全国で105万人も!? 教育費に悩む家庭が“就学援助“を受けるポイント

【ママからのご相談】
30代、こんど小2になる男の子のママです。入学したときせっかくプリントを配られたのに手続きが面倒くさそうだったため、学校に通わせるための公的な資金援助を受けずに後悔しています。夫婦ともに非正規雇用で世帯収入が低いわが家では、家賃でまとまったお金が出て行ったうえで給食費と学童クラブにかかる費用で、ゆうに1万円を超える教育費の負担は、正直言って重かったです(これからも、重そうです)。

非正規とはいえ2人とも働いており、最低限の収入はあるため生活保護法の要保護者には該当しませんが、かなり苦しいことは間違いないので、ウチくらいの“経済的に楽でない家庭”が利用できる公的な援助の制度があったら今からでも教えていただきたいと思います。

a 市町村の“就学援助制度”があるので新学期になったら速やかに申し込んでください。

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

学校教育法では、『経済的な理由によって、就学困難と認められる学齢児童又は学齢生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない』と定めており、これを具体化した制度のことを“就学援助制度”と呼んでいます。

就学援助の対象となるのは“生活保護法が規定する要保護者”と、“そこまではいかないけれどかなり困窮している者”で、具体的な収入要件は市町村によって違うとともに、住まいが持ち家か賃貸住宅かによっても違ってくるので、ご相談者さまの世帯が援助の対象になるかどうかは、お住まいの市町村のホームページなどから確認されることをおすすめします。

賃貸住宅にお住まいでご夫婦とも非正規雇用のご相談者さまの世帯の場合は、おそらく援助の対象になるであろうと思われますので、新学期になったら学校から配られるお知らせに目を通し必要書類を取りそろえて就学援助の申し込みをしてください(本当は1年生入学時にも申し込めばよかったですね)。

以下、都内で小児科クリニックを開業する“子どもの貧困問題”に詳しい小児科医師の話を参考にしながら、記述させていただきます。

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全国で公立小中学生の105万人が就学援助を受けており、恥ずかしいことではありません

『今年(2015年)の1月29日、通常国会の衆議院予算委員会で質問に立った野党第一党の議員の話に、議場は一瞬静まり返りました。この議員は厚労大臣を務めた経験もあり厚生労働行政や文部科学行政にたいへん詳しい人ですが、議員の選挙区である東京の渋谷区・中野区では、公立中学校の生徒の3人に1人が要(生活)保護者に準ずる程度に困窮していると認められており、就学援助を受けながら給食費や学用品費を支払っているという現実を明るみにされたのです。またご自身の選挙区ではないけれど議員の調査では墨田区・足立区では公立中学校の生徒の47%が就学援助を受けながら給食費などを払っている。

さらに議員独自の調査の結果、全国では公立の小中学校に通う児童・生徒の105万人が就学援助を受けていて、この数字は15年前の約2倍になっているということが明らかにされ、地方に比べて“豊か”と思われがちな東京でさえ子どもの貧困が相当程度進行していることに衝撃を受けました。私は小児科の医師という仕事の性質上、子どもの貧困の問題が年々深刻なものになってきていることは実感としてわかっているつもりでおりましたが、これほどまでの実態を改めて数字で突きつけられると、はたして私たちのこの社会は“健康”な社会と言えるのかどうか、少しばかり考えさせられてしまいました』(50代男性/都内小児科クリニック院長・小児科医師)

小児科医と同じように、私もこの数字にはいささかショックを受けました。働く人によっては、“過去最高水準の(賃金)ベースアップ”(2015年3月現在)が話題になる一方で、就学援助を受けなければ給食費や学用品費や学童クラブの費用が払えない子育て世帯がこれほどの規模で現実に存在するという私たちが暮らす社会の状態は、たしかにあまり“健康”な姿とは言えないのかもしれません。

上述した衆院予算委でも答弁に立った内閣の担当閣僚たちからさえも、「このような格差を放置してはならないという議員の問題意識・問題認識は、正しい」といった言葉が相次ぎました。

ただ、そうは言っても“格差が少なく貧困のない健康な社会”が一夜にして出来上がるわけではありません。そういった健康な社会をつくるにはまず子どもたちに、給食費や学用品費や学童クラブの料金を心配しないで払える環境の家庭から学校に通ってもらい、教育を受け、一人ひとりの子どもたちがそれぞれの得意な分野で、その子のやり方で“健康な社会”をつくることに寄与してくれる状況を形成することが必要です。

ですから、何も恥ずかしいことはありません。所得の現況が就学援助の対象に該当しているのであれば、就学援助の申し込みをいたしましょう。きちんと教育を受けるために、すでにある公的な制度を利用しない手はありません。

それでは次に具体的な例をあげて、就学援助が受けられそうかどうかについて個別に検討してみることにしましょう。

“住むこと”のコストが高い都市部では、“家賃無し”の人の所得面のハードルは高い

就学援助を受けようとする場合、東京をはじめとする大都市にお住まいの方が注意すべき点が1つあります。都市部では衣食住のうちの“住むこと”にかかるコストが他のコストにくらべて桁違いに高いので、「払わなければならない家賃がある」場合と、「家賃を払わずに暮らせる住まいがある」場合とでは、就学援助を受けることのできる所得の要件が大きく違ってくるという点です。実例を出してご説明しましょう。

ご相談者さまの世帯のように世帯の構成がママとパパと小学2年生の子どもの3人世帯で、たとえば東京都の目黒区にお住まいだとしましょう。

ご相談者さまの世帯のように払わなければならない家賃がある場合は、昨年度中の世帯の合計所得が360万円以内であれば援助を受けることができますが、家賃を払う必要のないお住まいで暮らされている場合は世帯の合計所得が260万円以内でなければ援助を受けることはできません。

同様の世帯構成でご相談者さまがもし東京都の調布市にお住まいだとしたらどうでしょう。賃貸住宅にお住まいの場合なら世帯の合計所得が約320万円までなら援助を受けられますが、住まいが持ち家であれば約236万円までの世帯合計所得でないと、援助は認められません。

これは、持ち家というものが“資産”の1つでもあるため、子どもに最低限のきちんとした教育を受けさせるためであれば資産である持ち家は売却をしてでも教育資金を得ることが保護者としての責任でもあるという、憲法の“教育の義務”の考え方からきているものです。決して行政が“ケチ”だとかいう話ではなく、もっともなことだと思います。

なお、ここでいう“合計所得”とは、源泉徴収票の“給与所得控除後”欄の金額か、または確定申告書の“所得合計”欄の金額を指し、“合計収入”とは違いますので注意してください。

医療費は市区町村に子どもの医療費助成制度があるが給食費に困る場合は就学援助申請を

『就学援助制度においては、学校保健安全法に定めた疾病(結膜炎・中耳炎・虫歯・寄生虫病など)については医療費も助成されますが、こと医療費に関しては各市町村ごとに15歳(中学3年生)までの子どもを対象とした“子どもの医療費助成制度”があり、健康保険証の提示さえできれば基本的に子どもは無料ないしわずかな自己負担の薬代で病院にかかることができます。

問題はやはり医療費ではなく、生活保護を除けば就学援助制度くらいしか支援のシステムが見当たらない“給食費”と“保護者が働いているあいだ子どもを見てくれる学童保育にかかる費用”のウエイトが大きいのだろうと思われます』(50代男性・前出小児科医師)

大都市圏に居なければ仕事はなく、だからと言って大都市圏に住めばどんなに質素な賃貸物件でもファミリー向きであれば毎月家賃として7万~10万円は払わなければなりません。

給食費と学童クラブの利用料金で毎月12,000円前後が出て行けば、2人合わせて20数万円の非正規雇用の月収で、プチ贅沢するお金さえ残らないのは簡単な算数で答えが解る問題です。2015年の春は非正規雇用の人たちにも全体として多少の時給アップがあったとはいえ、欧米諸国でいう“生活可能賃金水準”に達しているとは到底言えないレベルです。

各市区町村のホームページを見ると、「就学援助を受ける子どもたちの気持ちに負担がかかることのないよう十分に配慮しながら事務手続きをすすめるので、安心して申し込んでください」といった趣旨のことを書いてくれている自治体もあります。

ご相談者さまもどうか2年生になった4月の新学期早々にお子さんが持って帰るお知らせを忘れずにお読みになったうえで、就学援助の申し込みをなさってください。子育てと義務教育は、私たちが出し合っている税金を使って、一緒にやって行きましょう。

【参考リンク】
就学援助制度について | 文部科学省

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●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

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