独立に思わぬ落とし穴が!? “美容師”に多い法律トラブル事例集

【ママからのご相談】
夫は美容師なのですが、子どもが幼稚園に入ったのをきっかけに独立し、小さな美容院を二人で始めました。以前勤めていたお店で、それなりに顧客がついていたので、一人ずつ丁寧にお話をし、大半のお客様は新しいお店に来てくれるようになりました。

すると先日、そのお店から「顧客情報を持ち出すのは違法なので、訴える」と連絡が来たのです。

夫は、顧客リストを持ち出したりしたわけではなく、口頭で事情を説明し、連絡先を教えてもらって新しいお店の案内をしたのですが、勤めていたお店で出会ったお客様である以上、顧客情報を不正に取得したということになってしまうのでしょうか?

a 「営業秘密」にあたるかどうかがポイントです。

ご相談ありがとうございます。アディーレ法律事務所弁護士の正木裕美です。

今回は、美容師業に関する法律問題についてご説明します。

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機密情報の不正持ち出しになる?

不正競争防止法では、事業者間での公平な競争を保護するため、「不正競争」すなわち、他社の商品をまねたり、他社の情報を不正利用する等の行為が禁止されています。

顧客情報は、会社の宝で、持ち出されると会社は大きなダメージを受けますから、「営業秘密を盗まれた!」と言われるかもしれません。

しかし、不正競争防止法でいう営業秘密とは、『秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの』とされています。

顧客情報は有用ですし、一般人に公然とは知られたものではないとはいえます。

しかし、従業員の中でも一定の限定された者しかアクセスできず、パスワード等で管理されている、秘密保持契約が結ばれるなどの厳重な管理がされていない場合は、秘密として管理されているとはいえない、つまり営業秘密にあたらず不正競争防止法違反とはならない、とされることもありえます。

今回はデータの勝手な持ち出しというわけではないですし、会社の了承を得て連絡先を教えてもらって案内をした結果、顧客がついてきたということですから、問題にはならないでしょう。

「誓約書」にサインさせられていたら?

労働者は、使用者に対して誠実に労務提供する義務を負っています。

その義務の一つとして、使用者と競合する企業等に就労しないといった競業避止義務があり、在職中の競業行為は認められません。

誓約書、就業規則等により、退職後も、会社の利益を守るために一定の正当性があって同業他社に就職しない等の競業避止義務を負わせる定めをすることがあります。

このような定めをすることは、退職者の職業選択の自由や営業の自由を制限するものなので、全てが有効とは考えられていません。

しかし、その従業員の地位、競業避止義務を負う期間や地域、禁止行為の範囲や代償措置の有無など、具体的な事情に照らし、法律上有効とされることはあります。

もし違反してしまうと、会社に対して損害賠償義務を負うことがありますので、約束をしてしまう前に、約束の内容を吟味することも大切です。

美容院で起こりやすいトラブルって?

美容室でのカット等は、美容師は客の注文したカット等をして客の希望する髪型にする義務を負い、これに対して客は料金を支払う美容契約が成立します。

もちろん、年齢やコンディションなど個人差がありますから、客の希望と完全に一致させることはどうしても現実的に不可能です。

しかし、できるだけ客の希望に近づくよう、デザインに見合ったカット手法を採用すること、デザイン、カラー等に疑問が生まれたら客に確認する義務を負うと考えられますので、これらを怠り、明らかに切り過ぎてしまったときは、店は客に対して、債務不履行に基づく損害賠償責任を負うといえます。

また、美容師は、美容契約に基づいて施術をする際に、危険な刃物や染髪料等を使いますから、契約の性質上、客に対して生命や身体を害さない安全配慮義務も負っているといえます。

義務を尽くさず、不注意でたとえば薬剤のかぶれやはさみで皮膚を傷つけるなど、客の身体を傷つけたときも債務不履行となり、損害賠償責任を負うと考えられます。

いずれにせよ、実際に損害賠償請求をできるかどうかは、オーダーややりとりの内容等も踏まえ、ケースバイケースの判断になります。

ですから、客も美容師に任せっきりにはせず、おかしいと思ったらすぐに伝え、トラブルになる前に確認することが大切ですね。

まとめ

上記のとおり、美容師業を巡っては、開業前にも開業後にも難しい法律問題が付きまといます。

「顧問弁護士を雇うような規模ではない」「顧問弁護料が高額で払えない」といった声も聞かれますが、最近では、特に個人のお店や中小企業向けに顧問弁護士の低額プランなどを打ち出している弁護士事務所も多くあります。

転ばぬ先のつえとして、ご検討されてみてはいかがでしょうか?

●ライター/正木裕美(アディーレ法律事務所:愛知県弁護士会所属)

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