油断すると即アウト!? 寿命を長くする「適度な飲酒量」の目安

【パパからのご相談】
50代。結婚が遅かったこともあり、子どもがまだ小学校の低学年です。先日、同世代の有名な女優さんが肝内胆管癌で亡くなりショックだったのですが、ワインをはじめお酒がとても好きだったようです。10年以上前に40代の若さで肝臓疾患で急逝した大好きだったフォーク歌手の男性は、やはりお酒をものすごく飲まれたと聞きます。

そういえば、妻の父親や私の亡父の義弟など90歳になっても元気な人たちは、みんなお酒を飲みません。そうかと思うと、「適度な飲酒は健康を増進し、寿命を延ばす」と言う医師の人もいます。飲酒は寿命を縮めるのか、長くするのか。一体どちらが本当なのでしょうか? “縮める”のが本当なら、子どものためにもお酒はやめなければいけないかなと思っているのですが……。

a 過剰な飲酒は寿命を縮め、適度な飲酒は寿命を長くしますが、お酒を飲む人の大半が“適度を超えている”のが実態です。

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

結論から申しますと、過剰な飲酒は寿命を縮め、適度な飲酒は寿命を長くします。しかし、“適度”とは米国人女性の場合で、1日にビール300ml以内程度のことを指しますので、いわゆる“飲む人”の大半はそれでは物足りない。つまり、お酒を飲む人の多くは“適度を超えている”のが、実態ということになります。

筆者の古い友人でもあり、若いころから飲酒による臓器障害の問題に関心を持ち今ではわが国におけるその分野の研究のトップランナーたちの1人に数えられている、横山裕一(よこやまひろかず。慶應義塾大学保健管理センター准教授。消化器内科医師。医学博士)という医師がいます。今回は、その横山医師が2010年に著した『飲酒の功罪』というリポートに沿って、お話しを進めてまいりましょう。

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飲酒の功罪の『罪』~過剰飲酒は全身の臓器障害を引き起こし、健康を損ねる~

ご相談者様が例に出された女優さんやフォーク歌手の男性のように、40代や50代で肝臓障害をはじめとする臓器障害が原因で命を落とされてしまった方は、残念ですがやはり明らかな過剰飲酒によって健康を損ねられた疑いを排除することができません。

『過剰飲酒は肝臓障害、膵臓障害、消化管疾患、高血圧、糖尿病、脂質異常、高尿酸血症、筋肉障害、神経障害、精神病、ホルモン異常、皮膚疾患、発癌、精神障害の原因となる』(横山裕一/消化器内科医師、医学博士)

横山医師は、上記のように断言し、英国の医師Thomas Fullerの“アルコールに溺れ命を落とした人の数は多い”という意味の言葉を紹介しながら、“過剰な飲酒が人間の健康を損ね寿命を縮めることは、長年にわたる近代医学の研究結果から明らかである”という主旨の警鐘を鳴らしています。

飲酒の功罪の『功』~適度な飲酒は健康を増進するが、“適度”の定義が難しい~

一方で、多くの医師たちによって、適度な飲酒が健康を増進し寿命を長くする可能性が想定されていることもまた事実です。わが国では、古くは室町時代や江戸時代の書物の中にも、飲酒には疲労回復やストレス解消、さらには寿命を延ばすなどのさまざまな“効用”があるといった記述がみられます。

前出の横山医師は次のように述べています。『2005年には、本邦でも、20g程度までの飲酒が寿命を長くすることが示された。その背景として、適度な飲酒が種々の疾患の発症を予防する可能性が想定されている』(前出・横山裕一医師)

また、適度な飲酒が健康を増進し寿命を延ばす具体的な例として、

・Mukamalらの研究によると、1日12g程度の適度な飲酒によるHDLコレステロール増加作用は動脈硬化の進展を防ぐ
・適量のワインを飲むことに伴うポリフェノールの摂取は、抗酸化作用を発揮しアンチエイジングに寄与する
・1日約36g以内の適度な飲酒は、飲酒のインスリン抵抗性改善効果などから糖尿病発症予防効果がある

などの事例を列挙しています。

それでは、一体どの程度の飲酒量が“適度な飲酒”量と言えるのでしょうか? その点について横山医師は、『万人共通の適正飲酒量を定義するのは難しい』と述べており、その主な理由として“アルコール代謝酵素の遺伝子の人種差や個人差”や“胃の形状などの個人の解剖学的な違い”、“個人の生活習慣の違い”などを挙げています。

ただしこれだけでは、ご相談者様の疑問に明確にお答えしたことにはならないでしょうから、最後に国内外のさまざまな研究結果から推定される大まかな適正飲酒量をお示しして、しめくくりたいと思います。

適正飲酒量は、

・日本人(男女ともに)……1日ビール500ml以内
・米国人男性……1日ビール600ml以内
・米国人女性……1日ビール300ml以内

とされています。“飲む人”の大概はアウト! になりますね。

横山医師によると、『わが国の厚生労働省が2005年に示した“寿命を長くする適正飲酒量”は、エタノール換算で1日20gまでなのでビールでいうと1日500ml以内』だということです。わが国では、厚労省は男女による性差については示していません。

さらに、横山医師は、『米国農務省が定めた“適正飲酒量”は、男性でエタノール換算1日24gなので、ビールでいうと600ml以内、女性の場合だとエタノール換算1日12gなので、適正飲酒量はビールでいうと1日300ml以内でしかない』ことを紹介しています。


いかがですか。この物差しで測る限りにおいては、俗に言う“お酒を飲む人”の大半は、適正飲酒量を超える“アウト”の人だと言うことができます。ご相談者様が推しはかられたように、ワイン好きの女優さんにしても大酒豪のフォーク歌手の男性にしても、やはり適正な飲酒量をはるかに超えて飲まれていたのであろうということが容易に推測できるのです。

横山医師は、おおむね上述した程度の適正飲酒量を、1日置きくらいのペースで飲まれるのが最も寿命を長くする飲み方ではないかといったニュアンスのことを述べており、リポートの最後を次のようにしめくくっています。

『平均すると1日当たりの飲酒量が健康増進域でも、大量に飲酒する日と飲酒しない日が混在すると、飲酒による健康増進作用は期待できないようである』(前出・横山裕一医師)

ご相談者様。適正飲酒量の専門家である医師の見解を参考になさって、どうせ飲むなら“健康を増進し、寿命を延ばす”飲み方をお試しになってみてください。

【参考リンク】
飲酒の功罪(健康情報シリーズ) | 慶應義塾大学保健管理センター

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

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