ただの気休めだった!? 出産前の“浣腸”が廃止されつつある理由3つ

【女性からのご相談】
臨月を迎えた妊婦です。私が通っている病院では、出産前の浣腸はしないと聞きました。

でも、友達が産んだところでは浣腸があったそうなのです。産むときにウンチが出るのは恥ずかしいので、できれば浣腸をしてほしいのですが、しない病院もあるのはなぜなのでしょうか?

a 分娩前の浣腸は根拠のないおまじない

出産の際のお通じに関しては、ほとんどの初産婦さんたちがとても気にされます。分娩前に浣腸をすれば大丈夫と信じている人も多いです。

でも実は、それは根拠のないおまじないのようなものです。今日は具体的に浣腸についてお話ししますね。

浣腸の基礎知識

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出産前に限らず、便秘がちな人であれば日常的に浣腸を使う人もいる反面、全く馴染みがないという人もいるはず。ここでは浣腸の基本的な使い方等について紹介します。

浣腸の目的

浣腸は、下剤や便秘薬と同じように、体に刺激を与えることで強制的に排便させるためのものです。

固くなった便を柔らかくし、腸の動きを活発にすることで頑固な便秘にも効果を発揮します。

便秘薬が飲めない小さな子どもにも使用できるため、幅広い人に使えるというメリットがあります。

浣腸の使い方

冷たいまま使用すると腸に刺激となってしまうので、浣腸をする前に40度前後のお湯で温めて使うと良いでしょう。

使い方は、

(1)薬剤が入った部分を押さないようにキャップをはずす
(2)浣腸のノズルをゆっくりと肛門部に挿入する
(3)容器を押しつぶしながらゆっくりと薬液を注入する
(4)3〜10分ほど待ち、十分に便意が強まってから排便する

という流れになります。

急に便意を催すこともあるため、トイレで行うのが一般的です。

浣腸の副作用

浣腸は無理やり排便させるため、使いすぎると自然に排便する感覚が失われてしまい、浣腸をしなければ排便できなくなる恐れがあります。

浣腸自体の効果も使うほどに薄まっていくため、いざ本当に必要なときに効かないということにもなりかねません。

また、浣腸にはグリセリンが使われています。浣腸を挿入する際に腸を傷つけてしまうことがあり、これによってグリセリンが血液に入り込むと腎不全を起こすことがあります

浣腸が良いと信じられていた理由3つ

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一昔前までは、陣痛が始まったらまず浣腸をするというのが習わしでした。これには理由が3つあります。

(1)直腸にある便を排出することで、産道を広くすることができると思われていた

赤ちゃんが通ってくる産道と、お通じがたまっている直腸は、薄い筋肉の壁を一枚隔てただけで隣り合わせになっています。

ですから、お通じがたまっていると産道がうまく広がらないと信じられていたわけです。

(2)赤ちゃんが産まれる直前の排便を防ぐことで、清潔な処置ができると思われていた

分娩前に排便を済ませておけば、いざ赤ちゃんが出てくるというときに排便してしまう心配がなくなり、赤ちゃんが便に触れるリスクを避けることができます。

ひいては、赤ちゃんの感染症のリスクを下げることができると信じられてきました。

(3)浣腸自体が刺激になり、陣痛を促進すると思われていた

浣腸は腸ぜん動(腸の動き)を促しますから、これが隣り合わせになっている子宮にも影響して陣痛が促進されるという説もありました。

浣腸が廃止されつつある理由3つ

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日本でもやっと浣腸をしない病院が増えてきました。これはとても良い傾向であると思います。

と言うのも、最近の研究結果で、浣腸をすることによるメリットはないということが分かってきたからです。

(1)浣腸は分娩時間の短縮には影響しない

「浣腸をすることによって産道を広げられる」という説や、「陣痛を促進できる」という説は研究によって否定されています

たとえ直腸に便がたまっていたとしても、通常のいきみで排出されますし、赤ちゃんの頭が下がってくるときに自然に押し出されます。

また、陣痛の機序は浣腸による刺激とは全く関係ありませんので、陣痛が促進されることはありません。

(2)赤ちゃんに対する感染のリスクは同じ

浣腸をしてもしなくても、赤ちゃんの感染リスクは同じであることが分かっています。

そもそも赤ちゃんの感染の理由は、出生後に母親の便に触ってしまうかどうかではなく、その他に要因にあります。

たとえば、破水してから出産までに何日もかかってしまったとか、母親が性感染症を持っていたなどです。

(3)産婦さんに不必要な苦痛をもたらす

陣痛だけでも十分に痛くて苦しい上に、更に浣腸による痛みを与えるわけですから、相当なメリットがなければ行われるべきではありません。

出産前の浣腸について知っておきたいこと

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助産師さんに任せてOK

『私は出産前に浣腸をするのが間に合わずに、いきんだ拍子にウンチが出てしまいました。ただ、助産師さんがガーゼで肛門を押えてくれていてすぐに拭いてくれたので、ニオイを感じることもありませんでした』

『赤ちゃんが出てくるときに一緒にウンチもしてしまったようなのですが、助産師さんは「よくあることですよ」と全く気にしていない様子だったのでホッとしました』

医者や助産師にとって、排便はあくまで生理的なもの

気になるのは仕方ないかもしれませんが、実際に「出てしまった」という経験をした人も多く、出産においては取るに足らないことだとすら言えるのではないでしょうか。

分娩中に排便してしまうのは何もおかしなことではない、という思いで立ち向かうことが大切なのかもしれません。

浣腸によって“被害”が大きくなることも

『浣腸をしたことでお腹がゆるくなり、中途半端な状態で分娩台へ。便が柔らかくなっていたので、いきんだタイミングで周囲に飛び散ってしまい最悪でした。あんなことになるなら浣腸をしない方が良かったと思います』

浣腸をすれば、当然便は柔らかくなり排出しやすくなります。

これで全て出てしまえば問題ありませんが、タイミングによっては全部出し切る前に分娩台へ上がらなければならないこともあります。

こうなると、いきんだときに柔らかくなった便が出てしまうことになり、通常の便以上に処理が大変になってしまうということにもなりかねません。

どうしても浣腸をして臨みたいという場合には、余裕を持って行うようにしましょう。

分娩中の排便で痔になることがある?

『浣腸をせずに出産したのですが、どうやらウンチが出ていたようで……。助産師さんが何度も紙で拭いていました。普通はお尻を押えて防ぐそうなんですが、出てしまっていたので拭き続けるしかなかったと……。おかげで痔になりました』

緊迫した状態では、お尻を拭く手に力が入ってしまうこともあるでしょう。

何度も拭いてということを繰り返せば、それが原因で痔になってしまうこともあります。

浣腸をするかしないかは、そのときの状況を見て総合的な判断をするしかないのかもしれません。

まとめ

「浣腸の基礎知識」や「出産前の浣腸に関する体験談」などについてご紹介してきましたが、いかがでしたか?

猛烈な痛みに襲われ体力を消耗する出産だけに、他のことに気を取られるのは避けたいものですよね。

「どうしても漏らしたくない!」と思い、気になってしまうというのであれば浣腸も選択肢として有効かもしれません。

とはいえ一番の目的は子どもを無事に産むこと。一刻を争う状況になれば、恥ずかしさは忘れてお産に全力で集中することが大切なのではないでしょうか。

【関連コラム】
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●ライター/Hillまゆ子(助産師)
●追記/パピマミ編集部

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