「妊娠糖尿病」の原因と胎児への影響について
2014年5月29日 | よみもの「妊娠糖尿病」の原因と胎児への影響について

【女性からのご相談】
妊娠6か月の妊婦です。先日、妊娠糖尿病と診断されました。普段からカロリーには気を遣っているし、妊娠してからは特に気をつけているのに、どうして糖尿病になるのかわけがわかりません。先生に聞いても、「妊娠のせいで、なる人はなります」としか言われませんでした。
糖分をとりすぎないように言われたのですが、もともととっていないので、どうしていいのか分かりません。思い切ってセカンドオピニオンを取得しようかとも思っていますが、主治医の機嫌を損ねるのも怖いです。
まずは、妊娠糖尿病ついての理解を深めましょう。
妊娠糖尿病は、比較的頻度が高い割に管理が難しく、しかも重大な結果を招くこともある、一言で言えば大変厄介な病気です。
欧米では非常に重要視されていて、糖尿病と診断されると専門医のいる病院でしか出産できないほどです。日本では、もともと健康意識が高い妊婦さんが多いため、欧米ほど頻繁には見られませんが、近年増えつつある病気です。
今回は、「妊娠糖尿病」の管理、母体及び赤ちゃんに与える影響についてお話しします。

(1)原因
糖尿病と言えば、一昔前には贅沢病などと呼ばれていたほど、印象の悪い病気です。
しかし、「妊娠糖尿病」は、普通の糖尿病(2型糖尿病)とは少々異なる病気だと考えて下さい。妊娠中に分泌されるホルモンの影響で、血液中の糖の分解が難しくなっているだけなのです。
決してあなたが食べ過ぎたからでも、運動不足だからでもありません。この点をまず理解して下さい。
(2)治療法
ほとんどの場合、まずは食事療法と運動療法から始めます。
妊娠中ですから、過度のダイエットや運動は禁忌ですが、食べる量は減らさずに内容を工夫したり(パンや白米を止めて玄米にする、甘いものは控えるなど)、散歩などの軽い運動を日課に取り入れたりするだけでも、改善が見られる場合があります。
食事や運動ではあまり効果が見られない場合は、まずは内服薬が処方されます。
これはもちろん、お腹の赤ちゃんには影響のない薬が用いられます。それでも血糖値が下がらない場合、最後の手段としてインスリンの自己注射が行われます。
いずれの場合も、医師の指示に従って自分で血糖値の測定をする必要があります。
(3)起こり得る合併症
糖尿病自体は特に症状が見られない場合も多いのですが、だからといって放置すると、恐ろしい合併症を招くことがあります。
妊娠糖尿病によってリスクが上がる合併症
・胎盤早期剥離(分娩前に胎盤がはがれてしまう現象。母子ともに命の危険を伴う)
・早産
・死産
・巨大児
(4)赤ちゃんに与える影響
母親が糖尿病にかかった場合、へその緒を通じて、赤ちゃんにも必要以上の糖分が供給されることになります。その結果、赤ちゃんが成長しすぎて巨大児となる場合があるのです。
また、お腹の中で供給されていた過剰な糖分に慣れてしまった赤ちゃんは、出生後は低血糖になりやすく、これを見逃すと、昏睡状態に陥る場合もあります。
ですから、糖尿病の母親から生まれた赤ちゃんは、生まれてから2時間後に血糖値を測定し、低血糖の場合は人工ミルクを与える必要があります。その後も血糖の管理は非常に重要です。
糖尿病と診断されて、動揺されていることと思います。
担当医があまりきちんと説明してくれないのなら、セカンドオピニオンを求めるのはとても良いことです。自己管理が必要な病気ですから、まずは理解を深めて、克服しようという意識を高めることが不可欠です。
母子ともに安全な妊娠出産をするために、ぜひ頑張って治療して下さい。