を使いましょう。
刺激が強いと肌荒れの原因にもなってしまいます。肌に優しいという理由でベビーオイルを使う人もいるようですが、大切なのは自分の肌に合ったオイルを使うということです。
植物性の無添加オイルで、アーモンドオイル、ホホバオイル、カレンデュラオイル、白いごま油、ココナッツオイル、オリーブオイルなどがおすすめです。
また、馬油も肌によく浸透することから良いとされています。
妊娠中は肌も敏感になっているため、使う前には必ずパッチテストを行うようにしましょう。
腕の内側に100円玉ほどのオイルを塗り、24〜48時間後に肌に赤みなどの異常がでなければ問題ないでしょう。
異常がある場合には、オイルの使用をやめ、別のオイルに変えるなどしてください。
会陰マッサージのやり方

用意するもの
両手が使えるように、スタンド付きの鏡を用意してください。また、爪は短く切っておいてください。
マッサージに使うオイルとして、ココナッツオイルかオリーブオイルを用意して下さい。
基本の会陰マッサージ
(1)純正の植物オイルを、お皿や容器に少量移します。
(2)マッサージに使う指1〜2本にオイルをつけます。付着させる量は、指から滴り落ちない程度でOK。
このとき、直接指で会陰部分に触れることに抵抗がある方は、コットンにオイルをつけてそれでマッサージするという方法もおすすめです。
コットンを使う場合には、オイルを含ませたコットンをぎゅっと絞って滴り落ちてこないぐらいを目安にしましょう。
このとき、ショーツを脱ぎ、トイレなどに座り両足を開きます。
(3)オイルをつけた指、またはコットンで、会陰の周囲を膣に沿ってUの字を描くようにマッサージします。
(4)慣れてきたら、今度は同じ部分をくるくると小さな円を描くようにマッサージしていきましょう。痛みを感じない程度に、5〜10分ほど行います。
(5)会陰部に付着したオイルに違和感を感じる人は拭き取ってもかまいませんが、オイルが時間をかけて浸透することで会陰がふっくらと柔らかくなる効果があるため、おりものシートなどを当ててそのままにしておく方が良いでしょう。
コットンを使った場合には、コットンを乗せたまま、おりものシートを使うとより効果的です。
膣に指を入れる会陰マッサージ
基本のマッサージに慣れてきたら、膣に指を入れて行う会陰マッサージにも挑戦してみましょう。
(a)基本のマッサージを(4)まで行った後に、指を膣に3〜4cmほど(第一関節ぐらいまで)挿入します。
(b)体の肛門側を時計の6時として、3〜9時の方向に向かって押し広げるようにそっと力を入れていきましょう。
痛みを感じないように、ていねいにゆっくりと行ってください。痛みを感じるようならそこでやめて、そのままの姿勢を保持してください。少し痛みが和らいだら、更に広げます。これを2〜3回繰り返して終了です。
会陰マッサージのポイントや注意点4つ

(1)清潔な手で行う
会陰部は体の中でも特に繊細ですので、爪を短くキレイに切りそろえ、清潔な状態で行うことが最重要事項です。
マッサージ前には念入りに手洗いをすることも必須。
もしネイルなどをしている場合には、必ずコットンを使用し、会陰部や膣を傷つけないようにしましょう。
膣の中は細菌感染を起こしやすいため、特に注意が必要です。
(2)肛門に指が触れないようにする
清潔な状態で行うために、マッサージ中は肛門に触れないようにしましょう。
万一触れてしまった場合には、マッサージをする指を変えるか、一旦やめて手を洗ってから再開するようにしてください。
(3)体が温まっているときに行う
入浴中やお風呂上がりなど、体が温まっているときには会陰も伸びやすくなっています。
オイルも浸透しやすいため効果的。
ただし、入浴中にオイルを扱うときには浴室が滑りやすくなっているため注意しましょう。
(4)効果を得られるのは初産のときのみ
会陰マッサージは出産のときの会陰裂傷や会陰切開のリスクを下げる効果がありますが、これは初産のときに限られるようです。
1人目の出産で会陰はすでに広がっているため、2人目の妊娠中にマッサージを行っても、出産時の裂傷の有無には影響がないと言われています。
会陰裂傷を避けるために、分娩当日できること

会陰裂傷のほとんどは、赤ちゃんの頭が出てくるときに起こります。
助産師は会陰を良く観察しながら、赤ちゃんの頭が少しずつ、ゆっくりと出てくるように声かけをしますが、このときの産婦さんは、とにかくもういきみたい、出してしまいたいという衝動で一杯で、いきみを逃すことは至難の業です。
結果的に、一気に赤ちゃんの頭が飛び出すことになり、会陰が裂けてしまうのです。
もちろん、ゆっくり出しても裂ける場合もありますが、助産師の声かけを良く聞いて、冷静に、指示通りの呼吸を行い、いきみを逃すことで、裂傷の可能性は低くなると言えます。
残念ながら、オーストラリアで行われた研究によると、日本人は世界で最も会陰が伸びにくい人種といわれています。
ですから、今日ご紹介した方法をもってしても、特に初めてのお産の場合、会陰裂傷、または切開は避けられない場合が多いと思います。
切開になる場合の多くは、分娩介助中の助産師が「これは裂けそうだな」と判断し、素早く隣で見守っている医師に意思表示し、医師による局所麻酔後に行われます。
やみくもに、誰に対しても切開を行っているわけではありません。
もしもあなたの会陰が良く伸びていれば、助産師はそのまま介助を続けますし、医師ももちろん隣で見守ってくれます。
その可能性にかけて、妊娠中からできることをやってみるのも良いかもしれませんね。
マッサージしておくと会陰切開の治りが早い?

マッサージで会陰を伸びやすくしておくと、仮に切開や裂傷になったとしても傷が小さくて済みます。
傷が小さければその分治りも早くなりますし、母体にかかる負担も少なくなるため、決してマッサージがムダになるということはありません。
また、自分の体に触れ、赤ちゃんの通り道をじかに感じることで、精神的な安らぎを得ることができるというメリットもあります。
お産のイメージにつながることもあるため、当日に落ち着きをもって望めるということも。
不安な精神状態になることも少なくないだけに、会陰マッサージでリラックス効果が得られるのはうれしいですね。
会陰マッサージに関する疑問

早産を招くことがある?
会陰への刺激によって早産を引き起こすのではないかと心配する妊婦さんもいるようですが、マッサージによって陣痛が起きるようなことはないようです。
ただし、お腹が張っているときや体調が優れないなどの事情がある場合は、無理に行うことのないようにしましょう。
どうしても会陰切開をしたくない場合は?
最近では、出産の前にどのような分娩を望むのか、バースプランを聞いてくれる病院も増えてきているようです。
どうしても会陰切開をしたくないという場合には、素直にその気持ちを伝えてみるのもひとつの手でしょう。
ただし、会陰切開は母子の安全を目的に行われるものですから、依頼がすべて受け入れられるとは限りません。
会陰裂傷を引き起こせば会陰切開よりもひどい状態になってしまうのです。
マッサージ以外で会陰をやわらかくする方法4つ

会陰をあたためる
会陰をあたためることで、柔軟な会陰になることが期待できます。
こんにゃくをあたため、それをタオルなどでまいて数十分ほど会陰に当てることで、血流がよくなり、体全体があたたまるという効果もあるでしょう。
温めることで身体の緊張がほぐれるため、陣痛の際にも良いとされています。
腟周辺の引き締め
筋肉は、よく伸びるほどよく縮むという性質があります。そのため、膣や肛門周辺の筋肉に力を入れて引き締めようとする運動は、会陰に良い刺激を与えるでしょう。
行う場合には、事前に医師に相談し、決して無理をしないようにしましょう。
マタニティヨガ
マタニティヨガというのは、妊婦さんのためのヨガ。
さまざままなポージングや呼吸法により、膣や産道への力の入れ方・抜き方が分かるようになったり、会陰を柔らかくしたりする効果があります。
骨盤が開きやすくなることで出産の負担を軽減させることも。
また、産後に開いてしまった骨盤が、元の位置に戻りやすくなる効果もあると言われています。
膣ピチュ(会陰ピチュ)
膣ピチュとは、「膣に行うアーユルヴェーダ」とも言われるもので、オイルを膣内に浸透させることで伸びやすい膣を作ることを目的として行われます。
アーユルヴェーダは世界最古の伝統医学であり、長寿や若さを保つことを目的とした予防医学のこと。
この膣ピチュというのは、オイルを含ませたコットンを患部に当てて行うアーユルヴェーダの治療法(ピチュ)にならったものです。
会陰マッサージと同様に、会陰裂傷や会陰切開のリスクを軽減せる効果があります。
コットンを膣内に入れるため、オーガニックコットンを選ぶのがオススメです。
会陰マッサージを実践した人の声

『最初のお産のときは深く考えずに何も対処してなかったのですが、あまりの激痛に後悔。2人目のお産の前には念入りにマッサージしました。2人目あまり効果がないと言われてるみたいですけど、実際に触っていると柔らかくなっていくのが実感できたし、産後の体の負担が全然違ったので、やって良かったなと思いました』(30代/2児のママ)
『マッサージ自体は慣れれば苦じゃないけど、ずっと継続していくのが負担だった。効果はあったと思うけど……。切開や裂傷はいきみのうまさとかも関係してくると思うから、「マッサージしたからもう心配ナシ!」と思うと痛い目を見ることもあるはず』(40代/2児のママ)
『私は会陰マッサージをするとどうしてもお腹が張ってしまって、あまり念入りにすることができませんでした。結局切開することになったし、個人差が大きいと思います』(30代/1児のママ)
会陰の状態はママの数だけあると言っても過言ではないでしょう。
とはいえ、マッサージなんてムダだと思わず、こつこつと続けていくのが大切かもしれませんね。
まとめ
「会陰マッサージの頻度」や「コツ、注意点」などについてご紹介してきましたが、いかがでしたか?
初めての出産で不安なことも多い中、「裂傷」「切開」などと聞くと余計に怖くなってしまいますよね。
効果には個人差もあり、必ずしも切開が不要になるというわけではありませんが、生まれてくるこどものため、そして自分の体のためにも、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。
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●追記/パピマミ編集部
●モデル/神山みき(れんくん)、ゆみ、前田彩(桃花ちゃん)