プチ富裕層は要注意!? 高所得者ほど老後破産に陥りやすいワケ

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。

ベストセラーになった『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』の著者で、社会福祉士・社会運動家の藤田孝典さんは、「老後破産にいちばん陥りやすいのは、年収700万円前後の現役時代に比較的収入に恵まれていた世帯である」という主旨のことを述べて広く国民に警鐘を鳴らしました。

その反響は大きく、今では現役時代の収入にかかわらず、不測の事態によって誰でも老後破産に陥る恐れがあるということが常識として定着しつつあります。

藤田さんは社会運動家の立場から、西欧の先進諸国に比べて著しく遅れたわが国の社会保障行政の問題点を鋭く指摘しますが、一方で老後貧困に陥りうつ状態を呈して訪れる患者さんたちの診察にあたっている精神科の医師の中には、「足るを知るという心の持ち方ができていないと、結局お金がいくらあっても精神的に充実したシニア・エイジを過ごすことはできない」と、異口同音に指摘する人たちが存在します。

これからシニア・エイジを迎える者の一人として、皆さんと一緒に、今回はこの“知足”の思想を重要視している複数の精神科医たちのアドバイスに着目してみたいと思います。

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「退職後に数千万円が必要という言葉に惑わされてはいけない」と言う保坂隆先生

『精神科医が教える50歳からのお金がなくても平気な老後術』などの著書がある精神科医の保坂隆先生は、『マスコミやネット上に溢れる「退職後に数千万円が必要」といった言葉に惑わされてはいけない』と言っています。

お金はその人の人生観やライフスタイル、家族状況、生活環境、健康状態などによっていくら必要になるかが全く違ってくるため、老後に数千万円は必要だといったような、金融資本ビジネスの立場から庶民の不安を煽るような言説を鵜呑みにしてはいけないということです。

また保坂先生は、

『慎ましい暮らしでも明るく過ごしている人もいれば沢山お金を持ちながら不安でたまらないという人もいる。生き方を分けるのは、ものの捉え方である。人と比べず、不要な物は持たず、身軽に、自分流で、低く暮らし高く思う。このような心の持ち方ができていればシニア・エイジの毎日を心から楽しんで暮らすことは誰にでも可能である』

と言っています。

「世間体を過剰に意識したらいくらお金があっても足りない」と言う吉本博昭先生

次にご紹介するのは、“内観療法”という心理療法の第一人者でもある、医師で精神科アイ・クリニック(富山市)を開院する吉本博昭先生の見解です。

現役時代に収入が比較的多かった人たちを、一転して“老後破産”へと追い込んでいく原因として最も大きなものが「病気」と「介護」であることは藤田孝典さんも指摘していますが、吉本医師は内観療法研究の機関誌『やすら樹』に寄稿した『医療と内観 ~知足(ちそく)~』という文章の中で、以下のような主旨のことを述べておられます。

『知足(ちそく)という思想は中国の哲学者・老子が書いた「老子道徳経」に出てくるもので、「足るを知る者は富む」すなわち「今あるものの中に積極的に喜びを見出す生き方ができている者は幸いだ」という考え方である。

老子の思想と数多くの共通点を持つ中国仏教の禅宗にも同様の概念があり、京都の龍安寺にある蹲踞(つくばい)に記された「吾唯足知(われ、ただ、たることをしる)」という言葉も老子の理念と同じ意味である。

自分は精神科の医師として、「この患者さんは知足という考え方を持ってさえいれば病気にならなかったのではないか」と思うことがとても多い』

そして吉川先生は、

『境界性パーソナリティー障害とまでいえなくても、他人の生活水準より低いことを必要以上に恐れたり世間体を過剰に気にしていたらお金などいくらあっても足りないし、心身の健康という意味でもきわめて不安定な状態と言わざるをえない』

といった主旨の結論づけをされているのです。

老後破産に陥ってしまった元プチ富裕層の人たちによく見られる傾向とは

それでは、保坂隆医師や吉本博昭医師らが異口同音に述べる“知足の心”という概念を念頭に置きながら、藤田孝典さんら社会福祉の専門家の人たちが共通して指摘する、“老後破産に陥ってしまった元プチ富裕層の人たちによく見られる傾向”についてまとめてみましょう。

筆者がみる限り、ざっと次のような点を挙げることができます。

(1)持ち家にこだわるがゆえに身動きがとれなくなってしまった

現役時代の収入に比較的恵まれている大企業のサラリーマンの場合、住宅ローンが難なく組めるがゆえに、ややもすると分不相応な持ち家や分譲マンションにこだわる傾向があります。

同僚に対する見栄もあったでしょう。

ところがこれが意外とくせもので、自分や家族が思いがけず大病を患ったり介護を要するようになったりしたときに、ローンがあるがために身動きがとれず、賃貸住宅で暮らす人のように安い家賃の住居に柔軟に移ることができずに破たんしてしまう。

こういうケースはしばしばみられます。

(2)学費が払えたがために無理をして子どもを私立学校に通わせてしまった

私立の中高一貫校の学費を何とか払っていけるだけの収入があったがために、無理して子どもを私立に通わせ、生活が苦しくなってしまったというケースもよくみられます。

無理をしてでも将来少しでも収入の高い仕事に就けるようにとの親心はわかるのですが、藤田孝典さんは言います。

『最近では無理して私立中高・有名大学を卒業しても就職した会社が世間一般では一流企業と呼ばれているにもかかわらず内実はブラック企業で、うつ病になるとか、会社を辞めて再就職できないケースも多い。そうなると30歳前後の子どもを定年退職してから養わなければならず、親の年金頼みの子どもによって老後に経済破たんしてしまう例が珍しくありません』(『週刊現代』2015年11月6日号より)

(3)プライドのせいで定年後に就ける職がないため年金以外の収入が皆無

定年退職後に20年〜30年もの人生が待っている今の超高齢化社会では、リタイアした後でも年金以外の収入があった方が安心です。

ところが、現役時代に比較的高い収入を得ていたような人たちは中途半端なプライドが邪魔をして、「警備員なんかできない」「駐車場の交通整理など無理」のように“○○したくない”が先に立ってしまう傾向があります。

これに対し、比較的低収入だったシニアの人たちはつまらないプライドが無いため、倉庫管理員でも清掃作業員でも抵抗なくこなし、結果的に60代以降の継続的な収入では元プチ富裕層の方が少なくなってしまうきらいがあるのです。


いかがでしょうか。

上記の他にも、「一度手にした生活水準をどうしても落とすことができなかった」とか、「どうしても見栄があって第三者にSOSを発信することができなかった」といった傾向が指摘できるかもしれません。

こういった傾向は、保坂隆医師や吉本博昭医師らが言う“足るを知る”という心の持ち方ができていないということと関連するように思いませんか?

現役時代にそこそこ高収入であった人の方が老後破産に陥りやすいという傾向を“自業自得”のように評するのではなく、知足の心を持って生きないことには結局は誰しも穏やかで充実したシニア・エイジを過ごすことはできないのだということの教訓にすべきなのではないでしょうか。

【参考文献】
・『精神科医が教える50歳からのお金がなくても平気な老後術』保坂隆・著
・『一生お金に困らない老後の生活術』保坂隆・著
・『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』藤田孝典・著

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)
●モデル/TOYO

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