80歳の母が大暴れ!? 「せん妄」と「認知症」を見分けるポイント5つ

【女性からのご相談】
40代です。このあいだ入院が長引いている80歳の母のお見舞いに行ったら、急におかしなことを言うようになっていました。

激しく興奮し、何を話しかけてもこちらの言うことはろくに聞かずに意味不明なことを言いつづけ、こちらが困惑していると苛立ち、叱責してくるのです。

認知症を発症してしまったかと思ったのですが、いつからそうなったかがはっきりしているところが認知症とは明らかに違うため、いろいろ調べたところ“せん妄”という状態にいちばん近いような感じを受けました。

せん妄は認知症とは違うのですか? せん妄は治るのですか? 教えてください。

a せん妄は認知症と違って治療可能な例が多いため、両者を鑑別することが重要です。

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

ご相談者様が調べられた通りで、「何月何日からおかしなことを言うようになった」とか、「入院が長引いているうちにおかしなことを言うようになった」という状況から考えると、お母様のその症状は認知症ではなく『せん妄』が疑われます。

せん妄は認知症と違い、短期間で回復することがあるため認知症との鑑別が重要になってきます。

都内にある内科・精神科病院で副院長を務めている医師にうかがったお話をご紹介しながら、お答えさせていただこうと思います。

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せん妄と認知症の違い5つ

『せん妄はその異常な言動から、認知症と間違われてしまうことがあります。しかし、認知症は主に記憶が侵される障害であるのに対し、せん妄は基本的には意識障害であり、せん妄と認知症は異なる疾患です』(50代男性/都内内科・精神科病院副院長、医師)

さらに、医師はせん妄と認知症の違いを以下のように5つ挙げています。

(1)発症期間が特定可能

認知症の発生は漸進的であるのに対し、せん妄の発生は突然で明確な開始点を持ち、発症時期が特定可能である。

(2)症状が長く続かない

認知症の症状の持続時間は永続的であるのに対し、せん妄の症状の持続時間は数時間・数日から数週間である場合が多い。

(3)原因が脳疾患じゃない

認知症の原因はアルツハイマー病や脳血管性認知症のように通常は慢性脳疾患であるのに対し、せん妄の原因は長引く入院などによる脱水や低栄養等に由来する体調不良、肝機能障害などの一般臓器の疾患、ある種の薬物の使用または中止、不安や痛みや環境変化から来る心理的ストレスなどの、他の病態であることがほとんどである。

(4)治療可能である

認知症の経過が緩徐進行性であるのに対し、せん妄の経過は通常は可逆的である。

(5)意識が障害されている

認知症においては意識は概ね正常であるのに対し、せん妄においては意識が障害されている

せん妄は70歳以上の入院患者では15~50%の人に発生します

このように医師の説明を聴くと、ご相談者様がそう考えられたようにお母様は認知症ではなくせん妄を発生していたことが疑われます。

おそらくご相談者様がお見舞いに行かれた直後の回診の際に医師もそれに気づき、しかるべき対処をされたであろうと推察されます。

このようにせん妄の場合は認知症と違って原因となっている異常の処置を迅速にすることによって治癒する例が多いのです。

一時的に発生する状態であるため、わが国における総患者数を特定することは難しいようですが、一説によると70歳以上の入院患者では15~50%の人にせん妄が発生すると言われています。

入院中の高齢者にせん妄が生じると、入院中に合併症が起きる割合が高まるようです。前出の医師によれば『せん妄が無い患者さんと比べると最大で10倍高くなる』とのことなので、看過できない問題です。

そのため、高齢の入院患者の家族は、病院のスタッフにせん妄が生じるのを予防するための協力を求めることができるようになっています。

例えば、定期的に声かけをしてもらい、特に高齢の患者さんの孫やひ孫の写真を病院スタッフが見ながら、「お孫さんのお名前は何ていうの?」とか、「いま何歳になったの?」のような会話をすることもせん妄の再発予防に大きな効果があるようです。

また、患者さんが食事を取れず点滴で栄養を採っているような状態であっても、柔らかいゼリーやプリンなどを食べさせたり牛乳を飲ませたりしてもらって、栄養補給と同時に「食べる楽しみ」を感じられるようにしてもらうことも、せん妄の発生を防ぐのに有効なようです。

『じっと固定されて身動きのできない状態や、おいしいものを食べることができない状態が長引くことは、ストレスに起因するせん妄発症の大きなファクターとなる』と、前出の医師も断言していました。


ご相談者様、このようにせん妄は認知症と違い、治療が可能な疾患です。

たまたまお見舞いに行かれた日にお母様がせん妄を発症していたからといって、ご相談者様が落ち込んでしまってはいけません。

上述した医師による“せん妄と認知症の違い”を今一度お読みいただいて、せん妄を正しく理解し、希望を持ってお母様のサポートを継続していただければうれしく思います。

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

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