えっ……たったの20%!? 離婚後に実は支払われていない“養育費”の実態
2013年11月26日 | よみものえっ……たったの20%!? 離婚後に実は支払われていない“養育費”の実態

【女性からのご相談】
3年前に離婚しました。離婚時、養育費などのことは全て話し合いでまとまったのですが、最近、元旦那からの養育費の支払いが滞っています。
同じく離婚歴のある友人は、養育費は最初から支払ってくれず諦めているとのこと。養育費の実態としては、どのような感じなのでしょうか。解決方法はあるのでしょうか。
ご相談ありがとうございます。アディーレ法律事務所の弁護士篠田恵里香です。
日本における養育費の支払い実態は、非常に嘆かわしいものとなっています。離婚後の母子家庭で、養育費を支払ってもらっている割合は、現在は約20%程度と言われています……。
母子家庭の母親が、苦労してお子さんを育てている実態がみてとれます。

厚生省発表の、「養育費の支払い状況」では、
「1983年:11.3%」「1998年:20.8%」、その後横ばいで「2011年:19.7%」
法律上、『養育費』の考え方は、「親である以上、子どもが生きていくために扶助するのは当然。そのための費用が養育費」というものです。
養育費というのは、もともと、子どもの成長には欠かせない、払って当然のお金であることは間違いありません。にもかかわらず、「取決めはしたけれど一度も払ってもらっていない」「そもそも取決めさえしていない」というケースもまだまだ多いようです。
政府はこのような実態を踏まえ、2004年には、「養育費支払いが滞った場合には、将来分まで継続的に給与を差し押さることができる」と法律を改正し、昨年4月からは、離婚届に、「養育費と面会交流」について取決めをしたかどうかを記入するチェック欄も新設しました。
法務省によると、昨年4~12月中に離婚届に、「決めた」とチェックした夫婦は54%だけだったそうです。
養育費をしっかり受け取るためにはどうしたらいいのか?
まずは何よりも、離婚の際に取決めをし、少なくとも書面に残しておくことです。滞納した場合に備えて、強制執行ができるように、『調停調書』や、『公正証書』等の公的書面を作成しておくとベストです。これらの書面があれば、仮に父親からの養育費支払いが滞ったとしても、給与や預金を差し押さえることによって、強制的に養育費を回収することができます。
今回の場合は、「話し合いでまとまった」ということですが、少なくとも「離婚に伴う合意書」が作られているとよいですね。『公正証書』などにしていない場合は、今後、任意の支払いを期待できないのであれば、早急に裁判所に、『調停』を申し立てることをお勧めします。『調停』でお話合いがまとまらなくとも、最終的には裁判所が養育費の額を決定してくれます。
また、滞納している養育費の時効は、「話し合いで決めた場合は、滞納から5年」となっているので、相談者さんの場合は滞納部分についてもいまだ時効にはかかっておらず、請求が可能です。
ただ、合意書がない場合には、「取決めた内容」を立証するのが難しいので、なるべく早くに『調停』だけは申し立てておくのがよいでしょう。
このように、養育費は子どものために当然支払われてしかるべきものですから、強制的にでも養育費が回収できるような手立てを、打っておくことは大切です。
現状を踏まえて、何よりも父親に、「父親だから養育費を払うのは当然」との意識を再認識していただくことが極めて重要ですね。
【参考リンク】
・養育費の状況 | 厚生省(PDF)