省略してもOK? 入社前に必要な“健康診断”11項目とマメ知識

【男性からのご相談】
20代です。大学卒業後も正社員として就職できず、4年半のあいだホームセンターでアルバイトをしてきました。

子どものころから図画工作が好きで、先日郷土玩具を製作している小さな会社で職人の後継者として採用してもらうことができました。

社長さんから、「正社員採用だから健康診断を受けてもらうんだけど、費用は会社でもつので、かかりつけのクリニックで入社前に受診しておいてほしい」と言われました。

こういう場合、どの程度の内容の健康診断を受けておけばいいのでしょうか?

a 法定健康診断項目をクリアしていれば大丈夫

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

ご相談の件ですが、労働安全衛生規則第43条では、事業者は労働者を雇い入れた際に健康診断を行うことが義務づけられており、また44条では1年以内ごとに1回、定期的に健康診断を行うことが義務づけられています。

診断項目は具体的に定められており、この法定診断項目をクリアしてさえいれば、たとえば百貨店や郷土博物館などの現場に出向して実演作業をする際に相手先の企業や団体から健康診断をちゃんと受けているかどうかを問われた場合でも大丈夫です。

都内で内科クリニックを開業する医師に伺った、“診断項目”の詳しい内容などについてご紹介します。

入社前の健康診断11項目

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前述の労働安全衛生規則第43条は、“雇入時の健康診断”として『事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない』と、11項目の診断内容を定めています。

雇い入れ時の健康診断では検査項目の省略は認められていないので、11項目の全ての内容についてきっちりと診断を受けることになります。

『雇用時の健康診断項目は次の11項目に分かれています。

1……既往症及び業務歴の調査(問診・聴診)
2……自覚症状及び他覚症状の有無の検査(問診・聴診)
3……身長、体重、腹囲、視力(裸眼・矯正)及び聴力(オージオメーターによる1,000Hz及び4,000Hzの音に係る聴力)の検査
4……胸部エックス線検査(直接撮影のみ)
5……血圧の測定
6……貧血検査(赤血球数、血色素量=血液検査)
7……肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP=血液検査)
8……血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド=血液検査)
9……血糖検査(グルコース=血液検査)
10……尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
11……心電図検査(安静時心電図検査)

来院された際に、「就職が決まったので健康診断をしてください」と申し出ていただければ漏れなく検査いたします。念のため、来院される前に“この他、特に必要な項目があるかどうか”を就職先に確認しておいていただけると確実です』(50代男性/都内内科クリニック院長・内科医)

就職後の定期健康診断では省略できる項目もある

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無事に雇用時健康診断も済んでひとたび郷土玩具職人としての歩みをはじめたなら、1年ぐらいの時間はおそらくあっという間にたってしまうことでしょう。

そうなると今度は定期健康診断を受診しなければなりません。

『定期健康診断の法定診断項目はおおむね雇用時健康診断のときと同じですが、場合によっては医師の判断により省略することができる項目もあります

たとえば、20歳以上の者の身長はそんなに伸び縮みするものでもないため雇用時健診をちゃんと受けているなら省略可能。胸部エックス線検査は特定の年齢やじん肺法に基づくじん肺健康診断の対象に該当せず、感染症法に基づく結核に係る定期の健康診断の対象とされている施設等の労働者でない者については省略できます。

また、痰(たん)を採取して病的成分を顕微鏡で観察する喀痰(かくたん)検査は定期健康診断の診断項目の中に入っていますが、胸部エックス線検査の省略基準に該当する者については医師の判断で省略することができます。

血液検査も、過去の健診結果や問診による自覚症状・他覚症状の有無などを参考に、医師の判断で省略することができます。腹囲の測定も同様です』(50代男性/内科医)

もっとも、省略の可否の判断は健康診断を実施する医師がするものですから、健康診断を受ける方としては、年に一度は雇用時健診と同様の内容の定期健診を受ける必要があると認識しておいた方がいいでしょう。

もし普段から通い慣れている行きつけの病院がある場合にはそこで受けるのが良いでしょう。

健康診断は、検査した項目を数値で見て判断することになりますが、ベテランの医師であれば検査の正確性も上がりますし、数字に表れないようなわずかな異常を発見してもらえる可能性もあります。

せっかく検査を受けるわけですから、経験豊富な信頼できる医師に検査してほしいものですね。

学校の健康診断が入社前健診の代わりになる?

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会社に入社する際には、原則として指定された方法で健康診断を受ける必要があります。

しかし、大学生であれば1年に1回、毎年健康診断を受けているはずですよね。会社によっては、この診断結果を会社に提出することでOKとするところもあります。

学校で検診を受けた“時期”と“検査項目”を入社予定の会社に伝え、必要な項目を満たしていれば個別に健診を受ける必要はなくなるでしょう。

もし項目に不足がある場合には、抜けのある検査だけを病院で受けることで提出が可能になります。

入社前の健康診断を受ける場所

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会社から病院を指定される場合とされない場合がある

健診については、会社が特定の病院を指定してそこで受けさせる場合と、特に指定されず自分で好きなところに行って検査を受ける場合があります。

病院が指定されるだけでなく日時についても指定する会社があるため、しっかりと確認するようにしましょう。

指定されていない場合でも、多くの病院で健診を受け付けているので心配はいりません。

どこで受けても決まった項目を行うため、「入社前の健康診断を受けたい」ということを伝えるだけでスムーズに受けることができます。

もし会社から特別に指定された検査項目がある場合には、事前に伝えておく方がいいでしょう。

就職前に会社に出向いて行うこともある

会社によっては、内定者を集めて一斉に健康診断を行うところもあります。

これは、健診の効率化を図ったり、受け忘れなどで漏れがでることを防止したりする目的があるようです。

中には悪い検査結果をごまかそうとする人もいるため、そのようなことがないよう不正を防止する目的で行われることもあるとか。

会社の健診を受けるか自分で希望の病院に行くかを選べる会社もあります。

入社前健康診断の受け方

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入社前の健診は項目が決まっていることもあり、どの病院で受けてもあまり変わりはありません。ここでは健診の大まかな流れを紹介します。

予約方法や費用

当日になっていきなり病院を訪れても、その日に健診を受けられるわけではありません。事前に予約が必要なことが多いため確認するようにしましょう。

電話ではもちろん、病院によってはネットでの予約に対応しているところもあり、それほど手間をかけることなく予約できます。

当日の検査は1時間から長くても2時間程度で終わりますが、病院の混み具合によってはこれ以上かかることもあるため、余裕をもって予約するのがおすすめです。

検査費用の相場は5,000円程度で、健康保険の適用はありません

この費用の負担義務に関しては定めがないため、会社負担のところもあれば自負で受けなければならないということもあります。

当日の持ち物や服装

事前に問診票をダウンロードし、質問の項目に記入して持っていかなければならないところも。

この準備を怠ると当日に記入しなければならなくなり、必要以上に時間がかかってしまうことになるでしょう。

当日の食事について「○時間前からの食事はNG」などの指定があることもあります。

検査では服を脱ぎ着することも多いため、着脱が簡単で体を締め付けない衣類を着用してください。

結果が出るまでの日数

早ければ、その日の診断結果を当日に受け取ることもできます。

ただし、3日〜1週間という期間を設けている病院も多く、余裕を持って検査を受けるのが望ましいでしょう。

郵送での受け取りを希望すると日数が延びる傾向にあるため、急ぎであれば窓口に直接受け取りに行く方が良さそうです。

なお、診断書を失くした場合には再発行してもらうことも可能ですが、1,000円前後の診断書料がかかることになります。

大学で診断書を再発行するときは“発行機”か“学生課の窓口”

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大学で受けた健康診断の結果を提出すればいいという場合には、わざわざ健診を受けに行く手間が省けるため、それを利用したいですよね。

ただし、受け取った診断書がどこにあるかわからないという人もいるのではないでしょうか。そんなときでも、大学で再発行ができるため心配する必要はありません。

大学には、卒業証明書を始めとした各種証明書を発行できる“発券機”が備え付けられていることがあります。

1枚100〜200円程度の費用がかかりますが、簡単に再発行することが可能です。この他、学生課の窓口でも再発行の手続きを受け付けていることが多いようです。

ただし、再検査を受けていないなど検査を完了させていない場合には発行できないこともあるため、しっかりとすべての項目を終わらせておくようにしましょう。

会社に提出する診断書は何か月以内のものならOK?

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健康診断は、労働安全衛生規則の規定によって「診断を受けてから3か月以内」のものでなければならないとされています。

会社によっては3か月以上経過したものを受け付けるところもあるようですが、古い検査結果を提出するよりも直前に受けた結果を提出する方が印象は良いかもしれません。

転職と新卒入社のときの入社前健康診断の違い

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現在大学生で、一斉に就職活動を行う場合には健康診断も周りと同じような時期に受けることができますし、入社まで余裕があることも多いため、それほど心配はないでしょう。

しかし、これが転職の際の健診となると勝手が変わることも。

内定後にすぐ働き始めることを求められるため、内定後ではなく、最終面接に合わせて診断書の提出が求められることがあるようです。

この時点では入社することはまだ決まっていないため、実費で健診を受けることになります。

転職活動ではスケジュールに余裕がないこともあるため、直前になって慌てることのないよう、選考で手応えを感じた時点で準備をしておくのもいいかもしれません。

入社前健康診断で良くない結果が出ると採用が見送られる?

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健康診断の意図

入社前の健康診断は、選考でふるいにかけるために行われるものではありません。

あくまでも、「業務をこなすのに問題のない状態か」「提示された健康状態に偽りがないか」というものを確認するにすぎないのです。

業務に支障がないものであれば、仮に異常が見つかったとしてもそれを理由に採用を判断することは禁止されています。

採用が見送りとなるケース

上記で話した通り、「業務の遂行に支障が出る」と考えられる異常が見つかった場合には、採用が見送られることになるでしょう。

これは実際に行う業務がどのようなものかということで変わってきます。

肉体労働が求められる現場では、体に動かせない部分があれば落とされることもありますし、バスやトラックの運転手であれば視力などの基準は厳しく判断されることになるでしょう。

この基準についてはあくまでも会社によって異なりますが、基準値を少し超えたぐらいでは落とされることはないというのがほとんどです。

なお、転職活動で内定前に診断書の提出が求められる場合、選考のボーダーラインにいる人を比較して健康状態に不安のない人を優先的に採用することもあるようです。

まとめ

「診断書の再発行方法」や「健康健診の大まかな流れ」などについてご紹介してきましたが、いかがでしたか?

普段はあまり意識しない体のことも、就職に関係するとなると途端に不安になるという人も少なくないはず。

自分では気付かない異常を見つけられる良いきっかけと考えれば、それほど心苦しいものではなくなるかもしれません。

いざというときに困ることのないよう、日頃から生活習慣に気をつけ、健康的な生活を送るのがいいのではないでしょうか。

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)
●追記/パピマミ編集部

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