100人に1人? 「ヤングケアラー」の実態とは
2014年8月6日 | よみもの100人に1人? 「ヤングケアラー」の実態とは

老老介護が問題になっている昨今ですが、それとは逆の問題があることを、みなさんはご存じでしょうか。それが、『ヤングケアラー』と呼ばれる人たちの存在です。
看護と介護の専門家を家族に持つ私が、この“もう1つの問題”についてお話をしようと思います。

ヤングケアラーとはどんな人?
『ヤングケアラー』というのは、『老老介護』の対極とも言える概念です。
簡単に言ってしまえば、「家族が介護や看護を必要とする状況にいるため、それを恒常的に手助けする役割を担っている子どもたち」のことです。この“手助け”というのは、とても幅広い分野で必要とされます。
たとえば、着替えや入浴、排せつの手助けといった日常生活にまつわるもの。ただ、このようなイメージしやすいものばかりではなく、「介護にかかりきりになっている家族(主に母親)の代わりに家事や弟妹の世話をすること」「介護費用をまなかうための賃金労働」なども含まれます。
実態を知る
ヤングケアラーの存在が確認され、研究されるようになったのは、ヨーロッパが発端だと考えられています。その中でも、ヤングケアラーの実態調査の中心的な役割を果たしているのが、イギリスです。イギリスでは現在、14万人のヤングケアラーがいるとされています。
ヤングケアラーの平均年齢は12歳~17歳であること、またイギリスの人口分布から考えると、この年代の100人に1~2人はヤングケアラーであることと推察されます。
ヤングケアラーの性別には、ほとんど差がありません。その半数が、身体障がいを持つ家族の介護を担っているというデータもあり、かつ自らの母親を介護しています。
日本ではどうか
ヤングケアラーが抱えるもっとも大きな問題の1つは、「日本での実態調査がほとんど進んでいない」ということです。
実際、私自身が介護系の学校に在学していた12年ほど前は、このことに関しては授業でもほとんど触れられていませんでした。近年ようやく注目されるようになった概念であるため、まだヤングケアラーをサポートするための行政の取り組みなども、法定化されていません。
これには、「年長者の介護をすることは美徳である、当たり前のことである」という価値観があるからと推察されます。
もちろん、それらの考え方が悪いわけではありません。しかし、ヤングケアラーが抱える問題点に直視しなければ、介護の状況は変わりません。