赤ちゃんの退院延期になることもある“新生児黄疸”の基礎知識4つ
2014年5月15日 | よみもの赤ちゃんの退院延期になることもある“新生児黄疸”の基礎知識4つ

【女性からのご相談】
もうすぐ出産を控えています。妊娠経過は順調ですが、予定日が近づくにつれて、赤ちゃんが無事に生まれて来るかどうか不安になってきました。先日、近所の奥さんが出産したのですが、退院の時に赤ちゃんが一緒じゃなかったという噂を聞いてしまい、ますます不安になっています。
赤ちゃんだけ入院が長引くって、どんな原因が考えられるでしょうか?
最も考えられるのは、新生児黄疸です。
赤ちゃんの退院が延期になる原因としては、早産、低出生体重児、胎便吸引症候群、先天性障害など、様々なものが考えられます。重症から軽症まで様々ですが、中でも最も頻度が高いのが、新生児黄疸です。
今日は、この新生児黄疸に的をしぼってお話しします。

(1)新生児黄疸とは
ご存知の通り、お腹の中の赤ちゃんは、母親から酸素の供給を受けています。母親の血液中の酸素が、胎盤を通って胎児のへその緒へ渡り、そこから胎児の体全体へ供給されます。
実はこの方法は、普通に肺呼吸で酸素を取り入れるよりも、ずっと効率が悪いのです。というのも、母親の体内を通って胎盤に達する頃には、血液内の酸素の何割かはすでに失われてしまっているからです。
この酸素濃度が低い血液から、より多くの酸素を取り入れるために、胎児の血液中には、大人よりずっと多くのヘモグロビンが存在しています。ヘモグロビンというのは、酸素をくっつけて運ぶ物質で、赤血球の中に含まれるタンパク質のことです。
さて、前置きが長くなりましたが、赤ちゃんは生まれてすぐに、肺を使って呼吸を始めます。
新鮮な酸素をたくさん取り込むことができるので、胎児の時のように多くのヘモグロビンはもう必要ありません。そこで、ヘモグロビンの分解が始まり、この分解によってビリルビンという物質が作られます。このビリルビンこそが、黄疸の正体なのです。
(2)新生児黄疸が重症化する原因
ビリルビンは黄色い色をしていて、主に尿の中に排泄されます。
新生児黄疸は生理的現象ですから、ほぼ全ての新生児に起こりますが、稀に、ビリルビンの排泄がうまくいかなかったり、量が多すぎたりすると、治療が必要になる場合があります。
また、もともと小さめの赤ちゃんや、早産で生まれた赤ちゃんの場合は、ビリルビンを排泄する機能が十分でないために、黄疸が重症化する場合もあります。
ビリルビンは尿から排泄されるので、たくさん水分を摂ってたくさん排泄することが重要です。おっぱいやミルクが足りていない場合、黄疸がひどくなることがあります。
(3)検査と治療
黄疸の特徴として、まず最初に肌や白目が黄色くなります。これを客観的に検査する方法として、赤ちゃんの額に当てて黄色の濃さを測定する器械が毎日使われます。
この検査でやや通常より黄色っぽいと判断された赤ちゃんには、血液検査が行われます。かかとを少し切って血液を少しだけ採取し、血液中のビリルビン値を測定します。
ビリルビン値が通常より高い場合、光線療法といって、医療用に加工された紫外線を休みなく当てて、ビリルビンを分解する治療を行います。ほとんどの黄疸はこれで改善されます。
生理的黄疸は生後2〜3日目がピークとなりますが、ごく稀に、病的な黄疸の場合、生後直後から深刻な黄疸が現れる場合があります。この場合は、交換輸血などの高度な医療が必要となります。
(4)治療しないとどうなるか
黄疸が出ているのに治療しないで放置すると、活気がなくなり、ミルクや母乳を飲まなくなり、従って尿の出も悪くなります。
それによって更にビリルビンの排泄が困難になり、遂にはビリルビンが脳にまで達して、ビリルビン脳症という深刻な障害を引き起こす場合があり、知的障害や筋力低下、脳性麻痺などが残る場合もあります。
大切な赤ちゃんですから、一時も離れたくないのは母親として当然の心理です。また、周りの人に祝福されて一緒に退院することは、誰にとっても理想の形でしょう。
しかし時には、赤ちゃんに何らかの治療が必要になり、入院が長引く場合もあります。赤ちゃんのための治療ですから、気を強く持って、前向きに乗り越えましょう。