患者は日本に○人も!? あまりバカにできない“過労病”の症状と改善法
2015年12月23日 | よみもの患者は日本に○人も!? あまりバカにできない“過労病”の症状と改善法

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。
私たちは普段から“過労”とか“過労気味”といった言葉を気軽に使っていますよね。
実はこの“過労”という概念、医学的な病名ではないものの心療内科の医師にとってはもっとも患者さんの多い病気だと言われています。
そこから、医学の専門家以外の人にはこの概念を一括して“過労病”と考えてもらった方がわかりやすいと提唱している医師がいます。
丹生(にう)聖治先生という、大分県勤労者医療生活協同組合佐伯診療所で心療内科を受け持っておられる医師です。
本人のみならず、家族にとっても残酷で悲し過ぎる“過労死”がこれ以上増えないためには、過労を軽く考えないで“過労病”として捉える、日常の態度がとても重要です。

過労病を医学的な病名で言うと実にさまざまで、キリがありません
丹生先生は、診療所のホームページの中で、
『(過労病)患者さんの数はおそらく日本中で百万人を超えるのではないかと思われます。つまり、各県に一万人以上の患者さんがいる計算になります。現在私のところにおみえになっている患者さんだけでも二百人程度いらっしゃいます』
と書かれています。
過労病の原因は言うまでもなく“過労”です。ただ、症状はその人の弱い部分に現れてくるため、症状から医学的な病名をつけると実にさまざまでキリがないくらいです。ちなみに列挙してみますと、
・胃が弱い人……慢性胃炎、難治性胃潰瘍、再発性胃潰瘍など
・腸が弱い人……慢性腸炎、過敏性腸症候群など
・心臓に弱点がある人……不整脈、高血圧症、狭心症、心臓神経症、パニック障害など
・眼に弱点がある人……眼底出血、角膜ヘルペスなど
・神経や筋肉系に弱点がある人……神経痛、筋肉や腱が容易に断裂や損傷を起こすなど
・鼻や耳が弱い人……メニエル症候群など
・全身的に免疫力が低下した場合……風邪、インフルエンザなどの細菌やウイルス感染症
・婦人科的な問題点がある場合……月経不順、月経停止、男性化など。いわゆる更年期障害
・精神神経科的な問題点がある場合……反応性うつ病、自律神経失調症など
過労病の治療法
この実に多種多様な“過労病”の治療法ですが、丹生先生は、
『点滴や内服薬で一時的に元気を出させることはできますが、これを続けていると身体はよけいに疲れていき、その結果、心臓に余計な負担がかかったり、脳の働きに異常が起こってきます。そうなると薬の依存症や心臓発作で命に関わるような事態になったりという悪循環に陥ります』
と述べており、結論として、『現代の医学でも過労病の根本的な治療法は“休養”です。この点をくれぐれも誤解しないようにしてください』と言っています。
休養をとるには
これまでに複数の企業で正社員・非正社員・経営者として働いてきた経験のある筆者から、実体験に基づいた“休養のとり方”を提言したいと思います。
ご存じのかたも多いかと思いますが、EU(ヨーロッパ連合)では『勤務間インターバル規制』という制度があり、勤労者を働かせるためには24時間につき11時間のインターバルを必ず置くと法的に義務づけられています。
つまり、朝9時に勤務を開始した人であれば、夜の10時には必ず仕事を終えなければ翌朝9時まで11時間のインターバルを確保できないため、深夜や早朝までにおよぶ残業というのは、欧州ではあり得ないのです。
しかし、日本には残念ながらこういった法律は存在しません。
私たちは「欧州並みのインターバルを取って働くことは、仕事の質を維持するためにも当然のこと」と、一人ひとりが誇りを持って(肩の力を抜いて自然体の態度でいいので)プレゼンテーションしながら“休養”時間を確保していきましょう。これが1つめです。
次に、勤労者にとって当然の権利である“有給休暇”を、同僚の仲間たちと比べて極端に浮いてしまわない程度にしっかり取得しましょう。これが2つめ。
それから、非正社員のかたがたですが、時給制なので経済的な事情からそうそう安易にはシフトに入る時間を減らすことはできないでしょう。
過労病の兆候を少しでも自覚したら、生活に影響が出ない程度に勤務時間・日数を減らしましょう。その分の時間を休養に充当すべきです。落ち着いてきたら、時間の余裕を使って“好きなこと”でお金を稼ぐ在宅ワーキングをしてみるのも一石二鳥かもしれません。これが3つめです。
丹生聖治先生は、
『(過労病は)軽症のうちであれば一か月以内で完全に治ります。(中略)休養をきちんと取って早く治すか、無理を続けて働いたお金を病院につぎ込むかどちらをとるかは患者さんに決めていただいています』
と、診療所のホームページに記しています。
過労病を決して軽く考えずに、兆候を感じたら“休養”をとってください。その際に、上に述べたような話が少しでも参考になれば、これほどうれしいことはありません。
●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)