貧乏でもエリートに? 子どもの健康や学力は“親の収入”で決まるのか

【ママからのご相談】
30代。中2の男の子のママです。わが家は夫と私を合わせても200万円台半ばの世帯収入で、“貧困”とまでは言えなくても“低収入”であることは間違いありません。最近は、「子どもの健康や学力は親の収入でだいたい決まってしまう」といった言説が主流のようですが、幸い、わが家の息子は至って健康で、学校の成績も常に上位にいます。心がけてきたことと言えば息子が小さい頃から私が本の読み聞かせをしてやったことと、夫が仕事から帰ると必ず息子に、「今日は学校どうだった?」と声をかけてきたことくらいです。これらに効果があったのでしょうか。

a 小さい頃からの両親との良好なコミュニケーションが、子どもを健康で勉強好きにします。

ご相談ありがとうございます。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。

ある貧困問題の研究者グループが約6,000人の小中学生の親を対象に行った調査では、約1,200人が子どもを病院に連れて行った方がよいと思いながら受診させていませんでした。

また、厚生労働省が小学5年生約900人に行った調査では、貧困世帯の子どもの食事は、お米やパン、麺類といった炭水化物が多く、肉や魚のたんぱく質やビタミン、ミネラルなどが不足しており、栄養に偏りがあることが明らかになっています。

一方、教育の方に目を向けると、文部科学省による『全国学力・学習状況調査』の結果では、小学6年生の算数の応用力を問う問題で、世帯年収1,500万円以上の家庭の子どもの正答率が71.5%であったのに対して、世帯年収が200万円未満の家庭の子どもの正答率は45.7%でした。

これだけを見ると確かに、「親の収入しだいで子どもの健康や学力は決まってしまう」と思えなくもありませんが、低所得家庭の子どもの健康と学力は本当に絶望的なのかと問われるなら、決してそんなことはありません。

以下、都内で小児科・内科クリニックを開業する医師に話を伺いながら、親が低所得であっても健康で学力の高い子どもは育つということについて考えてみたいと思います。

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“低所得家庭”の子どもが立派な職業に就いているケース

国立大学を卒業してメーカーに就職したKくん

国立の工科系大学をこの春卒業し、メーカーの研究部門に就職したKくんは、お父さんがリストラに遭ってしまったこともあり、小学校から大学までずっと公立校の教育のみで社会人になりました。学生時代に利用したのはNPO法人が運営する“ネット無料塾”だったそうです。

Kくんを育てるために非正規雇用で働いてくれたご両親の姿を目の当たりにして、Kくんは、「学校の授業を全部理解する」と心に決め、それを中学と高校を通して実践したそうです。大学は奨学金を借りて通いましたが、しっかりした会社の正社員として就職できたので、返済の不安はないとのことです。

有名私立大学を卒業して公益法人に就職したSさん

公益法人に就職したSさんは、難病を患って働けなかったお父さんの代わりにお母さんがこつこつと貯めていた貯金を取り崩しながら思春期の時代を過ごしました。Kくんと同様に高校までは公立校に通い、都内の有名私立大学の文学部に進んだのです。学校以外の勉強は、通信教育を受講した程度だったそうです。

Sさんはとびきり丈夫というほどではありませんが、歯と眼に関しては素晴らしく健康で、両親から指導された生活習慣が良かったのだろうと思います。


KくんとSさんには共通点があります。それは、二人とも知的な好奇心が旺盛で、身近なちょっとした問題でもそれに関して周りの人と話し合ったり考えたりすることが好きだという点です。

公的な支援制度を上手に使いこなしていた

前出の二人のように、低所得の家庭で育ちながら健康で学力も高い子どもは、そんなに“イレギュラー”な存在なのでしょうか。ドクターの見解を聞いてみました。

『各種の調査結果はたしかに、所得の低い家庭は食事の栄養バランスがよくないことや、医療機関の受診が必要なほどの体調変化が子どもに現れているにもかかわらず受診させないままやり過ごしてしまうといった傾向を浮き彫りにしてはいます。

しかし、一方で、東京大学社会科学研究所の石田浩教授らの調査によると、普段の健康状態が「悪い」と回答している子どもの比率は貧困家庭では7%、非貧困家庭では5%と、ほとんど差は見られませんでした。

つまり、収入がさほど多くなくても、子どものことを最優先で考えている親の場合は限られた予算の中でもバランスのよい食事を意識しているため、子どもの健康状態に悪影響は出ていないというのが私の実感です。子どもに愛情を持っている親のもとでは、子どもたちの多くが問題なく健康に育っています。学力に関しては、長年地域の小児科医療に携わってきた私の立場で言うと、住んでいる自治体の子育て支援制度を上手に使いこなしている家庭の子どもさんは概して学力が高いです。これは、経済的に余裕のある家庭の子どもさんたちよりも“心構え”の面でしっかりしていることも、理由の一つのように思えます』(50代男性/都内小児科・内科クリニック院長・医師)

金銭的に不自由がなくても摂食障害となったケース

私の知人のMさんは、医者の子どもとして金銭的には何ひとつ不自由ありませんでしたが、中学2年のときに両親が不仲になって以降摂食障害を発症し、およそ10年が経った今でも完治には至っていません。彼女は何種類もの塾に通い、苦手科目は家庭教師をつけてもらったため、学力は非常に優れていますが、心身の健康状態は深刻です。

『摂食障害のお子さんは食生活がどんなに異常であっても本人には自覚がなく、異常性を認めません。この病気の子どもには高い割合で対人関係障害があり、特に思春期の場合、親との関係に問題がある場合が多いのです。』(50代男性/前出・医師)

子どもにとっての“幸せ”とは

今回のご相談は、「子どもにとって“幸せ”とは何か」といった根源的な問いかけを含んでいるようで、とても考えさせられました。

前出のMさんはいつかきっと摂食障害を克服し、幸せをつかんでくれると信じてはいますが、それでも学生時代の特異な家庭環境をやり直すことはできません。その意味ではとても気の毒です。

片や、KくんやSさんは金銭的には恵まれない家庭環境で育ちながら、親御さんができる限り公的支援制度の情報を集めて活用するなど、収入が少ないなりにその状況の中で子どもにしてやれることをやってきました。

冒頭で紹介した文部科学省の調査では、次のような事実も判明しています。

『勉強や成績について常日頃から親とよく話している子は、親の収入に関係なく学力が高い』
『家庭で本や新聞を読む習慣を身につけている子も、親の収入に関係なく学力が高い』
『幼少期に親から本の読み聞かせをしてもらった子は、学力が向上するとともに情緒が安定した子に育つ傾向がある』

ご相談者様の息子さんが、一般的な低所得家庭の子どもさんとどこがちょっとだけ違っていたのか? それはご相談者様自身が無意識のうちにもわかっていた“ママによる本の読み聞かせ”と“パパによる毎日の声かけ”だったのだと思います。

このように考えると、「親の愛情が子どもの健康や学力に多大な影響を及ぼす」というのが、本当のようです。

【参考リンク】
家庭の経済的環境と親と子の行動と意識 | 新情報センター(PDF)

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●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

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