肩代わりがパー!? 離婚後に元夫へ「借金」や「慰謝料」を請求できるか
2015年3月27日 | よみもの肩代わりがパー!? 離婚後に元夫へ「借金」や「慰謝料」を請求できるか

【ママからのご相談】
私は約2年前に離婚しました。結婚前からお互いに借金がありましたが、妊娠を機に結婚。私はつわりがひどく働けなくなりました。夫の収入は月収20万もなく、すぐに借金で生活していけなくなり、仕方なく子どもを中絶して出稼ぎに出ました。私から、ほぼ毎月10万を夫に送金したほか、夫の借金と自分の借金を4〜5年かけて返済しました。しかし、そのうち夫に浮気され、とても許す気になれず、「慰謝料も何もいらないから、とにかく離婚してほしい」と頼み、離婚しました。慰謝料をいらないと言ってしまった手前、その請求は無理としても、私が払った夫の借金を請求することは可能でしょうか?
請求できるものはしっかりと請求していきましょう。
ご相談ありがとうございます。アディーレ法律事務所弁護士の篠田恵里香です。
苦労して、旦那様の借金を返済したのに、浮気とは、納得いかないですね。元夫に対して、請求できるものはしっかり請求しましょう。

「慰謝料はいらない!」と言っても慰謝料はもらえるの?
浮気が原因で離婚した場合の慰謝料は、離婚時より3年の時効にかかります。なので、離婚から3年以内であれば、通常は慰謝料請求ができます。ただ、今回は、「慰謝料はいらない」と言ってしまっているので、これが『慰謝料請求権の放棄』とならないかが問題です。法律上、いったん権利を放棄すると請求できないのが原則だからです。
ただ、今回は書面で放棄したわけではないですし、勢い余って「いらない!」と言った節もありますので、“真意でない放棄”として「放棄は無効」と主張することも視野に入ります。
不倫慰謝料の請求相手は一人じゃない!
仮に、“放棄”と判断される場合でも、慰謝料請求の相手は1人ではないことを忘れてはいけません。浮気の慰謝料は、夫と浮気相手の『共同不法行為』となり、2人に対し請求ができます。2人は『不真正(ふしんせい)連帯債務』といって連帯して慰謝料を払う責任を負っているので、一方に「いらない」と請求権を放棄(免除)しても、原則としてもう一方に対し請求はできるとされています。
なので、今回のケースで、元夫には放棄したと判断されても、浮気相手には全額慰謝料請求ができるのです。いずれにせよ、夫と浮気相手両方に慰謝料請求をするのが得策ですね。
代わりに返済した夫の借金は本人に請求できる?
元夫の借金を返済した分については、請求できる可能性が高いです。法律上、他人の借金を肩代わりして払った場合、「その立替分を返せ」といえます。これを『求償権(きゅうしょうけん)』といいます。
気をつけねばならないのは、夫婦の場合は『日常家事債務』という考えがあることです。たとえ、夫名義での借入でも、それが、家具購入や衣食費など日常生活のための借入だった場合は、夫婦が連帯して責任を負いますよというものです。なので、日常家事債務と判断される夫の借金については、半分しか返してもらえないことになります。
一方、夫の借金が、“無駄遣い”や“ギャンブル”などによるものだった場合は、これは日常家事債務に当たりませんので、あなたが返済した全額を、「返してください」と主張することができます。
払った借金だけでなく、慰謝料も請求できる可能性もありますので、まずは弁護士や専門家に相談してみると良いと思いますよ。
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