筋ジストロフィーで断念! 難病で夢を諦めた子どもへの励まし方

【ママからのご相談】
30代のママです。息子は3歳のときに難病の『デュシェンヌ型筋ジストロフィー』を発症し、10歳になる今では歩くことがままならなくなってまいりました。小さなころから野球が大好きな子でしたが、このあいだ新しい車椅子が納品され、これからは近距離の移動でさえそれを使わなければならないことを改めて知ったとき、「もう、野球の選手なんて夢は捨てなきゃね。ぼく、何のために生まれてきたのかな?」と聞かれて、返す言葉が見つかりませんでした。息子の質問に対してどういう答えを返してやったらいいのでしょうか。

a 「難しい病気を克服して世界中の人々の希望となるために生まれてきたんだよ」と、答えてあげてください。

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

息子さんの病気は、幼児期に発症して次第に筋力低下と筋肉の委縮が進み、かつては呼吸不全や心不全のために20歳前後までしか生きられなかった『デュシェンヌ型筋ジストロフィー』とのことですが、この病気は少し前までは、「対症療法で少しでも長く延命させるしか手立てはない」と言われた難病です。

ところが、2006年に日本人の研究者によって、いわゆる“iPS細胞”を使っての治療方法の道筋が示されてからは、根本的な治療方法の研究がさかんに進められています。また、呼吸補助療法の進歩などもあり、わが国におけるこの病気の患者さんの平均寿命は、28歳くらいまで伸びてきており、中には40歳まで生きる人も出てきています。

息子さんにはぜひ、「難しい病気を克服して世界中の人々の希望となるために生まれてきたんだよ」と、答えてあげてください。以下の記述は、都内で内科・小児科・神経内科クリニックを開業する医師に聞いた話を参考にさせていただいております。

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デュシェンヌ型筋ジストロフィーの予後の悪さの原因が、iPS細胞で克服できる可能性

『一言で“筋ジストロフィー”と言いますが、この言葉は遺伝によって伝えられる疾患群のことであり、大きく分けて9種類、細かく分ければ30以上の種類に分類される幅の広い概念です。正常な筋肉の機能に必要不可欠なジストロフィンというタンパク質の不足から起こる点は共通していますが、例えば筋緊張性ジストロフィーでは通常20代~30代で発症し、生活の質には影響を受けますが命に関わることはまれで、患者さんの多くは天寿を全うされます。また、“ベッカー型筋ジストロフィー”は“デュシェンヌ型筋ジストロフィー”に似ていますが、症状がデュシェンヌ型ほど深刻ではなく、患者さんのほとんどが中年期以降まで生きることができ、中には生涯を通じて車椅子を必要としない患者さんもいます。

これに対し、息子さんの“デュシェンヌ型筋ジストロフィー”は、“ジストロフィン蛋白”が全く作られないことがその予後の悪さにつながっていたのですが、2014年に京都大学iPS細胞研究所らのグループが“デュシェンヌ型筋ジストロフィー”の患者から作製したiPS細胞において、病気の原因遺伝子であるジストロフィンを修復することに成功。遺伝子を修復した細胞を移植して筋力を回復させる根本的治療法の実用化への道筋を示したのです』(50代男性/都内神経内科クリニック院長・医師)

身体能力で勝負する分野以外なら、生きてさえいれば何にだってなれます

『このように、iPS細胞を用いての難病の根本的治療法の実用化に向けての試みは現在急速なスピードで進められており、ご相談者さまの息子さんは現在10歳ということであれば、あと10年、15年と頑張って生きていらっしゃる間に治療法が実用化され、保険適用の治療体制が整う可能性がかなりある、と言うことができます』(50代男性/前出・医師)

息子さんは、大好きな野球を選手としてプレーすることはできないかもしれませんが、スポーツライターとして野球への熱い思いをつづることはできます。

また、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの根本的治療法の実用化が遅々として進まないことに苛立つようであれば、ご自分が医学や薬学の研究者となって実用化達成のために寄与するという道だってあるでしょう。まだ10歳です。身体能力で勝負する分野以外でしたら、生きてさえいれば何にだってなれます。

2015年1月に発売された『続・こころのふしぎ なぜ? どうして?』という児童向け心理学書のベストセラーの続編では、『自分は、何のために生まれてきたの?』という章で、その質問に、

『正しい答えを出すことはできません。でも、一つだけできることがあります』

として、こう続けています。

『何のために生まれてきたのか、“自分で答えを決めてしまう”ことです』

と。


自分が何のために生まれてきたのかといった深遠な問いには、私たち大人だって簡単に答えを出すことなどできません。でも息子さんの場合には、大好きな野球の選手として活躍するという夢は叶わないかもしれませんが、その代わりに“世界中の人々の希望となる”という壮大なスケールの夢を持つことができるのです。

ご相談者さま。どうか、息子さんと一緒に壮大な夢を追いかけてさしあげてください。強い“思い”は、現実のものになります。“世界中の人々の希望”になろうとしている息子さんのことを信じて、応援をしつづけてあげてください。

【参考文献】
・『続・こころのふしぎ なぜ? どうして?』村山哲哉・監修

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●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

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