今の子供はパパに従え?”パターナリズム”に惹かれる理由

2018.01.18

こんにちは。エッセイストの鈴木かつよしです。

昭和後期世代である筆者が10代の後半だった頃などは、父親から「お前の将来のために忠告してやっているんだ」などと言われると無性に腹が立ったものです。

「親父の世話になんかならなくたって立派に生きて行ってやるさ」と反抗し、あえて父親には理解できないようなロックや文学のようなものに没入して行った10代の日々だったような気がします。

今その年代の子どもたちはちょっと違います。

概してですが、父親的な「強さ」や「権威」に従順で、年長者がパターナリズム(父権主義)的に干渉してくることをさほど嫌がらない傾向があるように見えます。

今回は、今の10代後半の子どもたちが“パターナリズム”に惹かれてしまう理由について考えてみましょう。

“パターナリズム”とは何か

では、“パターナリズム”とは何でしょうか。

『広辞苑』によるとそれは「(比較的に強い立場にある方の者が弱い立場にある方の者に対して)本人の意思にかかわりなく生活や行動に干渉し制限を加えるべきであるとする考え方」のことであるとされています。

分かりやすい例を挙げるなら次のようなものがパターナリズムであるといえます。

・家業を継いで地元に残ることがお前の将来にとってベストの選択なのだといった価値観を子どもに押し付け半ば強制するような親の行動様式

・あなたは医学にかんして無知なのだから医師の言いつけを100パーセント守ったライフスタイルで暮らしなさいと患者に強制する医者の診療方針

・しもじもの国民は無知で国内外の社会情勢の実態など分かりっこないのだから全部こちらで決めてやるのだ的な政治権力のあり様

いかがでしょうか。

まっとうな感性のパパやママにとっては「うざったい」「上から目線」「勘弁してよ」という感じではないでしょうか。

ところが今わが国の10代後半の子どもたちにとってはこれが案外と心強いものに映る傾向があるようなのです。

目上の人の“強いメッセージ”に惹かれてしまう子どもたち

経済学者で同志社大学大学院教授の浜矩子(はま・のりこ)さんは雑誌『AERA』に寄せたエッセイの中で、10代後半の若い人たちについて思うことを次のように表現しています。

『今の若者たちは、将来に対する不安がとても深い。そのため保守的になる。寄る辺(よるべ)が欲しい。だから、「強い日本を取り戻す」式のメッセージに弱い。(中略)彼らのなえる魂に、権力亡者たちがつけ込んでいく』(『AERA』2017年11月6日号より引用)

浜先生のこの見方は、パターナリズムに惹かれていく今のわが国の10代後半の子どもたちの心理的な傾向を、経済学者の眼で的確に捉えているように筆者は思います。

勉強して、大学を卒業して、企業に就職して、それでもその会社は世界の中での競争で生き残れるのか。

仮に会社が生き残ったにしても自分自身はリストラされるのではないか。

会社から放り出されたときに自分には何かできることがあるのか。

うまい具合に再就職ができたにしても、年金が受給できる年齢まで体がもつのか。

そもそも年金が本当に貰えるのか。

このような子どもたちの心に、パターナリストたちは己(おのれ)の支配欲・権勢欲を満足させるために「強いわたしについてくれば希望に満ちた未来が待っている」のような、ある意味催眠術にも似たような言葉で語りかけてくる。

浜先生はこのように分析しているのです。

頼りになる父親も年をとれば衰えることをパパやママが教えましょう

子どもが10代の頃の父親は、概して“頼りになる”存在であることは間違いありません。
経験からくる判断力、たしかな技術、まだまだしっかりした体力。

不安に包まれた子どもたちがそんな頼もしい父親から強い言葉でアドバイスしてもらったらどれほど心強いか。それはよく分かります。

不安でさまよう心に「家の商売を継ぐのがお前にとって最上の道だ」「わが国は何も間違っていない。悪いのは周辺諸国の方だ」といったような“言い切り”は響くでしょう。

多面的に熟慮する慎重な態度は、彼らにとってはむしろ“頼りない”と映るかもしれません。

でも、自分で考えたこと以外の結論を信用し過ぎることは危険です。

なぜなら、パターナリストの人たちは根底では相手の幸福よりも自分にとっての気持ちよさを大切にしているからです。

そして、仮にその言動が本当に相手の幸福を思いはかってのことであったとしても、頼もしい父親だって年とともに衰えてくるのだということを忘れてはなりません。

「家業を継ぐのがベストだ」と言った時点での父親は、すでに自分自身の衰えから子どもの若い力を自分の仕事の再建のために利用したいという気持ちを(自分では気づいていなくても)もっていたかもしれないのです。


本当に相手のことを思っている“頼りになる”人は、アドバイスはしても強制はしないものです。

若い人たちに自分の頭で考えて行動することを促し、それで失敗したらしたで次のチャンスを得る手助けをする。

まだ衰えていない父親だったら子どもにたいしてそのように接するはずです。

そのことを子どもたちに教えることができるのは他の誰でもなく、パパとママなのです。

●参考文献  『統治・自律・民主主義 パターナリズムの政治社会学』
宮台真司・監修 2012年、NTT出版



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