認知症の判断は“自分の目で”確認すべき理由
2014年7月4日 | よみもの認知症の判断は“自分の目で”確認すべき理由

こんにちは。祖父母の実質的な介護を5年間した、メンタルケア心理士の桜井涼です。
今回は、いずれは関わらなくてはならない介護について、現実に向き合い理解してほしいという思いから、経験談を交えながら書かせていただきます。
私は、「家族が家族の面倒を見て当たり前」と考える父の頼みで、単身赴任中の父と体の弱い母に代わり、祖母の介護をしてきました。本当につらい思いもたくさんしましたし、『認知症』の祖母に振り回され続けたことで、精神的なダメージを受けました。
だから、同じ思いをしている人がいることを知っています。そのとき感じたのが、「面倒を見ていない親族たちは、その実態を知っておくべき」ではないかということです。

認知症は電話で判断できない
まだ祖母が『要介護3』だったころ、歩行もできていましたし、完全にボケてしまっていたわけではありませんでした。いわゆる、「まだらボケ」の状態でした。正気なときもありますが、起きている時間の半分はおかしいと思われる行動を取っていました。
そんなとき、遠方に住んでいる父方の親戚は、電話をかけてきて祖母と話をするわけですが、しっかり会話ができているので、認知症だということを信じてはくれませんでした。
「ボケたなんておかしなこと言わんでちょうだい!」と、何度親戚から怒られたことでしょう。普段は、「泥棒にお金をとられた!」「ここに閉じ込められている、助けて~!」と毎日繰り返している祖母なのに。
電話だけでは本当のことなんてわかりません。数日一緒に生活をしてみないと、本当の状況なんて知ることができないのです。
認知症の動きと心の状態
厚生労働省のホームページには、認知症になった人の行動や心理状態について書かれています。
『そばで世話をしてくれている人が盗んだという、もの盗られ妄想がしばしばみられます』
これは、上記に記したページに書かれている文章です。認知症になると、実際にこのような行動を取ります。そのため、家中を引っかき回して探そうとするのです。このような行動に出てしまうのは、「自立して生きたい」という心理状態があるからだとされています。
実質的に介護に携わっていない家族や親族は、話に聞いたことがあっても、見ていないのでなかなか信じられません。実の親がそうなったら、信じることが難しいのはよくわかります。でも、認知症になってしまったら起こりえるのです。
共有こそが助けになる
実質的に面倒を見ている家族は、仕事との両立ができなくなってしまったり、親戚などに理解されないこともあって、本当につらい思いをしています。そのことを少しでも理解するために、一緒に生活することができない状態でも、数日一緒に過ごす時間を持つことはできるのではないでしょうか。
任せっきりにするのではなく、介護をしてくれる人と状況を分かち合うことが大切です。老人ホームやデイサービスを利用するなどの対処的なことよりも、共有が必要になります。
認知症の家族との生活は、本当に大変で自分の時間なんか持てません。心身共に疲労困憊してしまいます。でも、認知症の行動などを共有してもらえたら、どんなに救われることでしょう。
自分の目で確かめなくてはいけない理由は、“実質的な介護をしている人が日々どんなに大変な思いをしているか”を知るためです。
●ライター/桜井涼(メンタルケア心理士)