離婚後に出産しても元夫の子供とみなされる『300日問題』って何?
2013年7月23日 | よみもの離婚後に出産しても元夫の子供とみなされる『300日問題』って何?

【女性からのご相談】
最近、『離婚300日問題』という言葉をよく耳にします。これは、「離婚から300日以内に子供が生まれると元夫の子供とされてしまう」ということですよね。先日のニュースで、昨年末に高嶋政伸さんと裁判まで争って離婚するに至った美元さんが、年内にも再婚、妊娠している可能性もあるとのことで、とても気になりました。離婚問題でもめて長期間別居をした挙句に離婚をしたような場合、離婚後300日以内に生まれた子どもは明らかに元夫の子供じゃないと思うのですが、元夫の子供として扱われてしまうのでしょうか? 『離婚後300日問題』について、詳しく教えてください。
法的には「元夫の子供として扱われる」可能性が高いです!
初めまして! ご相談ありがとうございます。アディーレ法律相談所の弁護士・篠田恵里香です。
現在の法律では、裁判所における手続を踏まない限り、元夫との子供として扱われてしまいます(裁判所の手続によって子供は元夫の子ではないという判断がもらえれば、元夫の子として扱わないことができます)。現在、法律の改正も叫ばれているので、将来的にはもっと使いやすい制度になるかもしれません。
子は母体から生まれるので、子の「母親」は一目瞭然ですね。しかし、「父親が誰か」は厳密には分からないことになります。これにつき法律は、
(1)妻が婚姻中に懐胎(妊娠)した子は、夫の子と推定する
(2)婚姻の成立の日から200日を経過した後、または婚姻の解消の日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する
と規定しています。
つまり、「離婚の日から300日以内に生まれた子」は、結論として、「元夫の子として扱う」仕組みになっています。
例えば、2年間別居した後に離婚し、その間夫婦間に夫婦生活がない場合、離婚して200日後に生まれた子は、明らかに元夫の子ではないはずです。再婚相手の子である可能性も高いですね。それでも法律は、「離婚後300以内に生まれた子は元夫の子」と扱うのです。
このような場合に、元夫の子でない扱いとするためには、離婚後に懐胎した旨の医学的証明書を役所に提出するか、家庭裁判所における手続を踏まねばなりません。

具体的には、家庭裁判所に対し、
(1)親子関係不存在確認の調停
(2)認知の調停を申立てます。これらの調停が不成立となった場合は、さらに、
(3)親子関係不存在確認の訴え
(4)認知の訴え
を提起する必要があります。
なお、元夫からは嫡出否認の訴えができます。これらの調停や裁判によって、「元夫の子ではない」という判断をもらえば、ようやく、生まれた子は元夫の子ではないものとして扱われることになります。
このように、300日問題は、「絶対に元夫の子供ではないのに、裁判所の手続を踏まない限り原則これを覆す方法がない」という意味で、実情と合致しないと批判されています。離婚の泥沼裁判が終わってホッとしていたら、その後300日以内に元妻に子供が生まれ、また裁判騒ぎに……なんていうことも起こりうるのです。
法律の改正が待たれますが、改正されるまでは、この制度に従わざるをえないのが現状です。