いい子こそ不登校に? 厳しいしつけが「やさしい虐待」と言われるワケ

【パパからのご相談】
今年小学校へ入学した娘を持つ父親です。妻の子育てにモヤモヤしています。基本的に妻は良妻賢母というか、何事も完璧を目指すタイプです。はたから見れば、彼女の子育ては模範のように感じるかもしれません。「いい奥さんだね」「お子さんも、よくしつけられたいい子だね」とよく言われますし、よく頑張ってくれているとも思います。しかし、実際に妻が娘にしている教育は、「○○してくれなきゃママ悲しいよ」「ちゃんと勉強しない子は、かわいくないな」など、聞いていてどこかモヤモヤしてしまう内容が多く、「はたして本当にこれで良いのか?」と悩んでいます。具体的にどこを直すべきかはわかりませんが、なんとなく、「娘をダメにしているのではないか?」とも感じてしまい、これから来るであろう思春期や反抗期が心配です。妻の子育ては、どこが間違っているのでしょうか?

a 暴力を振るわなくても、“やさしい虐待”によって子どもに心理的外傷を与えている可能性があります。

ご相談ありがとうございます。ママライターの木村華子です。

ご相談者様は、“やさしい虐待”という言葉をご存知でしょうか? “虐待”と聞くと、一般的には暴力を振るうことや、食事を与えないなどの行為をイメージしがちですが、実はそれだけではありません。

『児童虐待の防止等に関する法律』の第1条では、

虐待は児童の人権を侵害し、その心身の成長及び人格の形成に影響を与える

と表現されており、暴力だけではなく子どもの人権を脅かす行為そのものが虐待であるとされているのです。やさしい虐待とは、幼少期に親が子どもをコントロールしてしまうことで、子どもに心理的外傷(トラウマ)を残してしまうことを指します。

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“やさしい虐待”が不登校の原因になる!?

2011年12月放送のNHKの番組『クローズアップ現代』では、勉強もしつけも完璧に思われたわが子が突如不登校に陥り引きこもってしまう“いい子”の破綻の原因として、“やさしい虐待”が取り上げられました。

不登校などの問題を抱えた親子に対し、これまで多くの親子にカウンセリングを行ってきた長谷川博一教授は、親による行き過ぎたしつけや教育が子どもの心に負担を与えていることに気づき、それをやさしい虐待と呼び警鐘を鳴らしています。

2人の子どもたちが不登校になってしまった母親のケースでは、“成績優秀”、“礼儀正しい子”を目指すあまり、やさしい虐待に発展してしまった内容が紹介されました。

母親は子どもたちを、“世間に出しても恥ずかしくない子”、“しつけの行き届いたいい子”にしようと、幼少期から過度な教育やしつけを進めていました。その子どもが小学校3年生のときの親子の交換日記に、次のようなやり取りがあります。

子ども:
『私はいつもひとりぼっちだ』
『何のために生きているんだろう』
『死んだほうがよかったのか』

母親:
『悲劇のヒロインにならないでください、お母さんこそあなたにいじめられて死にそうです。お母さんの時間を返してください』

このやり取りからは、子どもの発するSOSに対する、母親の行き過ぎた“しつけ”が伺えます。親の支配にがんじがらめになった子どもは、やがて友人とのトラブルをきっかけに不登校に陥ってしまいました。そんな子どもに対し母親は、『逃げているように見える娘が許せない』と語りました。

感情を認めてくれない親の元で育った子どもは、自分自身の価値を認めることができなくなってしまいます。子どもの健やかな心の成長のためにも、子育てを見つめ直してみることが必要なのかもしれません。

お母さんは、しつけをしてはいけない!?

番組に出演された臨床心理士・心理学教授の長谷川博一さんの言葉に、以下のようなものがあります。

『しつけと虐待は、本質的に心理面では同じことが起きているのです。間違ってはいけないのは、怒鳴る、叩くようになってから虐待が始まった、とする考えです』
『子どもを親の思い通りさせようとする“しつけ”そのものがすでに虐待なのです』
『ですから、私は、お母さんに「しつけをしないで」と言っているのです』

「しつけをしないで」なんて、子育て中の母親にしてみれば、「しないわけにはいかないでしょ!」と感じますよね。事実、私は感じてしまいました。

しかし、教授によると、しつけとは日常生活の中で自然と子どもたちが吸収していくものであり、むしろ現代では厳しくしつけられた子どもを苦しめる“しつけの後遺症”の方が問題なのだそうです。

しつけをする上で気を付けるべきこと

「しつけをしてはいけない」と言われても、いざ子育てをしているとしつけが必要なシーンはどうしても出てきます。

たとえば、

・他の人を傷つけてはいけない。迷惑をかけてはいけない
・嘘をつくべきではない
・挨拶はきちんとした方がいい
・食事はマナーを守ってとるべきだ

これらを親の姿勢や態度から学んでくれるなら、これほどありがたいことはありません。実際に親の態度から学べることもあるでしょう。

しかし、たとえば食事中にテーブルに肘をついてはいけない、また口を開けたまま咀嚼(そしゃく)するのは良くない、など、誰かに幼いころからしつけられないと分からないようなマナーもあるはずです。これらを全くしつけないわけにはいきません。

気をつけるべきことは、「子どもために感情的になっていないか?」「子どもの感情を認めないような発言になっていないか?」という点なのではないでしょうか。

ご相談者様が、「○○してくれなきゃママ悲しいよ」「ちゃんと勉強しない子は、かわいくないな」という奥様の発言にモヤモヤするのは、その発言が奥様の感情を基にしたものであると同時に、お子様への愛情が“条件付きの愛情”だという印象を与えてしまう点にあるのではないかと思います。

本来、母親の愛情は条件などいらず、いつでも子どもに絶え間なく向けられているべきものであることを知っているからこそ、奥様の教育に疑問を感じているのではないでしょうか。

“暴力を振るっていない=虐待していない”、そんな先入観を捨ててみましょう

やさしい虐待は、親も気付かないうちに子どもたちの心を蝕んでしまいます。子どもを思う親の気持ちが、逆に子どもたちを苦しめてしまうのは本当に悲しいですね。

どの親にとっても、わが子は何にも代え難い大切な存在です。だからこそ、「子どもに暴力を振るっていないから、うちは虐待なんてしていない」という先入観を捨てて、ご自身が行っている子育てを見つめ直してみる必要がありそうです。

【参考文献】
・『お母さんはしつけをしないで』長谷川博一・著

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●ライター/木村華子(ママライター)

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