先に謝らなきゃダメ? 子どもが悪さをした相手に親が謝罪するべき理由
2015年5月6日 | よみもの先に謝らなきゃダメ? 子どもが悪さをした相手に親が謝罪するべき理由

【ママからのご相談】
家族で旅行に行ったとき、4歳になる息子と温泉に入ったのですが、息子の水鉄砲が中年女性の顔に当たっていたようです。そのことを指摘され、息子のやったことなので息子に謝らせました。でも、女性はしつこく、「親が謝れないなんて」などと文句を言ってきました。なぜ親も一緒に謝らなければいけないのですか。
親が先に謝ることで、子どもを安心させるためです。
こんにちは。メンタルケア心理士の桜井涼です。ご相談ありがとうございます。
ご相談者様は、「子どものやったことは、子どもが謝ればよい」という考え方をされているのですね。やった本人である息子さんが謝罪したのだから、それでいいと思われたのでしょう。こういった問題で大切なのは、親が素直に謝罪をすることで子どもの心を安心させることです。

子どもの心はどういう動きをしているのか
4歳という年齢は、お母さんから離れて自分で行動ができるようになる年齢です。しかし、不安を感じたり、他の人からの接触などがあった場合は、お母さんに助けを求めてきます。これは発達の段階でとても大事なことです。
子どもは、“お母さんと一緒にいる安心”と“行動したことで起こる不安”の間を行き来し、成長していくのです。
今回ご相談いただいた内容の場合、“行動したことで起こる不安”がお子さんの心の中に生じています。このときに必要なのが、お母さんの与える安心なのです。
なぜ子どもがしたことなのに親が謝る必要があるのか
お母さんがその場で一緒に謝ってあげる行為が、お子さんの心を落ち着かせ、安心させます。そうなると、「自分の味方でいてくれているんだ」という思いがあるため、すんなり“悪いことをしたときは謝る”ということが身につきやすくなります。それに、自己肯定感が強まるため、自分に自信が持てるようにもなります。
ですから、幼児期のお子さんがいる親は、一緒に、「ごめんなさい」と言えることが必要なのです。
親が謝る姿は、道徳教育になります
子どもは、親の姿を見て育ちますし、まねをします。自分が何かをして、注意されたときに親が素直に謝る姿を見せることができれば、「悪いことをしたときは、こうやって謝るんだな」と子どもは理解しやすくなります。
「悪いことをしたら、謝るんだよ」というしつけの言葉よりも、実際にやって見せる方が理解しやすいのです。道徳的にみても素直に謝れる子どもになりますよ。
教育評論家の“尾木ママ”こと尾木直樹先生は、自身の著書の中で、
『教育とは、‘共育’。ママも子どもも素直に向き合って、ともに育ち合うことなの』
と述べています。
親が素直に謝る姿を見て、子どもも素直に謝ることができるようになれるのですから、ご相談者様にとっても悪いことではありませんよね。
「私が悪いんじゃないのに!」と思われることでしょう。でも、お子さんのためと考えたら、ちょっと頭を下げるくらいなんてことないと思えませんか。
私の父は本当に厳しい人で、一言で言うと、“ガンコ親父”です。そんな父を親として尊敬する出来事がありました。
私が小学3年のころ、弟と妹の3人で遊びに行く途中、道端のメロン栽培のビニールハウスに大きな穴をあけ、いたずらをしていました。それが持ち主にばれ、自宅に怒鳴り込んできたのです。そこで、父は頭を下げ、「本当にすみませんでした」と謝ってくれたのです。そのとき、私は自然と、「自分も謝らなくてはならないんだ」という気持ちになりました。それに、親が先に謝ってくれたことで“安心すること”もできたのだと思います。
わが子がやったことだからと、ふに落ちないこともあるでしょう。しかしながら、親から素直さを見せることで、子どもにいい影響を与えることができるんです。
ご相談者様もお子さんのために、道徳教育だと思って実践してみてほしいと思います。全ては子どもの心の成長に関わることなのですから。
【参考文献】
・『尾木ママの「叱らない」子育て論』尾木直樹・著
●ライター/桜井涼(メンタルケア心理士)