完全母乳で育てるための母乳促進法3つ
2014年5月28日 | よみもの完全母乳で育てるための母乳促進法3つ

【女性からのご相談】
現在二人目を妊娠中です。一人目の時は、母乳があまり出なくて結局ミルクになってしまいました。今回は、どうしても完全母乳にしたいのですが、どうすれば母乳が出るようになるでしょうか?
異なる3つの指導法。
現在、母乳促進のための数種類の方法が知られていますが、それぞれに良い点、悪い点があり、中には根拠の薄いものもあります。
今日は、代表的な3つの方法についてお話しします。

(1)桶谷式
これは、助産師主導で行われている乳房マッサージ方法です。門外不出とまでは言いませんが、助産師になっただけで習得できるわけではなく、新たに桶谷式の学校に行くことでしか習得できません。
この方法の特徴的な点は、助産師にマッサージしてもらうという点です。つまり、セルフケアではなく、定期的に助産師にマッサージしてもらうことでしか母乳を増やすことができないのです。毎回費用がかかるので、通算するとかなりの金額になります。
また、食事制限や生活指導が厳しいのも一つの特徴です。
例えば、食事は和食、甘いものは禁止、乳製品も禁止、などです。油や糖を取りすぎると乳腺が詰まるというのがその根拠のようです。
ですが、良い点もあります。実際に、桶谷式によって救われたという母親は数多く、その技術には定評があります。また、マッサージを受けている間に育児のことを相談できたり、そこで知り合った他の母親たちとの交流が息抜きとなるなど、孤独になりがちな現代の母親にとっては、精神的な支えとなる場合も多いようです。
(2)SMC(Self Mamma Control)式
こちらは長年に渡り、病院の産科や産院などで取り入れられて来た方法です。
最も大きな特徴は、桶谷式と異なり、母親が自分で乳房マッサージを行う点、つまり、セルフケアができる点にあります。
ただし、このSMC式に関しては、実は根拠が薄く、はっきりした効果の立証が成されていません。それなのに広く日本中に普及することができたのは、「自分でできる」という点が、助産師の数に限りがある病院側の事情にピッタリだったからかもしれません。
また、一度やり方を学んでしまえばあとは自分でできるので、費用が全くかからないという点は大きな利点です。
(3)ラクテーションコンサルタント式
ラクテーションは英語で母乳分泌を意味し、ラクテーションコンサルタント(Lactation Consultant)というのは、母乳分泌に関する専門的知識を持った人のことを指します。
これは、アメリカの機関によって認められた国際的な資格で、欧米ではかなり前から浸透しています。
近年、日本でもこの方式を取り入れる病院が増えてきました。「根拠(エビデンス)に基づいた医療を提供する」という、欧米では当たり前の考え方が、日本でも浸透してきたことが理由として挙げられるかもしれません。
この方法の大きな特徴は、「マッサージは一切行わない」という点です。
そもそも、マッサージすることで母乳の出が良くなるという発想自体がないのです。では、何をするのかというと、科学的根拠に基づいて母親を指導し、正しい授乳方法を理解してもらう、この一点に尽きます。
具体的には、赤ちゃんが生まれてから30分以内に授乳を開始すること、授乳は赤ちゃんが好きな時に好きなだけ行うこと、片方の乳房を完全に吸わせきること、などがあります。
他には、正しい乳首の咥えさせ方や、授乳の際の正しい姿勢などの指導もあります。赤ちゃんの欲求に合わせて授乳することで、乳房の働きや母乳分泌ホルモンなどが活発になり、結果として母乳の量が増えるという、実はシンプルな生理的現象に基づいた指導法です。
非常に理論的ですが、もともとマッサージや「手当て」を好む傾向のある日本人には、少々冷たい印象を与えかねません。
また、従来の方法とあまりにも違うため、過去に出産経験のある母親にとっては、混乱を招く元になるかもしれません。
母乳育児を希望する母親にとって、母乳が足りないという現実は非常に深刻です。
出産施設がどの方法を取り入れているかにもよりますが、退院してからでも遅くはありません。出産前からリサーチを開始して、自分に合った方法を見つけられると良いですね。
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