死に至る病ってホント!? 神経の難病「多発性硬化症」とは

【女性からのご相談】
30代女性です。ゲーム関係の仕事をしている夫が、半年ほど前から目の不調を訴えていました。しばらくして、今度は「手足がしびれる」「手足に力が入らない」「ふらつく」と言うので神経内科を受診したところ、多発性硬化症と診断され、今とても混乱しています。

夫は延命用の装置を使わないと生きられなくなるのでしょうか? もう、仕事はできないのでしょうか? 担当医の先生は「そんなことはありませんよ」とおっしゃいますが、不安で不安でたまりません。本当のところはどうなのでしょうか。

a 必ずしも死に至る病というわけではありません。

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

多発性硬化症は、脳や脊髄といった中枢神経の白質(はくしつ)に、手で触ってもわかる多発性の硬い病変を起こしてくる神経難病です。厚生労働省の特定疾患に指定されていて、現代の医学ではまだ十分に原因が解明されていません。

症状は患者さんによって異なるため、神経内科で専門医の丁寧な診察を受けないと診断を確定できません。

多くの患者さんは生涯にわたってつらい症状とずっとつき合っていくことにはなりますが、ほとんどの場合は再発性であり、筋萎縮性側索硬化症のような進行性の難病ではありません。

都内の多摩北部で神経内科クリニックを開業する神経内科医師にうかがったお話を参考にしながら考えてまいりましょう。

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多発性硬化症とはどのような病気か

『多発性硬化症は欧米を中心に世界全体では300万人以上の患者さんがいる、神経内科の領域では最も重要な病気の一つです。欧米諸国に比べれば少ないものの、日本にも1万人以上の患者さんがいるものとみられています。症状が治まっている寛解期(かんかいき)と再発期を年に何度も繰り返し、そのたびに入院が必要となる場合が多いのですが、中には症状が完全に治る患者さんもいます。

放置して何の治療も受けずにいると筋委縮が起き、脳委縮も進行して認知機能障害(記憶量や理解力の低下)が現われてくることもありますが、そうでない限り必ずしも“死に至る”という病気ではありません』(50代男性/都内多摩北部神経内科クリニック院長・神経内科医師)

“有名チェロ奏者の早世”が誤解を生んでいる可能性も

多発性硬化症が“死に至る病”と誤解されていることの大きな理由の一つに、英国の有名な天才女性チェロ奏者であったジャクリーヌ・デュ・プレの存在があります。

彼女は16歳で華々しくデビューしてからわずか10年後の1971年、26歳のときに指先の感覚の異常に気づき、その後多発性硬化症と診断されチェロ演奏家を引退します。

引退後はチェロ教師として後進の指導と育成にあたり、1975年にはエリザベス女王からOBE勲章を授与されました。しかし、1987年、多発性硬化症の進行によって42歳の若さで亡くなります。

筆者は当時20代後半だったため、彼女が亡くなったときに世界中に走った衝撃をよく記憶しています。あのとき、世界中の多くの人々が「多発性硬化症というのは死に至る怖い病気だ」と感じたことは、紛れもない事実です。

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多発性硬化症の治療法

多発性硬化症は厚生労働省の特定疾患で指定難病にもなっているため、医療費が免除されています

多発性硬化症の急性期の治療法としては、炎症を早く抑制して回復を促進するために、ステロイドを大量に点滴する『ステロイド・パルス療法』を行うことが一般的です。

再発を予防するための治療法としては『インターフェロンβ製剤』という注射剤を用いたり、寛解期になっても治まらない症状には、例えばうつ症状には抗うつ薬など、筋肉の異常な動きには筋緊張緩和薬などを用いて対症療法を行います。

近年重要視されているのは、多発性硬化症による身体機能の低下を防ぎ、維持させていくための状況に応じた“リハビリテーション治療”です。

『リハビリはすぐに効果が現われるとは限りませんが、コツコツと継続することによって必ず効果を実感できるようになる、“患者さん本人の努力が報われる”治療法であると言うことができると思います』(50代男性/前出・神経内科医師)

多発性硬化症でほぼ寝たきりでも建築士・建築会社社長として働いている人が実在します

いかがでしたでしょうか。ご相談者様が多発性硬化症という病気の予後について正しく理解していただき、今後の生活に関して必要以上に不安がることはないのだと考えていただければ幸いです。

おしまいに一つ、筆者の体験談を。以前ある医療福祉大学の附属病院で、事務方の管理職として勤務していたころのことです。

顔なじみの患者さんで、長きにわたって多発性硬化症を患う、当時40代の男性がいらっしゃいました。あるとき、車椅子で自販機のジュースを買おうとしていたその患者さんとお話ししたところ、彼は退院後も自宅のベッドで寝たきり状態でありながら、建築士としてパソコンで設計作業をし、3人の従業員を雇う建築会社の社長だったのです。

おいしそうにジュースを飲みながら、「これもまた人生ですよ」と、おっしゃっていました。


ご相談者様、旦那様がなさるゲーム関係のお仕事も、多発性硬化症とつき合いながらできる可能性があるのではありませんか?

人生というものは、ものの考え方次第でずいぶんと変わってくるものです。旦那様とご相談者様のこれからの人生が、愛に満ちたステキなものであり続けることを願ってやみません。

【参考リンク】
MSはこんな病気です | 多発性硬化症.jp

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

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