乳幼児は特に危険! 虫除けスプレーの成分『ディート』の注意点
2014年7月1日 | よみもの乳幼児は特に危険! 虫除けスプレーの成分『ディート』の注意点

【1児のママからのご相談】
1歳半の娘がいます。最近公園で遊んでいると娘がよく蚊に刺されます。
他のお友達のお母さんは虫除けスプレーを使っているので私も使おうかと思うのですが、説明書を見てみると「2歳未満は1日1回まで」と書かれていました。
なぜ1日1回までとされているのでしょうか?それ以上使うと問題があるのでしょうか。
虫除けスプレーに配合されている『ディート』が問題
ご相談ありがとうございます、転勤族フリーライターのパピルスです。公園遊びやキャンプなど、屋外に出るときに虫除けスプレーを使用するご家庭も多いですよね。
国民生活センターの行ったアンケートでは、
「子どもについては約6割が2歳未満から使用していたほか、屋外で遊ぶ際は9割以上が使用していた」
との結果が出たそうで、虫除けスプレーは身近な存在ですね。
虫除けスプレーの使用制限

乳幼児用としてはスプレータイプだけでなく、ペーパータイプの物や、クリームタイプの物など種類も豊富で、赤ちゃん用品メーカーからも発売されています。
これらの虫除け剤の使用上の注意には、
たとえば、
・漫然とした使用を避け、蚊、ブヨ等が多い戸外での使用等、必要な場合にのみ使用してください。
・6か月未満の乳児には使用しないでください。
・6か月~2歳未満は1日1回、2歳~12歳未満は1日1~3回を目安に使用してください。
・顔には使用しないでください。
・目の周囲や粘膜、傷口には使用しないでください。
と書かれています。
2歳未満のお子さんに対して「1日に1回未満の使用が目安」というと、使用回数としてはかなり少ないと感じるのではないでしょうか?
なぜ回数が制限されているのでしょうか。
関連記事:蚊もこわくない!? 子どもにも安心な“虫除けスプレー”の作り方と注意点
『ディート』とは化学物質のこと

『ディート(DEET)』とは、虫などの忌避剤として使用される化学物質で、虫除けスプレーなどに使われています。
蚊やダニなど吸血タイプの昆虫に対して高い効果があり、比較的安価なことから世界中で使用されている成分です。
海外ではディートの濃度が30%を超える製品も売られていますが、日本では薬事法により最高で12%までのものが許可されています。
なお、多くの虫除け剤に配合されている『ディート』は、国民生活センターによって「ディートは一般的には毒性が低いとされているが、まれに体への影響がある」とされている成分です。
赤ちゃん向けに発売されている虫除け剤でも、ディートが含まれている製品が多数あります。
使用の際には製品の成分表示を確認してみてください。配合濃度が大人向けと同等の製品もあれば、少し控えられている製品もあります。
もしディートが含まれている製品であれば、使用上の注意に書かれた使用回数を守ることが大切です。
関連記事:皮膚科医が伝授! 刺されるとキケンな虫4種と基本の予防法
『ディート』の副作用と使用制限

ディートは安全性の高い成分とされており、薬事法に基づく重篤な副作用の報告事例は見られず、販売を全面的に禁止するなどの措置をとっている国はありません。
デューク大学の研究グループが行った調査では、ラットへの皮膚湿布による実験が行われ
「明確な神経性毒の兆候はないが、脳神経の変性が起きた」という結果が出ています。
ただし、動物実験において、連続的に大量摂取した場合に神経性毒が見られたとの報告もあり、高濃度かつ長期間の使用は避けるべきとされています。
この研究の結果から、カナダでは高濃度(30%以上)の製品の販売が禁止され、虫除けスプレーの使用に際して幼児への使用回数を制限するなど規制が設けられています。
日本でもカナダなどの指針に沿って、厚生労働省によってディート製品に対する方針が決められ、使用上の注意や成分濃度などの明示が義務づけられました。
関連記事:大人よりも重症化しがち! 赤ちゃんの“虫刺され予防&ケア”のポイント
ディート不使用の虫除け対策

肌に直接塗布するタイプの虫除け剤であれば、そのほとんどにディートは使用されています。
ここではディート製品を使わない虫除け対策について紹介します。
蚊取り線香
ピレトリンやピレスロイド系成分を練り込んだ燻煙式渦巻き型の殺虫剤です。
1890年に棒状の蚊取り線香が日本で誕生し、その後1895年ごろから現在の渦巻き型となったことで燃焼時間を大幅に延ばすことに成功しました。
長年愛用されてきた製品ですが、火を使用するため火災のリスクがあり、スプレータイプなどの手軽な製品が出てきたことから使われる機会は減っています。
電気式薬剤拡散タイプ
ピレスロイド系の殺虫成分を電気の力で拡散させる装置で、本体にあるマットなどを電気で加熱し、その熱で成分を揮発させることで空気中の蚊に効果を発揮します。
外出先でも使用できるよう、電池式で首から下げて使うことができるものも。
なお、電気の熱で揮発させるのではなく、送風装置によって薬剤を拡散させるタイプのものもあります。
室内スプレータイプ
こちらも同じくピレスロイド系の成分を使った製品です。
蚊は空気中を飛んでいる時間よりも天井や壁にとまっている時間の方が長いことから作られたもので、スプレーした薬剤が壁に付着することで効果を発揮します。
空気中に薬剤が漂うわけではないため、室内の換気をしても効果が薄れにくいというメリットがあります。
1プッシュで効果が24時間持続するものもあり、手軽に使える製品と言えるでしょう。
ハッカ油
ハッカ油とはハッカソウから抽出された精油のことで、英語では「ミント」と言います。
このハッカのニオイを虫が嫌がるので、虫刺されを防ぐ効果が期待できます。
簡単に入手できて価格も安いことから、手作りの虫除けスプレーとして愛用する人が少なくありません。
ハッカ油スプレーのレシピは以下の通りです。
【材料】
・エタノール……10ml
・ハッカ油……20滴
・水……90ml
エタノールとハッカ油を混ぜ合わせます。これは水だけだと油であるハッカ油と混ざりにくいため。
よく混ぜ合わせたあと、水を加えれば完成です。
網戸に吹きかけておくことで虫の侵入を防ぐことができますし、ゴキブリなどの害虫に対しても効果があるため、侵入経路に散布しておくことで退避させる効果があります。
ただし、ハッカの成分は蒸発しやすいため、こまめに吹き付ける必要があるでしょう。
さまざまなアロマオイル
虫除けに効果のあるオイルとしてはハッカ油が有名ですが、この他にも虫除け効果を持つアロマオイル(エッセンシャルオイル)が多数あります。
中でも特に虫除けに効果的なオイルとして、
・ゼラニウム
・レモングラス
・シトロネラ
・ユーカリ
・ローズマリー
・ラベンダー
・ティートリー
などがあり、この中から自分の好みの香りを探して使うのがおすすめ!
好みの香りのアロマオイルを使って手作りのスプレーやクリームを作れば、虫をよけながらリラックスできるという一石二鳥の効果を実感できるでしょう。
なお、手作りのスプレーは長持ちしないため、2週間ぐらいを目安に使い切るようにしてください。
最近では複数のオイルを効果的にブレンドした虫除けスプレーも販売されているため、作るのが面倒! という人はお店で探すのもいいかもしれません。
関連記事:涼しいだけじゃない! 夏を乗り切るハッカ油スプレー活用法3つ
虫除けスプレーのうっかり事故や誤飲、誤吸入時には“中毒110番”

殺虫剤スプレーを虫除けスプレーと勘違いして、肌に直接スプレーしてしまう事故も増えているのだそうです。
子どもの場合は、虫除けスプレーや殺虫剤でいたずらをして、大量に吸い込んでしまった事例や目に入ってしまったという事例が厚生労働省の調査で報告されています。
誤吸入等で気になる症状が出たときのための相談窓口として、“中毒110番”の番号を控えておくことをおすすめします。
こちらの電話サービスは、家庭用品やタバコなどの誤飲にも対応しています。
・大阪中毒110番(24時間対応) 072-727-2499
・つくば中毒110番(9時~21時対応)029-852-9999
幼児・子供への虫除け剤の正しい使い方
目的のない利用は避け、蚊、ブユ(ブヨ)などが多い戸外での使用やアウトドア時など、必要な場合にのみ使用しましょう。
子供に使用される場合は、エアゾールタイプは直接噴霧せず、いったん大人の手に取り、それを子供の肌に軽くはたくようにして塗ってください。ディードの濃度が低いものを利用するのはもちろんですが、それでも塗りすぎは肌へのダメージとなります。
12歳未満の子供に使用させる場合は、保護者のもとで、1~2回を目安に安全に使用しましょう。
また、顔に使用してはいけません。
日焼け止めと同様少し時間が経つと塗り直したくなる虫除けですが、子供に対しては肌への影響を考慮して、
利用しましょう。
医薬品でない虫除けも多々あるので、そちらを使ってみるのもいいかもしれませんね!
関連記事:5分で心停止もアリ!? 子どもが“誤飲・誤嚥”を起こしたときの対処法
まとめ
「ディートの危険性」や「さまざまな虫除け対策」などについてご紹介してきました。
虫除けスプレーに対して過敏になりすぎるのもよくありませんが、対策を講じずに虫に刺され放題というのも好ましくありませんよね。
メリットデメリットをよく理解し、特に子どもに対しては適切な使い方ができるよう気にかけておきたいものです。
【関連コラム】
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●ライター/パピルス(フリーライター)
●追記/パピマミ編集部
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