介護放棄じゃない! ショートステイ利用のメリット
2014年8月8日 | よみもの介護放棄じゃない! ショートステイ利用のメリット

【女性からのご相談】
主人の母親が介護状態になりました。痴呆も始まっていて、毎日が家事と介護で終わっています。ケアマネージャーの方からショートステイの利用を勧められました。しかし、介護を放棄したような感じがするためお願い出来ないでいます。どうすればよいのでしょうか。
利用するのはお互いのためだと考えましょう。
こんにちは。私も祖母を介護していたとき、ご相談者様と同じ思いをして利用を拒んだ経験のあるメンタルケア心理士の桜井涼です。ご相談ありがとうございます。
私の祖母も痴呆がひどくなり、夜間の徘徊や妄想がひどく、私も大変でした。昼間は会社へ行き(その間は母が見ていました)、夜は介護でしたので、本当に自分の時間なんてないに等しかったです。20代前半は介護のために費やしたので、楽しい遊びなんて全くできませんでした。

介護者の気持ち
ショートステイを勧められる理由がお分かりになりますでしょうか?
介護をする側の体力と精神力を復活させるためだと言われます。介護は仕事をしていることと同じだから休みを設ける必要があると考えられているからです。確かにその通りなのですが、介護をしている人にとっては、預けることに罪悪感を感じてしまうのです。
これは実際に家族の介護を経験した人でないと分かりません。「自分が面倒を見られるのに、人に頼むなんてことをしたら……」必ずこう考えてしまいます。
実際に利用してみて
介護をし始めて1年経った頃、ご相談者様と同じようにケアマネジャーさんから、「ショートステイを利用して、介護をしている人もちょっと身体と心を休めることが大切よ」と言われました。それで家族で相談後、1週間だけお願いすることにしました。
私は、「夜ゆっくり寝ることができる!」と最初は思ったのですが、それは大間違いでした。仕事が終わった後に施設へ着替えなどを取りに行って交換しなくてはいけませんでしたし、帰るときに祖母が、「次はいつ来る?」と言います。また、長年の癖からでしょうか、祖母が徘徊している気がして何度も目が覚め、とてもゆっくりなんてできませんでした。
余裕を持つために必要なことなんです
後味の悪さから、「ショートステイは利用しない」と決めて、母と二人三脚で頑張っていくことを決めた矢先、今度は母がうつ病に近い状態になりました。私は仕事、母の面倒、幼い兄弟の世話(当時8歳になる弟がいました)、介護を一人で背負っていました。しかし、若いからと言っても限界はあります。これらを支えきれなくなっていました。もう限界でした。だから、ケアマネジャーさんと相談をし、再度ショートステイを利用することにしました。母や幼い弟をもっと大事にしなくてはと考えたからです。
そしたら、最初の利用とは違い、祖母と離れたことで家族の世話を中心にすることができ、気持ちが楽になったのです。余裕が少しできた瞬間でした。1週間後、祖母を迎えに行ったときには、かなり優しく接することができたのを今でも覚えています。
医学博士の苛原実さんは著書の中で、『介護者自身が生活に余裕を持つことが大切だ』と書かれています。
まさにその通りなんです。最初は後味の悪さを感じますが、2回目以降は余裕を持つことができるようになるもののようです。介護をする私たちが元気でないと、痴呆の人を賢明に介護することなんてできません。
介護者には体力もそうですが、“心にゆとりを持つための時間”が何より必要なのです。介護を放棄したと考えるのではなく、より良い関係を作っていくための心の準備と考えてはどうでしょうか。
【参考文献】
・『訪問医が見た 男の介護女の介護』苛原実・著
●ライター/桜井涼(メンタルケア心理士)