最高裁が下した「婚外子の相続差別は違憲である」について
2013年10月22日 | よみもの最高裁が下した「婚外子の相続差別は違憲である」について

【ママからのご相談】
新聞でもとりあげられていた、婚外子相続格差違憲とのニュース。実は私自身が婚外子で、相続に関していろいろとやり取りをしている最中でした。この判決が出たことで、私の相続はどう影響してくるのでしょうか?
「婚外子の相続差別は違憲である」
2013年9月4日、最高裁が、「婚外子の相続差別は違憲である」という画期的な判断を下し、ニュースでも騒がれましたね。
これはどういうことでしょうか。
これまでの法律では、婚外子の相続分は、夫婦間に生まれた子ども(『嫡出子』といいます)の2分の1とされていました。
例えば、子ども2人が相続すべき財産が300万円あった場合は、「嫡出子は200万円受け取る。婚外子は100万円受け取る」のが原則だったわけです。
今回、最高裁がこの差別を憲法違反と判断した以上、「子どもはみな同等の相続分を有する」ということになります。「生まれてきた子は親を自分では選べない」わけですから、それを理由に相続分を半分にされるのは不公平だというのが、最高裁の考えです。

「どこまで遡るのか」
今回の最高裁判断で注目されたのが、「どこまで遡るのか」ということ。
今回、最高裁で争われた事件は、2001年に他界した故人の相続案件なので、少なくとも2001年の段階で、「差別規定は違憲」であったということになります。
困ったことが想像できませんか? これまでの遺産分割や相続はどうなってしまうのでしょうか。
2001年の同時期以降に相続分を決めた方々の「遺産分割」は、全てやり直しでしょうか。
この点について最高裁は、「決着済みの同種事案にはこの違憲判断は影響を及ぼさない」と述べました。いわば、将来の事案に対してのみ拘束力を有するという判断をしたわけです。
実は、これは極めて異例の措置なのですが、理由としては、「すでにまとまった遺産分割や、相続を12年分もまとめてひっくり返すことは著しく法的安定性を害する」ということなんですね。
2001年の時点で相続差別が違憲だったと判断される以上、そのとき涙をのんだ婚外子の方々は、「平等に相続させろ」と本来権利主張ができるはずです。
ただ、それはもはや許されないんですね。逆にいうと、相談者の方のように、「いまだ遺産分割が最終合意に至っていない」のであれば、「婚外子は同等の相続分を有する」ことを前提に遺産分割を進めることができます。
これまで、「この子の半分」という前提で話し合いに応じていたかもしれませんが、そのような泣き寝入りはしなくてよいことになります。
仮に遺産分割が話合いでまとまらない場合は、調停・裁判ということになりますが、その場合も、「嫡出子と同等の相続分を有する」ことを前提に手続きは進められます。今後の相続案件は全てこのように、婚外子も平等に扱われるということになります。
【参考リンク】
・最高裁判例 | 裁判所