在宅医療のイロハ! 混同されがちな「訪問診療」と「往診」の違い

【女性からのご相談】
40代。4か月前から医療療養病床に入院していた80代の母が、来月からようやく在宅に戻れることになりました。

ただ、退院後もいろいろなケアが必要なため、入院中の病院の相談員さんに「自宅に戻ってからも“往診”をしてくださるお医者さんを紹介していただきたいのですが」と申し上げました。

すると、「“訪問診療”のことですね。わかりました。地元の医療機関の中からお母様に最適と思われるところをご紹介いたしましょう」と言われました。

“訪問診療”と“往診”は違うのですか? これまで、全く意識してこなかったのですが、今後は他人事ではなくなるため両者の違いを教えてください。

a 医師が診療計画に基づいて定期的に診療するのが“訪問診療”。患者さんの具合が悪いときにその都度出向く診療が“往診”です。

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

“訪問診療”と“往診”は、在宅医療の基本となる車の両輪のような業務です。ただ、今回のご相談にあるように、ときどきこの二つは混同して使われる場合があります。

在宅医療というものを正しく理解していただく上でも今回は両者の違いについてお話ししたいと思います。

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“訪問診療”と“往診”の違い

長期の入院生活を終えた患者さんが自宅でも平穏な療養生活を送ることができるように、あらかじめ立てた診療計画に基づいて定期的に居宅で診療することを“訪問診療”といいます。

おそらく、ご相談者様が相談員さんに紹介してほしかったのは、この“訪問診療”のことではないでしょうか。

一方、“往診”は患者さんの容態に急な変化があったときなどに医師がその都度出向いて行う在宅医療のことです。

以下では、東京の多摩地区で在宅医療を行うクリニックを開院されている内科医の先生の説明を参考にしながら、お話しを続けてまいりましょう。

現代のわが国における在宅医療(訪問診療・往診)の社会的意義

『ここに興味深い統計があるのですが、わが国では1950年代においては国民の約8割が自宅で亡くなっていました。ところが、超高齢化社会の到来と医療技術の進歩・医療機関の整備にともなって2008年の時点では国民の約8割が病院で亡くなるようになったのです。

このような傾向を前にして、国としては限りのある税収の多くが社会保障費、とくに急激に伸びつづける高齢者の長期入院の医療費に支出されるのをある程度まで抑制する必要から、在宅医療を推進するようになってきているのです。その在宅医療を担う診療の二本柱が訪問診療と往診であるということです』(40代男性/都内在宅療養支援診療所院長・内科医師)

このような政策的な意味合いの他にも在宅医療には、「大切な家族の顔を見ながら住み慣れた家で穏やかに暮らしていきたい」という高齢者の希望に応えるには最も適した医療だという側面があります。

医療は、それを受ける場所によって外来医療、入院医療、在宅医療の3つに分かれるのですが、高齢者が“生き甲斐”を失わずに受けられる医療形態という意味では、やはり在宅医療に優るものはないでしょう。

なお、参考までに申し上げますと費用的な面では、在宅医療は入院するよりは安いですが、外来に通うよりは高くつくのが普通です。

“在宅療養支援診療所”の表示がある診療所で訪問診療を受けると安心

さて、このような在宅医療ですが、ご相談者様がいま気になることは、「訪問診療については分かったけれど、いざ急に母親の具合が悪くなったときには往診もしてもらえるのだろうか」ということではないでしょうか。最後にそのご心配にお答えしておきましょう。

『2006年の健康保険法の改正で、“在宅療養支援診療所”が診療報酬上の制度として整備されました。訪問診療を受ける場合は、この表示がある診療所だと安心です』(40代男性/前出・内科医師)

この在宅療養支援診療所とは、次の5つの要件を満たしている診療所のことです。

(1)主治医が365日×24時間対応で連絡を受け、緊急往診することができる
(2)主治医が対応できない場合は連携医が往診することができる
(3)24時間対応で訪問看護ステーションの看護師の訪問看護を受けることができる
(4)緊急時に入院先の手配を行うことができる。入院できる病院が確保されている
(5)他科の医師や歯科医師、薬剤師、理学療法士、ケアマネージャーなどと連携している

このような要件を満たしている診療所は“在宅療養支援診療所”と呼ばれ、医療を受ける患者の家族としては、安心です。

ただし、在宅療養支援診療所でなければ訪問診療や往診ができないということではありませんので、誤解のなきようにお願いいたします。

ご相談者様の場合でしたら、相談員さんが紹介してくださる在宅医療の診療所の主治医に直接尋ねてみるのがよろしいのではないかと考えます。

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

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