うつ病にソックリ!? 「若年性アルツハイマー」が疑われる時の対処法

【ママからのご相談】
50代。夫が経営する設計会社の経理をやりながら一人娘を育ててきました。最近、還暦間近な夫の様子がおかしいため心配しています。例えば、大事なアポイントメントを忘れる。家族に八つ当たりなどしたことがなかったのに、仕事のことでいきなり怒鳴る。その一方で、「頭がザワザワする。どうしてしまったのだろう」と激しく落ち込むのです。痩せてもきました。うつ病かと思ったのですが、以前女性週刊誌か何かで、「若年性アルツハイマーはうつ病と症状が似ているので要注意」という記事を読んだことを思い出し、気がかりでいます。病院で診てもらおうと思うのですが、まず何科に行くのがいいのでしょうか?

a MRIやPET装置のある“神経内科”でアルツハイマー型認知症の検査を受けましょう。

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

旦那様のご様子、気がかりなこととお察しいたします。早い段階での対処ができるよう、今すぐに医療機関を受診されることをお奨めいたします。その際、問診が中心のメンタルクリニックよりも、MRI(核磁気共鳴画像法)装置やPET(ポジトロン断層法)装置などもある神経内科を受診された方がよろしいかと思います。

総合病院の神経内科は、精神神経科との連携も密であり、ベストな選択です。とはいえ、最近は地域で開業する神経内科の単科病院でも設備を置いているところが増えているため、まずはすぐに行ける地元の神経内科病院に行かれるのもいいでしょう。ご相談者様が心配なさっている『若年性アルツハイマー(初老期アルツハイマー型認知症)』であるか否かの診断は、“精神神経科”や“心療内科”に先に行かれるよりは、はじめから“神経内科”に行かれた方が、より早くつくかと思います。また、病院によっては“もの忘れ外来”といったような呼称で認知症に特化した診療科を設けているところもあるので、その場合はそこを訪ねましょう。

ここでは、都内で長年にわたって神経内科専門病院の院長をつとめる医師に伺ったお話を参考にしながら記述をすすめたいと思います。

150812katsuyoshi

専門医を受診すれば、若年性アルツハイマーであるか否かは数日で診断可能

『旦那様の症状で、激しく落ち込んだりするといったところから、ご相談者様はうつ病もお疑いなのだろうと思います。が、神経内科の医師としてはむしろ“仕事のことでいきなり怒鳴る”という部分の方が気になります。しかも、旦那様は温厚で、これまではたとえ会社の業績が思わしくなくてもご家族に当たらなかったということですね。検査をしてみないことには何とも言えませんが、これはアルツハイマー型認知症の発症によって引き起こされた記憶障害に伴う“物盗られ妄想”が出ている可能性も否定はできません。

まずは神経内科で検査を受けましょう。MRIによる検査で年齢よりも進んだ脳の委縮が見られるようであれば、PETとCT(コンピュータ断層撮影)を一体化したPET/CTによる検査を行い、並行して家族構成や会社など、日常生活のさまざまなことに関する聴き取りをします。ご相談者様が心配なさる若年性アルツハイマーかどうかは、数日で診断を下すことが可能です』(50代男性/都内神経内科病院院長・神経内科医師)

若年性アルツハイマーであってもMCI(軽度認知障害)であれば対処は可能。悲観は禁物

『発症年齢が65歳以前の“早発型アルツハイマー型認知症”のうち、特に発症年齢が40歳から64歳の間のものである“初老期アルツハイマー型認知症”のことを、一般に“若年性アルツハイマー”と呼びます。アルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβやタウと呼ばれる特殊なタンパク質がたまることによって神経細胞が死に、脳の中で記憶を司る海馬に病変が起き、記憶障害をきたします。また、神経細胞が死んでしまうことで脳が委縮して行くため、身体の機能も徐々に失われて行く病気です。現時点では根本的な治療薬はできていません。

さて、神経内科を受診されて、その結果、もし“初期の若年性アルツハイマー型認知症の所見が見られるMCI(軽度認知障害)”と診断されたとします。旦那様ご本人はもちろん、ご相談者様も大変なショックをお受けになることと思いますが、決して悲観してはなりません。

脳神経疾患を専門に扱っている総合南東北病院で“もの忘れ外来”を担当している片山宗一医師は、次のような主旨の話をしています。

“進行性のアルツハイマー型認知症は、認知機能の低下によって日常生活に支障が出るまで、数年の期間があります。この間の、記憶に関する障害はあるものの日常生活は保たれている状態を軽度認知障害(MCI)と言います。ただし、これは専門医でないと診断がつかないことが多いため、担当の医師に確認してください。MCIであれば、通院をしながら仕事も続けられます”

現時点の医学で、アルツハイマー型認知症を完治することはできません。しかし、投薬によって進行を遅らせることは可能です。MCIの状態が正真正銘の認知症へ移行することを阻止するには、いち早く専門医の診察を受け、早い段階での投薬開始と代替医療の活用で症状の進行をできるだけくい止めることが大切です。文部科学省の科学技術政策研究所によれば、2030年までにはアルツハイマー病の進行を完全に阻止する技術が確立するとされています。それまで、希望を捨てずにご夫婦で助け合って生きて行くことが、何よりも大事だろうと思います』(50代男性/前出・神経内科医師)

進行がとてもゆっくりな症例も山ほどあります。必要以上に恐れないことです

ご相談者様の旦那様の場合、異変が起きてから日が浅いことを考えると、万が一“若年性アルツハイマー”であったとしても、おそらくまだMCIの段階であろうと思います。記憶に障害が出始めているとはいえ、日常生活が普通に送れているわけですから、旦那様が経営なさっている会社は速やかに後継の人を決め、権限を移譲して、旦那様は無理のない範囲で仕事を続けていただいてはいかがでしょうか。

私の父親は87歳で高度の認知症になってこの世を去りました。最後は要介護4で歩くことも家族の顔を認識することもできず、私の顔を見ると、「やあ、社長!」と言って笑っていました。町工場主だった父は私のことを取引先の社長だと認識したのでしょう。徘徊もあり、母と私は介護で苦労しましたが、それでも母は、「今日は私のことをわかってる」と、小さな手応えを喜びとして介護をしていました。

ご相談者様、旦那様が若年性アルツハイマー型認知症ではないことを切にお祈り申し上げておりますが、もし信じたくない診断結果が出たとしても決して希望を捨ててはなりません。進行がとてもゆっくりな症例も山ほどあり、旦那様が日常生活を営める状態でアルツハイマーの根治方法が確立する日を迎える可能性だって十分ありうるのです。

ですから、必要以上に恐れずに、一日も早く、専門医による診察をお受けになってください。

【参考リンク】
アルツハイマー型認知症とは | 認知症ねっと

【関連コラム】
認知症の親にイライラ! 在宅介護による子どもへの影響とは
患者数は600万人!? 男性の更年期障害「LOH症候群」の症状と対処法
逆効果のケースも!? 薬の効き目を弱めてしまう“健康食品”の組み合わせ

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

data-ad-region="1"> data-ad-region="2">
data-ad-region="2"> data-ad-region="2">

あなたにオススメの記事

パピマミをフォローする