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廃業後にやる気ゼロ!? 夫を“燃え尽き症候群”から立ち直らせる仕事選び

廃業後にやる気ゼロ!? 夫を“燃え尽き症候群”から立ち直らせる仕事選び

【ママからのご相談】
40代。大学生の娘と小学生の息子のママです。夫のことでご相談です。若いころ、入浴剤やボディーブラシなどのバス用品を展開する外資系企業に勤務していた夫は、そのノウハウを生かして35歳で独立し、自分の店舗兼専門商社を創業しました。10年以上寝食も忘れて頑張ってきましたが、海外から商品を輸入して国内の需要向けに販売する小企業はこのご時勢では厳しく、昨年末に断腸の思いで廃業しました。

一時かなりの稼ぎがあったおかげで上の娘は中学校から私立に通うこともでき、パパ(夫)にはとても感謝しています。けれど、廃業後のパパは“燃え尽き症候群”に陥ってしまい、職に就くことができません。生活は私の派遣収入と預金を切り崩して何とかやってますが、この先が不安です。どうしたら立ち直るきっかけがつかめるでしょうか?

a さしあたり、軽作業のような職に就くことをおすすめします。次の段階で、かつて本当にやりたかったことを始めましょう。

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

“燃え尽き症候群”というと、人気漫画作品『あしたのジョー』(高森朝雄原作、ちばてつや作画)の主人公であるボクサーの矢吹丈が“燃え尽きて”リングの上でうなだれている姿を思い起こす人が多いかもしれません。

それほどわが国では、「スポーツで目標を達成してやることがなくなってしまった状態」という意味で使われることが多い言葉です。ところが本来の意味はちょっと違い、それまで意欲をもって1つのことに没頭してきた人が、何かをきっかけにしてある日突然燃え尽きたように意欲を失い、社会に適応できない状態になってしまうことを指して言う言葉です。ご相談者様の旦那様のように会社の整理や残務処理、リストラなどは典型的な契機の例とされています。

今回、ご相談がありましたので都内でメンタルクリニックを開業する精神科医にお話を聞いたところ、『さしあたり軽作業のような職に就いてみる』『第2段階として、これまでやってきた仕事でなく、子どものころや学生時代などに本当にやりたかったことをやってみる』という2段階式の方法が、燃え尽き症候群から脱出し立ち直るのに有効であるというアドバイスをいただきました。詳しく検討してみましょう。

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“燃え尽き症候群”には、軽い筋肉労働を伴う単純作業が効く

『そもそも“燃え尽き症候群”とは、アメリカの精神心理学者ハーバート・フロイデンバーガーが1974年に初めて用いた“バーンアウト・シンドローム”という言葉を日本語に直訳したものです。一定の事柄に対して献身的に努力してきた人が、期待していたようなイメージに反するような結果に遭遇した際に生じる徒労感や虚無感から意欲を失くし、社会的に機能しなくなってしまう症状のことをいい、精神科の医師によっては一種の心因性うつ病であると説明する人もいます。

わが国では運動部の活動を引退する高校3年生に見られるように、「打ち込む物が何もなくなった」という虚脱感に襲われることを“燃え尽き症候群”と称することが多いのですが、このケースの場合は、「大学や社会人の運動部でより高度なレベルを目指そう」と新たな目標を設定することさえできれば克服できるため、フロイデンバーガーが本来言いたかったニュアンスとは少々違うと言えます。

むしろ、ご相談者様の旦那様のように自分の生き甲斐と家族の生活をかけて経営してきた会社の廃業というやむにやまれぬ不本意な決断を余儀なくされたことによって“人生に対する悲観”を伴うようになった、やや深刻な心理的症状だと言うことができるでしょう。最近の研究で、“バーンアウト・シンドローム”は身体活動(運動)が増加するにしたがって改善することが明らかになってきたため、精神科や心療内科の臨床現場では患者さんの症状に応じたお薬を処方することと並行して、患者さんに軽い運動をおすすめすることがあります。

また、“燃え尽き症候群”のせいで仕事を完全に失ってしまった状態の患者さん(あくまでも“完全”に失業中の患者さんに限りますが)には、私などは“これまでやってきた職種や業種に執着せず、給料の高い安いにもさしあたりはこだわらず、軽い筋肉労働を伴う倉庫や工場での軽作業のような職にとりあえず就く”ということを推奨しています。軽く体を動かすことそのものが、燃え尽き症候群の改善につながるからです』(50代女性/都内メンタルクリニック院長・精神科医)

わずかでもいいから“好きなこと”で収入を得る

『倉庫での商品ピッキング、工場での組み立て作業や梱包作業、スーパーのバックヤードでの品出し作業などのいわゆる“軽作業”は、真面目に働く姿勢さえあればほとんどの人は就業することができます。そこで手先を動かしながら働き、休憩時間には仲間と世間話をして、金額的には多くなくても毎月コンスタントにある程度の収入が入ってくるようになれば、ご相談者様の旦那様は、「資金繰りに追われ、生きた心地がしなかった経営者時代の日々よりも、今の方が心は楽かもしれない」と感じ、燃え尽き症候群に陥っていた自分がバカバカしく思えてくるようになります。そうなってきたら、次の段階に進みましょう。

“燃え尽き症候群”脱出法の第2段階は、軽作業の仕事は辞めずに(もちろん、ご相談者様も派遣のお仕事は辞めずに)、子どものころや学生時代に“本当にやりたかったこと”をはじめてみることです。おおげさに考えずに、もともと好きだったことを再開するといった程度の感覚でいいので試してみてください。

ほんの一例ですが、学生時代に詩を書くのが好きで同人誌などを発行していたとします。燃え尽き症候群になるくらいの人は1つのことに打ち込みはじめると徹底的にやる人が多いので、再開すればすぐにまた素晴らしい詩を作れるようになるかと思います。そうしたら、ネットのクラウドソーシングのサイトに出ている詩のコンペに応募してみましょう。こういった方法で書いた詩が“収入”につながることも今は全然珍しくない時代です。

しかも、もともと大好きなことなので根気も続きます。こうして多少なりとも好きなことで収入が得られるようになったら、それを新しいアイデンティティーにして、軽作業と二足の草鞋(わらじ)を履いて生きて行かれればいいのです。いつの間にか“燃え尽き症候群”から完全に脱出しているはずです』(50代女性/前出・精神科医)

“燃えていた人生”とは別の人生がある

いかがでしょうか。

こうしてドクターの見解を聞いてくると、“2段階式燃え尽き症候群脱出法”とは、「これまで長い年月の間あなたが取り組んできた仕事は素晴らしいし、その生き方も尊敬に値するものであったことは間違いないけれど、それとはまた違う人生。それとはまた違う生き方もありますよ」ということをご本人に認識していただくことによって、立ち直ってもらう方法であると言うことができるのかもしれません。ご相談者様の旦那様には早速にでも実行していただくとよろしいかと思います。

好むと好まざるとに関わらず、誰もがふとしたことから“燃え尽き症候群”に陥ってしまう可能性を持っています。特に、仕事に一定の“献身性”を求められるような、教師、看護師、ソーシャルワーカー(社会福祉士・精神保健福祉士)、公務員、中小企業経営者といった職業の人は、バーンアウト・シンドロームに陥るリスクが高いとも言われます。

今回ご紹介したお話しを頭の片隅にでもとどめて置いていただくと、身近な誰かが燃え尽き症候群に陥ったときに応用することができるかもしれませんね。

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●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

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