仮面うつに効果アリ? こころの病を癒やす「バードウォッチング」入門

【パパからのご相談】
40代。都内の出版社に勤務する、小2の男の子の父親です。ここ数か月、頭痛と胃の痛みがあるため病院でかなり詳しい検査を受けたのですが、特に問題は見つかりませんでした。そこで地元の心療内科を受診したところ、「こころの病気なのに症状が体に出る“仮面うつ病”」と診断されました。

今、処方された薬を飲み始めているところですが、先日、親しくしている同僚から、「仮面うつ病の症状改善にバードウォッチングがいい」と聞きました。実は妻が学生時代から野鳥観察の趣味があり、仕事も環境保護団体の職員をしています。バードウォッチングが仮面うつ病の症状改善に効くのなら、妻子と一緒にやりたいと思います。詳しく教えていただけませんでしょうか?

a 生き物が好きで、少しでも野鳥に関心がある人なら、効果は期待できます。

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

わが国において医学的なエビデンスが確立しているわけではありませんが、バードウォッチングはアニマルセラピーの1つのカテゴリーとして、世界中で多くの精神神経科分野の医師たちによって、“こころの疲れが引き起こす病気”の治療をアシストする補完医療としてその効果が認められ、広く使用されている手法です。

特に“仮面うつ病”のように、ある程度の身体的苦痛は伴うものの、うつ病としては軽度な症状の病気の場合にその効果は大きいと考えられおり、生き物が好きで少しでも野鳥に関心がある人なら、大いにその効果が期待できるとされているようです。

今回は、ご自身もバードウォッチングの趣味がおありの心療内科医の先生にお話を伺いながら、その“癒し”効果について考えてみたいと思います。

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バードウォッチングはストレスの原因を、「小さなこと」と思わせてくれます

『“仮面うつ病”を含む軽症のうつ病の改善にバードウォッチングが有効であることは、あらたまってそのエビデンスについて論じるまでもなく、言ってみれば“当たり前”のことかもしれません。多くの野鳥は鳴き声がかわいらしいし、体の色もキレイですし、また空を飛び獲物を狩るそのしぐさや動きがとても魅力的で、見ていて飽きません。

それと同時に、私たち人間のような哺乳類ではないのに親子の間の愛情があり、親が一生懸命に“子育て”をする姿やヘビなどの天敵からヒナを守ろうとする姿にも私たちの本能に訴えかけてくるものがあり、野鳥たちを観察する行為は私たちの日々の人間関係のストレスなどをとても“小さなこと”と思わせてくれます』(50代女性/都内メンタルクリニック院長・心療内科医師)

カワセミと出会いたいなら都内では文京区の小石川後楽園や、世田谷区・狛江市・調布市にかけての野川流域がおススメ

ご相談者様に推奨したいのは、奥様や息子さんと一緒にご家族で、バードウォッチングの入門編中の入門編としてカワセミを探しに出かけることです。

カワセミは全長17cmほどのさほど大きくない鳥ですが、キラキラと光るコバルトブルーの背中と鮮やかなオレンジ色の胸の対比がとても美しい鳥で、木の枝から直接水中にダイビングしたり、水面上でホバーリングしてから水中に突っ込んだりして小魚や水生昆虫類を捕えます。

獲物が大きめだと石にたたきつけて骨を砕き弱らせてから飲み込んだり、オスがメスの気を引くために捕まえた魚をプレゼントしたり、その様子やしぐさもとても愛らしく面白い野鳥で、「チッ」「ピッ」「ツィー」といったかん高い鳴き声も魅力的です。飛びながらも鳴きます。

東京都内なら、文京区の小石川後楽園の園内や世田谷区の喜多見辺りから一級河川の“野川”を上流へと上り、狛江市を経て調布市の流域へと抜ける辺りが、カワセミと出会えるおススメのスポットです。

はじめてその姿を目にしたならば、きっとご相談者様も息子さんもその美しさにびっくりされ、日常生活の中のささいな“嫌なこと”を忘れてしまわれるだろうと思います。

サギたちに会うなら都内では江戸川区の葛西臨海公園や杉並区の善福寺公園。公園以外なら野川沿いのサイクリングロードがおススメ

バードウォッチングの入門編その2としては、わが国の水辺に昔から広く生息するサギの仲間に会いに出かけましょう。一般に白サギと言われ真っ白で美しいコサギ、チュウサギ、ダイサギや、全長93cmと一見ツルに見間違えるほど大きくスマートで見栄えのするアオサギ。

“平家物語”にも登場し、その神妙な面持ちから醍醐天皇によって” 五位の位”を与えられたというゴイサギなど、個性的で愛嬌のある、ペリカン目でコウノトリの仲間たちです。

サギたちに会うなら都内の公園でいえば江戸川区の葛西臨海公園や杉並区の善福寺公園。公園以外の一般の水辺なら、やはりカワセミ同様、野川沿いのサイクリングロードを自転車か徒歩で観察してみましょう。サギの仲間たちは体が大きいので見つけやすく、野山の野鳥観察に行く前に目をならし野鳥を発見する楽しさを感じるにはうってつけです。

自治体によってはバードウォッチングを軽度のうつ病の補完療法として推奨しています

『このように楽しいバードウォッチングは、自治体によっては“こころの病”の初期の段階で気分を転換しストレスを解消するのに最適な、“自然と触れ合う”補完療法として推奨しています。例えば広島市などでは、“精神保健福祉センター”が運営するホームページなどで、“仮面うつ病”や“プチうつ”の段階で“バードウォッチング・サイクリング・ウォーキング・ガーデニング(家庭菜園)・山歩きなど、自分に合った方法でストレス解消することを呼びかけています』(50代女性/前出・心療内科医師)

仮面うつ病は自律神経失調症と見分けがつかない場合があるので専門医の診察は不可欠

いかがでしたでしょうか。

終わりに1つだけ、注意していただきたい点があります。仮面うつ病は、

・頭痛
・胃痛
・発汗
・めまい
・肩こり
・手足の震え
・不眠
・食欲不振

といった症状が自律神経失調症とほとんど同じであるため専門医による診察を受けなければその判別はつきません。診断によって治療に使うお薬は全く違ってきますので、ご相談者様のように必ず心療内科か精神神経科の専門医の診察はお受けになってください。

『専門医の診察を受けた結果、診断が“仮面うつ病”ということであれば、日光を浴びることでセロトニンなどの神経伝達物質を増やす効果も期待できるバードウォッチングは、症状の改善に役立つことが考えられます。一方で診断が自律神経失調症であった場合は、バードウォッチングをする際の自然環境などについても医師とよく相談なさったうえで始められることをおすすめいたします』(50代女性/前出・心療内科医師)

ご相談者様の場合はすでに心療内科の専門医の診察をきちんと受けられ、“仮面うつ病”であると診断されているわけですから、今度の日曜日にでもさっそくご家族おそろいで野鳥を見つけに出かけられてはいかがでしょうか。

東京は大都市にしては意外と水や緑に恵まれていますので、「こんな珍しい鳥に本当に会えるんだ」といった新鮮な驚きをきっと体験できるかと思います。小2の息子さんは、深みにはまって“野鳥博士”になる可能性も大いにあるかと思いますよ。

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●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

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