非婚化進む?非正規労働と非婚化の原因をリサーチ

2017.12.26

こんにちは。エッセイストの鈴木かつよしです。

わが国が歴史上例をみないほどの少子高齢化社会になってからもうかなりの年月が過ぎましたが、少子化対策はいっこうにこれといった成果を上げられていません。

それもそのはずで、今や働く人の半数近くにのぼる非正規雇用の人にとって結婚や出産は「自分には考えられないほど非現実的な贅沢」になってしまっているからです。

内閣府の少子化対策案をみてもそういった点についての認識が甘く、これでは少子化に歯止めがかかるはずはありません。

今回は、「本当の少子化対策とは非正規雇用の人が結婚できるようにすることである」という視点に立って、これから結婚してママやパパになりたいと願っている非正規で働く独身者のみなさんと一緒に考えてみたいと思います。

「正社員への転換制度の拡充」と政府は言うけれど……

雇用の非正規化が少子化に拍車をかけていることに国が気づいていないとは言いません。

内閣府の少子化対策案の中にも「正社員への転換制度の拡充」はちゃんと謳われています。

ですが、ひとたび動き出してしまった労働の非正規化の流れをそう簡単に止めることができるのでしょうか?

現実問題として、飲食業や各種のサービス業に象徴されるような労働集約型の業界では、その企業の命である商品の提供を実際に手がける現場のスタッフのほとんどが非正社員です。

正社員は、「ごく一部の、頭で働く人」と「人生の時間の大半を会社に捧げてくれる人」に限られているというのが実態。

ほんの一握りの正社員の他は、会社の経営状態によっていつでも雇用を打ち切ることが出来るという体制を、わが国の企業はこの20数年かけて確立したのです。

2018年4月には法改正によって5年以上有期雇用で働いてきた人は無期に転換できるようにはなりますが、5年に満たない人は逆に「今のうちに雇止めしておこう」といった姑息な対策の対象になりかねません

こんなおいしいシステムを、今さら企業経営者は手放すでしょうか?

どこからどう見ても“生活できない時給”で本当にいいのか?

独身の女性が非正規雇用の独身男性を結婚相手として対象外にしてしまう理由は、上で述べたような「いつクビを切られてもおかしくない雇用の不安定性」の問題の他にもう一つ、「どこからどう見ても生活が成り立つわけがないほど安い時給」の問題があります。

国税庁が2017年9月28日に発表した直近の民間給与実態調査によれば、非正規雇用労働者の平均年収は172万円でした。

月収に換算すると14万3千円。1,000円にも満たない時給で働いている人がほとんどなのですから当然といえば当然です。自立して生活できるはずがありませんよね。

いっとき東京などで盛んに言われた「最低時給1,500円を企業に義務化すべき」という意見は、「中小企業が潰れてしまう」「単純労働をするだけの人にそんなに払うべきでない」などといった理由からトーンダウンしてしまった感がありますが、本当にそうでしょうか?

単純な筋肉労働だって立派な労働であり、職業に貴賎はありません。

何よりも、真面目に働いている人が自立した生活を営むことが出来ないような対価で人を雇うことそのものに倫理上の問題はないのでしょうか?

非正規雇用の人が結婚できるようにしなければ社会そのものが持続できない

明治大学の教授で社会学博士の安藏伸治(あんぞう しんじ)氏は機会あるごとに、「少子化が止まらない原因は結婚できない人がおそろしい勢いで増えているからだ」という趣旨の指摘をしています。

筆者もそう思います。

本当の少子化対策とは結婚できた人にたいして施すものではなく、結婚できないでいる人が結婚できるようにすることなのです。

この対策こそ急いで実行しないことには、残念ですがわが国の社会そのものが持続できません。

若者の貧困問題に詳しいNPO法人代表の藤田孝典(ふじた たかのり)氏もこの立場に立ち、「多くの独身者にとって手の届かない贅沢になってしまった結婚・出産を彼らの元に取り戻す方法」として、次のような対策が不可欠であると述べています。

1. 雇用形態にかかわらず自立した生活を営むことが可能な賃金を保証すること
2. 教育にかかる費用を抜本的に下げること
3. 住宅にかかるコストを下げ、独身者が親の実家に頼らなくても恋愛・結婚にふみきれる環境を作ること 実質的な可処分所得を増やすこと

いかがでしょうか。筆者も全く同感です。

総務省統計局が行った就業構造基本調査の直近データによると、時給換算した正社員の平均収入は20代後半では1,500円程度ですが30代半ばには2,200円台に乗り、40代になると2,600円以上になっています。

これに対して非正規雇用労働者は何年働いてもどんなに熟練しても時給900円台が普通です。非正規でも様々な仕事の現場を支えている真面目に働く人に1,500円程度の時給を支払うことがそんなに躊躇すべきことなのでしょうか?

親がある程度の経済力を持っていないと高等教育を受けられない現実。住宅ローンを組むことができる階層の人だけを見た持ち家中心の住宅政策。こういったもの全てを藤田さんが指摘するようなものに改めて行くべきでしょう。

筆者は安藏博士や藤田さん同様、非正規で働く独身者の人たちが恋愛や結婚や子どもを持つことを現実的な夢として見ることができる世の中にならなければわが国の未来はないと考えています。

 

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●参考文献:『実効性のある少子化対策のあり方』小峰隆夫・編、安藏伸治他・著
2015年、経団連出版

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)



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