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今話題!裁量労働制はパパの職場で適用されない方がいいの?

今話題!裁量労働制はパパの職場で適用されない方がいいの?

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こんにちは。エッセイストで経済思想史家の鈴木かつよしです。

政府が目玉法案である「働き方改革関連法案」を巡って、“裁量労働制”の対象拡大を法案から削除する事態に追い込まれたことは記憶に新しいですね。

この「裁量労働」という概念。

経済学を専攻した筆者から見ますと、わが国では多くの一般企業でこの考え方を今以上に拡大することに“無理”があります。

「パパの職場で裁量労働制の対象が拡大されなくて本当によかったですね」と言い切れる理由を筆者の40年近い現場実務経験を踏まえてお話ししたいと思います。

そもそも「裁量労働制」って何?

まず、「裁量労働制」とは何でしょうか。

2018年2月19日付「朝日新聞」の朝刊に載っていた解説が分かりやすかったので、引用しておきます。

『(裁量労働制とは)労働時間の規制を緩める制度の一つ。実際に働いた時間でなく、あらかじめ定められた労働時間に基づいて残業代込みの賃金を払う。それ以上働いても追加の残業代は出ない。仕事の進め方をある程度自分で決められる働き手に限って適用できる。研究開発職などが対象の専門業務型と、企業の中枢で企画・立案をする人が対象の企画業務型がある』

大雑把に言いますと、裁量労働制というのはだいたいこのようなものです。

わが国では1987年の労働基準法の改正時に研究開発の業務等に限定して初めて導入されましたが、現在では適用範囲が広がり次のような職種も対象になっています。

◆コピーライターの業務
◆システムコンサルタントの業務
◆中小企業診断士の業務
◆インテリアコーディネーターの業務
◆ゲームソフト創作の業務
◆公認会計士の業務
◆弁護士の業務
◆弁理士の業務
◆建築士の業務
などなどです。

「裁量労働制」はプロフェッショナルに適した制度

ちょっと見る限りでは、「仕事の進め方を自分で決められて、効率よく仕事をすれば一日の実働時間が2~3時間でも8時間働いたと見なした分の給料が貰えるのはいいことじゃないか」とも思える裁量労働制。

ですが、みなさんは気づかれたでしょうか?

現時点で裁量労働制の対象となっている職種であればまだ、働く人本人に「裁量権」があります。

何故ならば、今の対象職種は『やる気さえあるなら企業や組織に所属などしなくてもできるプロフェッショナルな仕事』ばかりだからです。

弁護士さんにしたって建築士さんにしたってコピーライターの人にしたって、本当に実力がある人なら法人になど所属しない方が要らぬピンハネをされませんのでずっと儲かります。

仕事を取ったり仕事の範囲を広げやすくするために便宜上組織に所属しているプロフェッショナルに適した働き方が「裁量労働制」なのです。“生みの苦しみ”で長時間思索中のプロに無限に残業代を払っていたら企業は持ちませんし、かといって実働1時間でも凄い成果を上げてみせるプロに1時間分の時給しか払わないのではプロが生活できません。

これこそが、裁量労働制という働き方の存在意義であり、存在理由なのです。

一般的なパパたちの職場で裁量労働制が拡大されない方がいい理由

このように、本来は組織なんかに属さなくてもいいはずのプロの人たちにのみ適用されるべき裁量労働制を、法人向けの営業業務のような「一般的な職場の一般的な仕事」にまで拡大しようとした政権が、経済団体への借りを返さねばと「拡大」ありきで焦った結果、厚生労働省から怪しげなデータが出てきて拡大方針からの撤退をいったん余儀なくされた。

それが今回の一連の経緯だったのではないでしょうか。

実は筆者は裁量労働制が企画立案業務にまでその適用範囲を拡大された直後の30代後半頃、ある団体に「企画立案業務担当幹部事務職」として、裁量労働制の報酬契約で勤務した経験があります。いわゆる“先駆け”ですよね。

1か月の残業代込み契約報酬額は、それはいいものでした。

けれど、3か月でその職場は辞めました。理由は、そのままそこで働きつづけたらかなりの確率で過労死していた怖れがあったからです。

わが国の風土の中では、普通の職場で普通の仕事に携わる人に「裁量権」はないのです。
言うまでもなく、法人向け営業の仕事に裁量権などあるはずがありません。

1から100まで「上からの監視下」で働かざるを得ないというのが現実です。裁量権がないのに裁量労働制を適用する。これはもう“ブラック・ジョーク”と言うよりほかありません。

筆者が『一般的なパパたちの職場で裁量労働制が拡大されない方がいい』と言い切れる理由もそれです。

裁量労働の幻想はウソ?

素朴な感想を申し上げるのであれば、欧米のように“働く個人”にかなりの「裁量権」が任せられている社会であれば、裁量労働制の適用を相応の範囲にまで拡大しても、あまり問題は起きないように思います。

ですが、日米双方のビジネス・カルチャーに明るい作家でジャーナリストの冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ)さんが『日本の多くの職場においては「裁量労働」というのはかなりの程度で「ウソ」』と言い切っているように、わが国では今以上にこの制度を拡大しない方が無難でしょう。

そもそも裁量労働制の適用拡大のようなおかしな政策提言が出てこないようにするためには、政治に携わる人たちに一定の現場実務経験があることが求められると思います。

膨大な質量の業務を押し付けられても断れる雰囲気などあるはずもないわが国の一般的な職場環境下で「裁量」で働ける労働者などいないということを、自分の皮膚感覚で知っている人だけが政治家になる資格を持っているのではないでしょうか。

親の秘書をやったことがあるだとか、そんな人たちばかりが国の舵取りをしているようでは、身を粉にして一生懸命に働いているパパが(もちろんママも)いつまで経っても報われることがありません。

●参考リンク
『裁量労働制のどこがウソなのか?』冷泉彰彦・著 ニューズウィーク日本版、2018年2月20日

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)
●モデル/貴子

ライター紹介

鈴木かつよし

鈴木かつよし

慶大在学中の1982年に雑誌『朝日ジャーナル』に書き下ろした、エッセイ『卒業』でデビュー。政府系政策銀行勤務、医療福祉大学職員、健康食品販売会社経営を経て、2011年頃よりエッセイ執筆を活動の中心に据える。WHO憲章によれば、「健康」は単に病気が存在しないことではなく、完全な肉体的・精神的・社会的福祉の状態であると定義されています。そういった「真に健康な」状態をいかにして保ちながら働き、生活していくかを自身の人生経験を踏まえながらお話ししてまいります。2014年1月『親父へ』で、「つたえたい心の手紙」エッセイ賞受賞。

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貴子

貴子

ママになっても自分の時間を大切にし、笑顔でいることで子どもたちも笑顔でいられるよう、楽しくやっています♪

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