帝王切開で出産したママを苦しめる偏見と差別とは
2014年9月10日 | よみもの帝王切開で出産したママを苦しめる偏見と差別とは

【ママからのご相談】
5月に帝王切開で長男を出産したのですが、お見舞いに来た自然分娩経験者の友人から、「産道を通らなかった赤ちゃんは忍耐力がなくなる」と言われました。その後、他の友人からも、「陣痛なくて、楽だったでしょ」といった感じの言葉をよく掛けられます。まるで“陣痛を経験していないと母親失格”と言われているようで悲しいし、腹が立ちます。
母子ともに健やかであることが大切。
ご相談ありがとうございます。ママライターの木村華子です。
「陣痛を経験しないと母親失格」「帝王切開で生んだ母親は虐待しやすい」「楽でよかったね〜!」などの心ない言葉、“帝王切開あるある”かもしれませんね。

帝王切開でも出産は出産
私も、3人のうち2人を帝王切開で出産しました。周囲は何気なく発言しているのでしょうが、帝王切開でも出産は出産。痛みも苦しみもあります。そんな中、「痛くなかったんでしょ? ラッキーだね!」なんて言われて、「そうだよ!」と心から笑えるお母さんが一体どれほど存在するのでしょう。腹が立って当然です。
「帝王切開だと、○○……」
確かに、一部の研究者はこのような説を唱えているようですが、どれもいまいち信憑性に欠けるものばかり。犬や猫などは帝王切開での出産で育児放棄に走ってしまう場合もあるとのことですが、我々は理性のある人間。犬や猫とも異なりますよね。
どの説も文末に“○○らしい”を付ける域を出ません。
ママへのねぎらいと心のケアの重要性
『NHKニュース おはよう日本』では、5月に『増える帝王切開 求められるケア』という特集で、ご相談者様のように帝王切開に対するマイナスイメージによる周囲の言動で傷つけられたママへのケアの重要性がとりあげられました。
番組内で、帝王切開カウンセラーという肩書きで活動する細田恭子さんは、『昔から、女性は何時間も陣痛に耐え、自然分娩で産み、母乳で育てるというのが普通の流れとみている方たちがまだまだ多い。(帝王切開は)麻酔を借りた、痛みから逃げたお産と思っている年配の方たちは少なくない』と語っています。
自身も帝王切開の経験を持つ細田さんは、帝王切開の知識や理解を広めるため、さまざまな活動をしているとのことですが、まだまだ“帝王切開差別”はなくなりません。どんな産み方であっても、周囲は命がけで出産した女性に対してねぎらいの言葉を。また、医療関係者からのフォローも重要であると訴えています。
自然分娩でも帝王切開でも、出産は命がけ
自然分娩であっても、帝王切開であっても出産は大仕事です。産後のママの正直な気持ちとして、“褒めてほしい”という感情もあるはずですね。
それなのに、「帝王切開? 私の方が大変だったよ!」となぜか自慢大会を繰り広げ、産後のママを傷つける女性は少なくありません。出産は女性にしか経験できないものです。陣痛や出産に、一種の憧れのようなものを持っている方も少なくはないでしょう。女性が集まれば、「私のときはね〜」「陣痛って痛いんだよ〜」と、お互いの苦労や経験を自慢し合うムードが生まれることが多々あります。
表現は悪いですが何となく、「私の玩具のほうが、すごいでしょ!」と見せつけ合っている感じもしませんか?
そこに、“苦しみを耐えてこそ、一人前”という価値観も相まって、帝王切開での出産を経験したママの肩身を余計に狭くさせているように感じます。出産は自慢道具ではありませんし、修行の場でもないはずです。
母子ともに、無事出産を終えることができた。そこには、痛みや苦しみ、恐怖など、さまざまなものと戦ったママの功績があった。どんな出産方法であったとしても、「がんばったね!」「よくやったね!」とママを褒めてほしいものです。
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●ライター/木村華子(ママライター)