65歳からツラい!? 「国民健康保険」を滞納してはいけないワケ

【女性からのご相談】
30代です。籍は入れてませんが同い年の旦那がおり、彼はアルバイトをしています。夜仕事の多い私をいつもいたわってくれる優しい旦那ですが、ただひとつ心配なのはもう何か月も国民健康保険料を払おうとしないでいる(実際に彼の今の収入では払うのが大変ではあるのですが)ため、保険証が事実上使えなくなっていることです。前歯が虫歯になり目立つようになってきてしまっているのに、「実費じゃ高い」と言って歯医者にも行きません。こんなことでは困るので、注意した方がいいでしょうか?

a いろいろな意味で、旦那様には一度お役所へ相談に行くことを勧めるべきです。

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

国民健康保険(略称:国保)の保険料は2012年度の時点で既に5世帯に1世帯が滞納しています。特に、東京都のような非正規で働く人の数が多い大都市の滞納率は24.1%で、4世帯に1世帯が滞納しています。“国民皆保険”を掲げるわが国としては深刻な状況に陥っているのです。これは、長期に渡る保険料の滞納で実際には保険証を持っていない無保険者の人が少なからず存在し、病院に行くべき健康状態であるにもかかわらず放置しているからです。“個人の自由”と言ってしまえばそれまでですが、国民健康保険の制度は国民がお互いに支え合うことで成り立っているため、そうとばかりも言っていられません。旦那様にはいろいろな意味で、一度お役所へ相談に行くことを勧めるべきです。

この問題、単に旦那様ひとりの健康にかかわる問題だけではないという視点から、もう少し考えてみることにしましょう。

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人生でかかる医療費の半分は65歳以降のもの

ときどき、「トータルでみれば保険料を払うことは収支決算上ペイしない。人生のうちで病院に払う金額の合計は思ったほど多くはない」という趣旨のことをおっしゃるかたがいます。そのご意見は、一面の真理を突いているとも言えます。たしかに、丈夫な人の場合、若いうちに病院へ行く機会といえば、何年に一度か風邪をひいたときと虫歯が痛んで我慢できないときくらいかもしれません。「そのときだけ実費で医者にかかれば保険料を毎月払うよりコストは安い」という考え方も、若いうちは成り立ち得ます。しかし、人生のうちでかかる医療費は、実は65歳以上で生涯医療費の半分近くになっているのです。

都内多摩東部で内科医院を開業しているある医師は次のように言っています。

『平成22年度の厚生労働省“生涯医療費”統計によると、85歳まで生きると仮定した場合、65歳から必要な医療費は1,014万円にも達し、20代でかかる医療費の6~7倍。生涯でかかる医療費の半分近くにのぼります。つまり、若いころは、「必要なときだけ実費で医者にかかればいい」と思っていても、加齢による身体の衰えが訪れてくる65歳以上になると誰しもそのくらいの医療費が必要になってしまうことを統計が示しています』(50代男性/都内内科医院院長・内科医師)

“損得勘定”よりも“健康第一”

虫歯ひとつにしても、「命に関わりはしない」とお思いになるかもしれませんが、実は歯の不調は全身に多大な悪影響を及ぼすことがわかっています。野性の動物が健康な歯を失えば、命に関わる事態を招くことがあります。ヒトの場合も、歯の健康状態が悪化するとまともな食事ができなくなるため、生命を維持するためのバランスがとれた栄養を摂取できません。

ここは、ご相談者様から、「損得勘定よりも健康第一だよ。お役所に行って“短期保険証”を発行してほしいって、相談しておいで」と旦那様に勧めてさしあげてはいかがでしょうか。

保険料の滞納期間が6か月以上1年未満であれば“短期保険証”を交付してくれます

ご相談者様の旦那様は、まだ保険証を取り上げられる状況には至っていないとのことですから、滞納している期間がまだ1年には満たないのであろうと思います。

この段階であれば“まだ間に合う状況”であると言えます。お住まいの市区町村の保険年金課の窓口へ行って、ざっくばらんに相談してきましょう。旦那様が、「毎月○千円程度なら何とか払える」と思う金額を提示し、払っていくことで、自治体は“短期保険証”を発行してくれます。この短期保険証は有効期限が1~6か月で、通常の保険証よりも短い保険証です。しかしながら、一般の保険証と同じように医療機関で3割負担で受診することができます。

たとえ収入が少なく保険料の支払いが大変でも、旦那様ご自身の健康と国民皆保険の制度維持のために、ぜひとも旦那様にできる範囲の保険料納付をご相談者様から促してさしあげてください。

国保の制度を、みんなで支え合って維持しましょう

前出の内科医師はまた、次のようにも述べています。

『時代の流れとともに国民健康保険の加入者層は変化し、制度発足当初に加入者層の中心であった“自営業者”や“農業従事者”は激減してしまいました。現在では、国民健康保険加入者の半数近くは、年金生活の高齢者や失業中の人などのいわゆる“無職者”で占められています。職に就いている人でも非正規労働の人の割合が多くなりつつあります。それでも、2011年時点で日本の人口の30%は国保加入者であるため、財政的な基盤が揺るぎつつあることは大問題なのです。

最近でこそ“オバマケア”政策によってユニバーサルヘルスケア制度の改善が見られつつある米国では、つい数年前まで、「骨折して手術を受け1日入院したら(日本円でいうと)180万円を請求された」といった実例が少なからず存在しました。私たち日本人の感覚からすると信じがたい状況です。こういった状況には米国の医療が自由診療を基本としていることが大きく関与しているとはいえ、「一般の人がお医者さんにかかろうと思えば、数千円以内で誰もがちゃんとした医療を受けることができる」社会の土台をなしているわが国の国保と社保(被用者健康保険)を中心とした“国民皆保険”の制度は、やはり誇りに思えてくるのです』(50代男性/前出・内科医師)


保険料は主に前年の所得に基づいて算出されるため、所得が多かった人はより高額の保険料を請求されています。つまり、所得が多かった人も少なかった人も、皆で“国民皆保険”の制度を支え合っているわけです。とくに子どもたちのことを考えると、親(保護者)が“社保”に入る人ばかりではありませんから、国保の財政基盤が揺らぐことは、これから生まれて来る子どもたちのためにも、けっしていいことではありません。

旦那様の保険料の滞納は、旦那様の問題だけでは済みません。でも、ご相談者様は、まず何よりも旦那様の健康のために、一度お役所に相談に行くことを勧めてください。長期滞納で保険証を取り上げられたまま中高年になり、医療費を払えないために病気を放置して死亡に至る事例は相次いでいます。国保の保険料の支払いが厳しいときは、開き直らずにお役所へ行って相談することです。

【参考リンク】
平成23年版厚生労働白書(本文) | 厚生労働省

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

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