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お墓を作る必要ナシ! “ゼロ葬”が増えているワケと最新の葬儀事情

お墓を作る必要ナシ! “ゼロ葬”が増えているワケと最新の葬儀事情

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こんにちは。エッセイストで経済思想史家の鈴木かつよしです。

今わが国では、葬儀の形やお墓というもののあり方が変わってきています。

何代にもわたって同じ土地に住み続けるわけでもなく、生涯独身で生きてきたためお墓を守ってくれる子どもがいるわけでもなく。非正規雇用で働いているので100万円もするお墓を亡くなった親のために買ってあげる余裕もなく……。

少子高齢化と相対的貧困の増加に伴って、亡くなった人のために家族がお墓を作るということをしない「ゼロ葬」と呼ばれる葬儀のあり方が急速に広がりつつあります。

今回は最新の葬儀事情をご紹介しながら時代とともに変わる供養の形について考えてみたいと思います。

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ゼロ葬とは何か、どのような種類があるのか

まず、『ゼロ葬』とは何でしょうか。一般的にその語源は宗教学者の島田裕巳先生が提唱してきた『ゼロ死』すなわち、「死んだら何も残さずゼロになるのがいい」という概念に由来すると考えられています。

ゼロ死には「死んでも葬式をあげない」ゼロ葬儀と、「死んでもお墓は作らない」ゼロ墓の2つの要素がありますが、最近は葬儀やお墓の業界でそれらを包括して『ゼロ葬』と呼んでいるようです。

では、ゼロ葬にはどのような種類があるのでしょうか。ゼロ葬儀とゼロ墓の両面からみてみましょう。

(1)直葬(「ちょくそう」または「じかそう」)

一般的な火葬式の手順にあるお通夜も葬儀も告別式も省略し、ご遺体を安置した後は火葬場に直行する形式のことです。

関東地方では今や全体の4分の1がこれにあたると言われています。

(2)遺骨引き取り拒否

火葬場によっては遺族が遺骨の引き取りを拒否できるところがあります。

その後のお墓等の心配をすることもないため、島田先生は元々はこれを「究極のゼロ葬」としています。

(3)預骨

通常は火葬場からの引き取りを拒否できない遺骨を、葬儀会社に一時的に預かってもらうサービスのこと。

非正規雇用の増加等に伴い、100万円前後の費用がかかるお墓を購入する経済的余裕のない人が増えているため、数万円の保証金でお墓が用意できるまで遺骨を預かってもらえるこのサービスの利用者は増加しています。

しかし、一方で遺骨を預けたまま音信不通になる遺族が急増しており、問題になってもいます。

なお『東京都公園協会』では、都民対象に何か所かの霊園で遺骨一時預かりの制度を設けています。

(4)迎骨

遺族も高齢で思うように動けないといった場合、NPO法人のスタッフが遺骨を引き取りに来てくれてお寺の合同墓地などに運んで埋葬してくれるサービスのこと。

費用は数万円と交通費程度ですが、非営利活動が中心のため問い合わせが殺到しているようです。

(5)送骨

遺骨を郵送ないし特別な宅配便で送るだけで業者がしかるべき合同墓地等に遺骨を埋葬してくれるサービスです。

次に紹介する「散骨」も散骨業者に届ける方法が郵送や運送便であるなら送骨の一種であると言うことができます。

(6)散骨

遺骨を粉末状にした後、海や山中等に撒く葬送の方法です。

法務省の見解では、『節度をもって行われる限りは違法性はない』とされ、自分で段取りするよりは専門の散骨業者に依頼した方がずっと簡単であり一般的です。

また陸地での散骨はさまざまなトラブルの原因となるおそれがあるため、今はほとんどが海洋散骨です。

また、遺族が乗船して海洋散骨に立ち会う場合は全体で数十万円の費用が見込まれるため、業者に一任して散骨してもらうケースが増えているようです。その場合の費用はおよそ5~6万円といったところのようです。

なぜゼロ葬なのか、その時代的背景は?

ゼロ葬がどのようなもので、どのような種類があるかについてはだいたいお分かりいただけたかと思いますので、次に、今なぜゼロ葬なのか、その時代的背景とはどのようなものなのかということについて考えてみましょう。

経済思想史的な視点で見ますと、農林水産業という第一次産業があらゆる産業の中心であった時代から産業革命によって社会が工業化し、工業従事者の夫とそれを家庭内で支える妻と2~3人の子どもたちという「核家族」が社会の構成単位の中心となった20世紀まで、人間はその時代に合った形の家族を作ることで生きてきました。

しかし、わが国では今世紀に入ってから、超高齢化で高齢者の身体機能が相当程度衰えた後も何年も生存し続けること、それに伴う介護や医療の必要性と、それにかかる高額な費用の問題。

グローバル化で国外のフロンティアを開拓し尽くしてしまった資本主義が“非正規労働者”という低コストのフロンティアを国内に政策的に作り出したこと、それに伴う貧困層の増大。

こういった諸々の“資本主義の限界”が家族という生活単位の勤続疲労と“ゼロ葬の時代”を生み出したと言うことができます。

今はもう先祖代々の田畑を耕すためにずっと同じ土地に住み続ける必然性があるわけでなく、子どもたちは非正規雇用なので100万円もするお墓を買うくらいなら自分たちが生きるために使いたいですし、見栄を張るような相手もいないので立派なお葬式を出す必要などありません。

だいたいお墓を買ったところで独身の子が多いですから、いずれお墓を守る人もいなくなります

しかも昔と違って今の宗教は貧しい人たちの心の拠り所ではなくなり、どちらかというと恵まれている人たちの権威と親和性のあるものとなっていますので、宗教色のある供養の形にこだわる気持ちもありません。

ざっとこのような理由から、ゼロ葬は今のわが国にあって“当然の弔いの形”になりつつあるのだろうと考えることができるでしょう。

ゼロ葬にするのは経済的な事情が全てではない? 積極的な理由でゼロ葬にした人たち

おしまいに、ゼロ葬ないしゼロ墓にするのは何も「経済的に厳しいから」という事情ばかりではなく、ある意味積極的な考え方をもってそうする場合もあるというお話をして締めくくりたいと思います。

日本の有名人でも本人や遺族の意思でお墓を作らずに散骨された人が数多くいます。

落語家の立川談志さん、作家の山本七平さん、女優の沢村貞子さんや乙羽信子さん、深浦加奈子さん、俳優・歌手で戦後の大スターだった石原裕次郎さん、演歌歌手で宇多田ヒカルさんの実母である藤圭子さん、ザ・ドリフターズの荒井注さんなど、あげたらきりがありません。

顔ぶれを見ると何となく共通点が感じられ、筆者には“なくなってからまで偶像のようにあがめられることは本意ではない”的な気概を感じさせる人たちばかりに見えます。

こうして見てくると、経済的な事情でゼロ葬を選ぶ人も、金銭的な問題ではなく自分や家族の考え方でゼロ葬を選ぶ人もあり、ゼロ葬は今のわたしたち日本人にとって「しっくりくる」供養のあり方になりつつあるような気がいたします。

みなさんはどうお感じになりますでしょうか。

【参考文献】
・『0(ゼロ)葬ーーあっさり死ぬ』島田裕巳・著

ライター紹介

鈴木かつよし

鈴木かつよし

慶大在学中の1982年に雑誌『朝日ジャーナル』に書き下ろした、エッセイ『卒業』でデビュー。政府系政策銀行勤務、医療福祉大学職員、健康食品販売会社経営を経て、2011年頃よりエッセイ執筆を活動の中心に据える。WHO憲章によれば、「健康」は単に病気が存在しないことではなく、完全な肉体的・精神的・社会的福祉の状態であると定義されています。そういった「真に健康な」状態をいかにして保ちながら働き、生活していくかを自身の人生経験を踏まえながらお話ししてまいります。2014年1月『親父へ』で、「つたえたい心の手紙」エッセイ賞受賞。

ライター紹介

神山みき(れんくん)

神山みき(れんくん)

はじめまして! 1児の男の子ママです★ 「ママになっても活躍したい!」という思いから現在、親子でモデルの活動をしています! 子育ての疑問や悩みを皆さんと一緒に共有して、子育てライフを楽しみたいです! よろしくお願いします♡♡

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