これからの結婚のあり方のヒントがある?明治時代以前の夫婦関係とは
2018年2月26日 | よみものこれからの結婚のあり方のヒントがある?明治時代以前の夫婦関係とは

こんにちは。
エッセイストで経済思想史家の鈴木かつよしです。
独身研究家でコラムニストの荒川和久さんは、わが国における「独身」研究の第一人者です。
荒川さんによれば、日本人の一般庶民の夫婦関係は、明治維新より前の時代の方がずっと対等。
ほとんどの夫婦が共働きで、自立した男女のパートナー同士である意識が強く、女性が自由であったということです。
ということで今回のテーマ。
明治より前の結婚のあり方の中に、これからの結婚のあり方のヒントを模索してみましょう。

いつから男女は平等じゃなくなった?
これは、名古屋大学名誉教授の加賀山茂さんも指摘していることなのですが、日本の社会に、今なお、根強く残っている男女差別やジェンダー差別の根源は「明治民法の制定」とその根本思想となっている「家制度」や「家族」の概念にあるそうです。
少し難しいですよね。
簡単に説明すると、それまで男も女もなく平等で、夫とは別の財産を持ち自由奔放な暮らしを送っていた日本の女性たちは、明治民法によって無理やりに「家」の中に押し込められたわけです。
ここで読者のみなさんは「でも、江戸時代とかの女の人って本当にそんな自由だったの?だってお侍さんの世界とか、やっぱり男尊女卑だったんじゃないの?」と思われるかもしれません。
たしかに支配階級にはそういった傾向が見られますが、江戸時代の支配階級である武家人口というのは総人口の僅か7%から8%にしかすぎません。
したがって、女性全体の9割以上にあたる“一般庶民の女の人たち”にとっては、「明治政府こそ彼女たちから経済的な自立と、自由を奪った張本人である」という考え方は、まったくもって“そのとおり”と言うことができるのです。
男女が平等で、女性に自由があった時代ってどんな感じ?
それでは、明治維新より前の日本の女性(妻)たちの日常生活が、いかに自由で自立したものであったかを、漫画家で江戸風俗研究家でもあった故・杉浦日向子さんの書物で見てみましょう。
杉浦さんの著書『杉浦日向子の江戸塾』によりますと、江戸の町は参勤交代の武士たちはもとより、出稼ぎで地方から出てきた男性で溢れかえっていたよう。
そのため結婚は女性の超売り手市場だったようです。
料理も育児もできないような旦那さんは、奥さんからあっさりと愛想をつかされたとのこと。
女性はたとえ離婚しても、する仕事が豊富にあったため生活に困らなかったということです。
機織り、綿摘み、洗濯屋、三味線の師匠、髪結い、料理屋、枝豆売り、占い師などなど。
子どもがいて離婚した女性であっても、「再婚してください」と希望する男性はいくらでもいたようなので、一般論として男性に対して強気であったみたいです。
長屋と呼ばれる集合住宅で暮らす奥さんたちは、“井戸端会議”や“銭湯”でわいわいとコミュニケーションを図り、その日常生活は自由で快活で平等な、幸せなものだったようです。
一方、農民に嫁いだ女性にしても、女の子を売りに出さなければならないような貧しい地域の一部の農民を除けば、年貢さえ納めればけっこう自由だったみたいです。
お米以外の農作物や加工食品・民芸品などを作って販売し現金収入を得ていた農家はけっして少なくなかったよう。
その証拠としては、今でも日本中の各地に農民の奥さんたちが副業として作っていた民芸品や加工食品が名産品として残り、伝わっていますよね。
やはり明治より前の時代の方が、こと妻たち・女性たちにかんして言うなら自由で自立していたことは間違いないようです。
女性の自由を守りましょう
このように、明治政府がその理想とする国づくりのために、民法で意図的に妻(女性)たちを「家」の中に閉じ込めたのと比べると、明治以前~特に江戸時代~の日本の女性たちがいかに自由で自立した幸せな存在であったかということがよく分かってきます。
「富国強兵」という明治政府が理想とする国の路線を確固たるものにするために、主に長州(現在の山口県)出身の政治指導者たちが、法律を使って「妻は家にいて家事と育児をする」という“あるべき夫婦の規範”を明文化。
これによって日本の妻(女性)たちは、現行法を手にするまで長い間、『愛という名の無償労働を強いられた』(加賀山茂名誉教授)存在となってしまったのです。
いかがでしょうか。
明治時代や敗戦までの昭和前期の、自由や自立を奪われた女性たちの陰鬱な表情。
それに対し、手に職をつけて自分の仕事を持ち、常に夫の尻を叩きながらユーモアを理解し、おおらかな江戸の庶民の女性たちの生き生きした表情。
明治維新より前の夫婦関係の方がよっぽど良かったと思いませんか?
●参考リンク
『日本の家族と民法』加賀山茂
●参考リンク
『「夫婦は一生添うべし」が当然ではない理由』荒川和久(東洋経済オンライン)
●参考文献
『杉浦日向子の江戸塾』杉浦日向子・著、PHP研究所、2008年