タイムリミットは? 親の負の遺産を“相続放棄”する方法と注意点
2017年3月16日 | よみものタイムリミットは? 親の負の遺産を“相続放棄”する方法と注意点

こんにちは! ライターの月極姫です。
子育て世代になると自分の親も徐々に老年期に近づき、少しずつ体調が心配になったり、寂しい話ですが親亡き後の生活についても考えたりしなければならないときがやってきます。
シビアな話ですが、当然親の死後の財産管理についても、兄弟間で話し合う必要が出てくるかもしれませんね。
いわゆる財産を“相続”できるのは、『配偶者及び血族(子→直系尊属→兄弟姉妹の順)』と法律で定められています(民法第五編第二章より)。
一方で、ひと言に「相続」といっても、プラスになる資産だけでなくマイナスの資産、つまり借金を背負ってしまう可能性もあるということは覚えておかなくてはなりません。
親に万一のことがあったとき、あまりに長期間ぼんやりしていると大事な手続きが間に合わず、「突然多額の借金を背負ってしまった」ということにもなりかねないのです。

親の資産状況、把握してる? 慌てて「相続放棄」するケースが増加中
親御さんの主義や親子関係にもよりますが、結婚して自分の家庭を持ってしまうと、「親がどれくらいの資産を持っているのか」についてお互いに情報を共有したり、しっかり話し合ったりしているケースは少ないかもしれませんね。
親自身が何らかの病気をしたときに、万一のことを考えて初めて子どもに資産状況を話す……というケースもあるかもしれません。
貯蓄や証券、不動産などで“プラスの財産”をたくさん持っている親の場合は、残された家族は相続順位に従って財産を分ければよいのですが、親がマイナスの資産、つまり借金を残してしまう可能性も考えなくてはなりません。
最近では、クレジットカード、キャッシングの返済が終わらないうちに亡くなってしまうというケースも多く、これは金額の多寡によらず残された家族にとっては不利なものです。
「相続する」ということはプラスの資産だけでなく、マイナスの資産、借金の返済義務も引き継がなければならないということだからです。
もちろん、「親の残した借金は子どもの責任」ということで相続し、立派に返していかれるケースもあります。
しかし、子育て世代が前触れなく多額の借金を背負ってしまうというのは、やはり酷な話ですよね。
たとえば、プラスの資産が1億、借金が1千万あるとしたら、相殺してもプラスになるので喜んで遺産を相続し、残された不動産等を売却して借金をゼロにする、というのもアリでしょう。
しかし、借金額が多すぎて総資産がマイナスになってしまう場合や、借金とつぶしの効かなそうな不動産だけが残されていた……という場合は、突然返済義務を負わなくて済むよう『相続放棄』という方法があるのです。
これは、「すべての遺産を相続する権利を放棄する」ということで、手続き自体はそれほど難しいものではありません。
ただし、相続放棄をするには気を付けなければ損をしてしまう注意点がいくつかあります。
『相続放棄』には期限がある! タイムリミットと正しい手続法
じつは、相続放棄には期限があります。具体的には、『自分に相続する財産があると気づいたときから3か月以内』と定められています。
この期限を過ぎてしまうと、基本的には相続放棄の申請は却下されてしまい、裁判所で即時抗告するなどの方法もありますが、放棄の確実性は格段に落ちてしまいます。
また、手続き自体は「相続放棄申述書等の書類作成・準備」「家庭裁判所に提出」という手順になり、少し勉強すれば素人にもできないわけではありませんが、基本的には弁護士や司法書士などの専門家、とくに「遺産相続の案件に強い」と定評のある方に依頼するのがベストです。
例えば、亡くなった親がキャッシングによる負債を残していったとします。
「借金なんか相続したくない!」ということで安易に相続放棄の手続きをとってしまった後で、「実はその借金は長い間利息を払い過ぎていて、弁護士に依頼すれば過払い金が戻りプラスになるはずだった」ということもあり得るのです。
詳しい人から弁護士さんを紹介してもらうのもいいですし、日本司法支援センター『法テラス』などでも、無料で複数の弁護士に相談し、依頼する専門家を選ぶことができます。
よほど民法の知識に長けた方で無い限り、専門家に調査を依頼してアドバイスを受けてから相続放棄の検討をすることをおススメします。
相続に関する基礎知識&生前からの意思疎通が大切
「自分の親にはいつまでも元気でいて欲しい」という思いから、遺産相続についてはなかなか言い出しにくい、聞きにくいということもあるかもしれません。
しかし、仮に負債があった場合は、残された家族の感情を複雑にしてしまうものです。
何か事件でもないと民法に触れる機会など少ないのが普通ですが、書店に行くと素人向けの法律の本も数多く並んでおり、自分の家族を守るために役立つ知識もたくさん含まれています。
ごく基本的な相続の知識を学び、可能であれば自分の親と資産状況について話し合っておくのがベストです。
一族の中に不要な感情的しこりや、経済的負担を残さないように、ぜひ一度親御さんと意思疎通を図ってみることをおススメします。
同時に、自分自身が「子どもに負債を残さない」「万一のために資産状況を明確にしておく」ということも大切です。
お子さんのために、最低限の法律を学んでおいた方が良さそうですね。
【参考文献】
・『民法がわかった』田中嗣久・田中義雄(著)