ゼロ葬、ゼロ墓……「ゼロ死」という新たな終活のカタチ
2014年9月26日 | よみものゼロ葬、ゼロ墓……「ゼロ死」という新たな終活のカタチ

【女性からのご相談】
40代の主婦です。70代の両親と同居しております。最近、母親から、「もし私が死んだら、ゼロ死にしてね」と言われました。どうも、母は、『ゼロ死』という言葉をテレビの特集で知ったらしく、「お葬式をしない」など、お金をかけないようにする方法だと聞きました。詳しく知りたいので、具体的に『ゼロ死』について教えてください。
家族に負担をかけない。火葬のみ行う直葬、遺骨は散骨……。
こんにちは。終活カウンセラー(一般社団法人・終活カウンセラー協会)の資格を持つKOUです。
昨今、日本は65歳以上の人口の割合が21%を超え、超高齢社会と言われます。そんな中、私たちは終活という言葉についてメディアを通じ、目にする機会が多くなりました。
終活とは、今をよりよく自分らしく生きるため、葬儀や墓、遺言、遺産相続などを具体的にどうするか、生前に準備しておくことを指します。
新たな終活の1つとして『ゼロ死』も、注目が集まっているようです。

『ゼロ死』とは
『ゼロ死』とは、一般的に、死んだ際に“葬式をあげない(ゼロ葬)”“遺骨を残さず、墓を持たない(ゼロ墓)”ことを指します。つまり、死んだら何も残さない、“ゼロ”の状態にするというものです。
『ゼロ死』を提唱している宗教学者の島田裕巳さんは、著書の『0(ゼロ)葬 ――あっさり死ぬ』の中で、『人が1人死ぬと、かかる費用は葬式と墓を合わせて平均500万円以上』と、家族などにかかる経済的負担を指摘しています。
やはり、『ゼロ死』を選ぶ方の多くが、「葬式代などにお金をかけたくない。残された家族に負担をかけたくない」との思いが強いようです。
では、「葬式をあげない」「遺骨を残さず、墓を持たない」とは、具体的にどのような方法なのでしょうか? 代表的なものをご紹介します。
火葬のみを行う『直葬(火葬式)』
『ゼロ葬』といえば、葬儀や告別式などをせず、火葬のみを行う『直葬(じかそう。火葬式のこと)』が代表的です。
お葬式は、通夜→葬儀→告別式→火葬という流れで執り行われるのが一般的です。
火葬式は、(ご遺体の)搬送→安置→納棺→出棺→火葬の手順になっており、10数万円程度の費用で抑えられると言います。
ある格安葬儀を紹介するサイトでは、「費用を抑えたい」「質素なお見送りをしたい」という要望も増え、火葬式プランは、サイトを利用した約50%のお客さんから選ばれているそうです。
火葬した後の遺骨は?
次に、火葬した後の遺骨の取り扱い方をみていきましょう。
(1)散骨
骨を砕いてパウダー化(粉末化)にした後、海や空、山中でそのまま撒く散骨という葬送形式があります。散骨は法律上『節度を持って行われる限り違法性はない』とされていますが、専門業者に散骨を依頼することもできます。
ただ、陸地での散骨は散骨地の近隣住民とのトラブルになる可能性が高く、私有地では認められていません。
そのため、現在は『海洋散骨(海洋葬)』が主流となっているそうです。
海洋で散骨する場所は、散骨を取り扱う企業や団体によって様々ですが、港湾、漁場・養殖場、遊泳可能地点、陸地から見える地点、大型の航路などを除外して決められています。
専門業者に依頼する際にかかる費用をみると、業者が代行して散骨する場合は平均5万円程度。親族が乗船して散骨をする際には、平均10万~25万円程度となっているようです。
このほか、遺灰を入れた巨大バルーンを空に打ち上げて、宇宙でバルーンが自然に破裂して散骨される『バルーン宇宙葬』という方式も出てきました。
(2)火葬場が引き取る
多くの火葬場では、遺族が遺骨を引き取るのが原則ですが、申し出があれば引き取らなくてもよいところがあります。
遺族が引き取らなかった遺骨の処理は火葬場に任されるわけですが、方法は様々で、遺骨を契約業者などが引き取り、骨粉にされた上で、寺院や墓地に埋められ、供養されることもあるそうです。
『ゼロ死』を選ぶ方がまず準備するべきこと
『ゼロ死』を希望する人が増えている中、亡くなった方の意向をくんで直葬にしたものの、周囲から、「葬式もしないで、ろくでなし!」などと反発やトラブルが起きた事例があると言います。
こうしたトラブルを避けるためにも、人生の最期を迎えるにあたり、自分の思いや希望を家族など周囲に伝えるためのノート『エンディングノート』などを準備しておくことをお勧めします。エンディングノートには、自分の意志で選んだことやその理由などをしっかり書き留めておきましょう。
参考になりましたでしょうか?
ご相談者さんも、どのような終活を本当は望んでいるのか、お母様のお話に耳を傾けながらじっくり考えてくださいね。
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●ライター/KOU(ママライター)