症状も本物ソックリ!? 自分が重病だと思い込む「心気症」への対処法

【ママからのご相談】
40代。中3の息子のことでご相談です。息子は“心気症”で、「自分は既に重篤な病気にかかっている」と思い込み、異変の様子がますますその病気特有の症状に近づいてくるのです。幸い、そのたびに適切な治療を受け、事なきを得てきましたが、ネット上の記事で医師のかたが言っていた、「心気症の人はまれに本当に心配した通りの病気になっていく場合もある」という言葉が気になります。

a 本当に症状が出てきたら、症状に合理的に立ち向かいましょう。

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

心気症は、一般的には成人期の早期に発症することが多く、子どもにはまれな病気です。しかし、ご相談者様の息子さんは中3ということなので、ある意味では成人期の早期にさしかかっている年齢だと言えなくもありません。また、心気症の患者さんには近親者の病気などから、「自分もその病気である」と深く信じ込んでいるケースがしばしば見られ、その原因が患者さんの生きてきた文化的深層と関わっていることも多いため、概して治療が難しい病気だと言えます。ご相談者様がネット上でご覧になった「本当に心配した通りの病気になっていく」といった例は私も複数の医師から確認しております。

しかしながら、本当にその病気の症状が出ても絶望することは禁物です。私が確認を取った複数の医師たちは異口同音に、「本当に症状が出てきたらもう無用な心配をやめ、実際にあらわれている症状に合理的に立ち向かっていくしかない」と言っています。

ここではその医師たちの中の一人である心療内科医が実際に関わった症例に基づいて記述をすすめさせていただきます。

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あらわれた症状を専門に扱う診療科目を受診し、症状と逃げずに立ち向かう

『私が眼科の医師から診察を依頼されたのは、“緑内障”を恐れるあまりに本当に電灯の周りに虹の輪が見えるようになり、左右の眼球が外側へ離れるほど眼圧が上昇してしまった10代後半の男性の患者さんです。緑内障を恐怖していた段階では、眼科医から違うと言われてもけっして納得しなかったそうなのです。しかし、実際に緑内障に特有の症状が出て、「慢性緑内障の疑いがある」と診断されてからは投薬による眼圧降下治療を自分から積極的に受けていました。症状に改善がみられるようになってきたため、私のクリニックで精神療法を施し、半年ほどで快癒しました。

心気症で実際に症状が出てきてしまった場合には、心療内科的治療よりも、出た症状を専門に扱う診療科目を受診して症状と逃げずに立ち向かうことこそが、まず何よりも重要なのです』(50代男性/都内メンタルクリニック院長・心療内科医師)

根治療法のない難病と酷似した症状が発症したなら、恐れずに対症療法を受ける

『また、“進行性筋ジストロフィー”になることを恐れるうちに、ふくらはぎや太ももの筋肉が異様に肥大したり、その他の部位の筋肉が異常にやせ細ったりといった症状があらわれた20代の患者さんがいました。ただ、この患者さんの場合、血液検査上は進行性筋ジストロフィー症に特有の筋肉細胞の破壊が確認できなかったため、元同僚の神経内科医はあえて病名の診断を下しませんでした。そして、ビタミン剤や漢方薬、栄養剤などを処方したうえで、私のメンタルクリニックに紹介してきたのです。

青年は、神経内科医が病名の診断を下してくれないものの、「確かに症状は見られる」と発した言葉に納得して、栄養療法的な治療をすすんで受け入れたそうです。この青年の場合も、私の心療内科に来てからは薬物療法(精神安定剤や抗うつ剤など)も用いて半年ほどで、「もう大丈夫です」と言って来なくなりました』(50代男性/前出・心療内科医師)

心気症の場合、身体症状が出てからの方が対処しやすい面がある

このように、心気症の患者さんは、“自分としては身体的症状が既に発症しているという確信を持っている”がために、医師が、「診察および検査の結果、身体に器質的な疾患はありません」などといくら言ったところでけっして信じません。むしろ、別の医師による診断を求めて次々に違う病院を受診する(いわゆる“ドクターショッピング”)傾向があるのです。つまり、ある意味では実際に症状が出てしまってからの方が、医師としても患者としても胸襟を開いて相対しやすいという特徴があります。心気症の患者さんは、実際に発症していることを医師に認めてもらうことで、「やはり自分は正しかった」と納得し、そこから医師とのコミュニケーションがかみ合いはじめるからです。

一方で、実際に症状が発症したということは、心気症患者さんが恐れていた器質的な問題点が現実のものになりはじめたということを意味する場合もあり、緑内障のケースにおける眼圧の数値の上昇なども、これに該当します。

かつて多く見られた女性の“想像妊娠”は、ある意味で心気症の一種とも言えます

昭和のころまで、わが国では妊娠・出産年齢の女性の間で“想像妊娠”という心身症状がよく見られました。想像妊娠とは、妊娠に対する過度の願望や過度の恐怖が原因で、実際には妊娠していないにもかかわらず、妊娠におけるさまざまな肉体的変化を起こす疾患です。現代では、妊娠検査薬や超音波検査などの発達で早期から妊娠の有無を確定できるようになったため、患者さんは減少し、あまり見られなくなりました。

この想像妊娠が、ある意味で“心気症”の一種ではないかと医師は言います。

『近年のわが国で想像妊娠が激減したことは、“心気症の人が本当にその病気になっていくこと”に対処するヒントとなるかもしれません。昭和の時代と違い、今の女性たちは、「どうしても家の跡を継ぐ男の子を産まなくちゃ」といったような、妊娠への過度なプレッシャーを感じなくてもいい社会状況になりました。同じように、心気症の人が万が一治療が難しいその病気に本当になったとしても、対症療法がよりいっそう進歩し、車椅子を使って生活している人たちが何の違和感もなく暮らせるような社会状況が形成されれば、そもそも心気症になる人自体が減るだろうと考えられるからです。

しかし、現実には、心気症は現代医学を用いても治療が難しい病気です。前述したように、恐ろしい病気であると信じ込む原因が、患者さんが生きてきた環境の構造に根ざしている場合が多いため、その不安は容易には解消されるものではありません。

ご相談者様のように、心気症の息子さんをその身体症状を扱う分野の専門医と精神科系の専門医(小児心療内科など)の両方に連れて行き、心身両面からの治療を受けるというのが正に、現時点の医療で考えうる最上の対処法であると思います』(50代男性/前出・心療内科医師)

【参考リンク】
(10)心気症について | 日本小児心身医学会

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

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